Interview

世代トップクラスの剛腕・小林樹斗(智辯和歌山)は昨夏の米子東戦以上のインパクトのある投球を見せることができるか

2020.07.24

 今年の高校生右腕でトップレベルの剛腕といえば小林樹斗だろう。躍動感のあるフォームから繰り出すストレートは最速148キロを計測。130キロ近いフォークの切れ味も精度が高い。そんな小林の歩みを追っていきたい。

入学時に苦労も、2年夏まで順調にステップアップ

世代トップクラスの剛腕・小林樹斗(智辯和歌山)は昨夏の米子東戦以上のインパクトのある投球を見せることができるか | 高校野球ドットコム
小林樹斗

 和歌山県御坊市の小林は小学校3年生から野球を始めた。中日で活躍する岡田俊哉と同じ松洋中学校で投手としてプレーしたところに智辯和歌山から声がかかった。
 「和歌山の強豪校といえば、智辯和歌山でしたので、憧れはありました」と入学を決めている。

 そして智辯和歌山に進んだ小林だが、中学とはくらべものにならないハードな練習内容に最初はついていくことに精一杯だった。

 中谷仁監督は入学時の小林の練習内容について苦言を呈していた。
 「全くついていけていなかったですね。智辯和歌山の練習はとてもハードであることを知って、意識の高い選手はしっかりと体を仕上げてうちの練習に入るんです。特に中学の強豪チームほどその意識は高く持って入ってくれます。ただ小林はそうではなかったですね」

 小林曰く、中学の野球部で高校に備えて練習はしていたそうだが、「今振り返ると、中学にやっていた練習内容は甘かったと思いますし、練習と呼べるものではなかった」と語る。それでも少数精鋭の智辯和歌山から誘いを受けた逸材。能力は高いものはあり、1年夏の甲子園ではベンチ外だったものの、1年秋から主力投手としてベンチ入り。130キロ後半の速球をマークするなど順調に成長を見せる。

 1年冬はウエイトトレーニングを重点的に行ってきて、10キロの増量に成功。そして2年春の選抜では140キロ前半。そして明石商戦では最速147キロをマークした。小林は成長を実感していた。
 「世界が変わりましたね。秋に全力で投げていた130キロ後半のボールは今では7,8割ほどの力で投げることができています」と成長を実感。

 しかしセンバツ後、思うような投球ができずに苦しんだ。

 近畿大会でもリリーフとして登板したが、140キロにとどまり、回転の良い直球も少なくなっていた。そこで、小林は、リリースの感覚を改めた。
 「脱力しようと思い、リリースに入るまで0で、リリースに入る瞬間に100というイメージで投げました」

 無駄な力みをなくし、体の回転をうまく使って投げる意識で。その結果、和歌山大会では12.2回を投げて、11奪三振、1失点の好投を見せ、甲子園出場につなげた。そして米子東戦ではすべて140キロ超え、最速148キロを計測し、1回2奪三振の快投。

 この投球に昨夏のエース・池田陽佑立教大)以上のインパクトがあったと評価する声も多くあった。

 小林は高校でのベストピッチングがこの試合だと振り返る。

[page_break:高いレベルを求めて積極的に質問する姿勢を。これからも追求しつづける]

高いレベルを求めて積極的に質問する姿勢を。これからも追求しつづける

世代トップクラスの剛腕・小林樹斗(智辯和歌山)は昨夏の米子東戦以上のインパクトのある投球を見せることができるか | 高校野球ドットコム
小林樹斗

 「あの試合はすべてが理想通りでしたね。リリースの感覚、フォームの感覚も一番良くて、こんなに軽い感覚で投げてもこんなストレートがいくんだと思いました」

 ただ理想通りの感覚はなかなか続かないもの。それ以降も140キロ中盤の速球を投げ込んでも打たれる試合もあったり、抑えても満足いくボールが投げられない試合が続いた。

 2年秋の近畿大会が終わり、小林は体づくりとともに、理想の投球フォームを求め、冬場のピッチング練習から体の動きからこだわってきた。

 取材日でも投球練習をしていたが、その時、コーチに何度も質問を行い、フォームの動きを確認していた。

 「投球フォームのことについては股関節の使い方などいろいろ質問して実践していますし、また気持ちの持ち方についても聞きました。特にピンチの場面の気持ちのもちようを聞いて、どうすれば、平常心で投げられるのか聞いています」

 今までは自慢の速球をがむしゃらに投げれば抑えることができた。ただ、今は世代を代表する速球投手。マークも厳しくなり不用意にいけば打たれることも多くなった。だからこそ、配球内容、メンタルにもこだわるようになった。

 高卒プロについては憧れはある。何度も中谷監督から取り組む姿勢について指摘を受けてきた。「プロはそんな甘いところではない」と。中谷監督に小林について聞くと、厳しい言葉が返ってくる。

 それでもほかの投手にはない角度のある140キロ後半のストレート、落差が鋭いフォーク、躍動感ある投球フォームは大きな将来性を感じる。それだけ素質が高い投手だからこそ中谷監督も厳しく姿勢を問うのだろう。

 目指すは米子東戦の理想の感覚で、よりパワーアップした投球を見せることだ。自分の取り組み内容や、取材日で見せた小林の練習に取り組む姿勢は甘かった入学当初とは別人。

 この和歌山独自大会、そして交流試合で、小林は世代トップクラスの剛腕と印象付ける活躍ができるか大いに注目である。

 

(取材=河嶋 宗一

関連記事
控え選手中心の中学時代からプロ注目の大型捕手へ。田所宗大(いなべ総合)の着実な成長ステップ
通算58本塁打の大砲、超高校級の「坂本勇人」など「公立校」にいる逸材たち
【組み合わせ】2020年三重県高等学校野球夏季大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!