Interview

高校通算25本塁打の強肩強打の捕手・釣寿生(京都国際)。キャッチャーとして大成するヒントになったステップ【前編】

2020.06.19

 早真之介とともに今年のドラフト候補として注目を集めている釣寿生。高校通算25本塁打のパワフルな打撃と二塁送球1.85秒の強肩を武器にしている。

 2年春にレギュラーを掴む前から小牧憲継監督が2020年のドラフト候補に推薦していた逸材がついにその才能を開花させようとしている。今回はプロ入りを目指す釣にこれまでの取り組みについて伺った。

素材型捕手・釣の覚醒の鍵はスローイングだった

高校通算25本塁打の強肩強打の捕手・釣寿生(京都国際)。キャッチャーとして大成するヒントになったステップ【前編】 | 高校野球ドットコム
釣寿生(京都国際)

 兵庫県姫路市出身の釣は小学2年生の時に飾磨インパルスで野球を始めた。当時から周囲よりも体格が大きく、肩が強かったため、野球を始めた当初からずっと捕手をやってきたという。中学では飾磨インパルスの先輩の父親が監督をしていた姫路西リトルシニアに所属。チームでは目立った結果を残せなかったが、4番捕手として活躍を見せていた。

 そんな釣を熱心に見ていたのが京都国際でスカウトを担当している岩淵雄太コーチだった。岩淵コーチから1年生から全体練習ができると聞いた釣は「しっかりアピールできるかなと思って選びました」と進学を決断。親元を離れて高校野球生活をスタートさせた。

 入学時から将来の中心選手として期待されていたが、「最初はずっと緊張していて、先輩に話しかけられても上手く返せなかった」と気後れしていた面があった。同期の早と森下結翔が1年夏からレギュラーを勝ち取った一方で1年生の間はレギュラーになれなかった。

 小牧監督は入学当初からプロを狙える選手であると認識していたが、「素材型なので、我慢しないといけないと思っていました」と即戦力としては捉えていなかった。2年生から正捕手として活躍できるために、1年生の間に捕手として必要なスキルを小牧監督は叩き込んできた。

 特に力を入れてきたのがスローイングだ。「中学生の時はスローイングが全然まとまっていなかった」と以前は苦手意識を感じていたが、ネットスローを行うことによってそれを克服。地肩には以前から定評があったが、ステップを工夫することによって、安定したスローイングを身に付けた。

[page_break:自粛期間を経て、捕手として覚醒する]

自粛期間を経て、捕手として覚醒する

高校通算25本塁打の強肩強打の捕手・釣寿生(京都国際)。キャッチャーとして大成するヒントになったステップ【前編】 | 高校野球ドットコム
釣寿生(京都国際)

 そして、満を持して2年春に正捕手の座を獲得。「最初は緊張していた」と話すが、公式戦に慣れるに従って、徐々に実力を発揮する。先輩投手である酒井海央(現日体大)と生駒拓也(現京都先端科学大)を懸命にリードし、学校として始めて京都の頂点に立った。「嬉しい気持ちがありましたし、近畿大会にも出られたのは大きかったと思います」と昨春は自身を掴む大会となった。

 夏は決勝戦でサヨナラ負けを喫し、秋に巻き返しを誓ったが、準々決勝で敗退。「自分の代でセンバツ狙っていましたが、全然ダメな結果に終わってしまって、先輩にも申し訳なかったですし、自分にも腹が立ちました。取り組みが甘かったのかなと思います」と悔やんだ。

 秋の悔しさを晴らすべく、「助けてくれる先輩もいなくて自分でやらないといけないと自覚していたので、誰よりも努力しようと考えていました」と冬場は懸命に努力を重ねた。春にはパワーアップした姿を見せるはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、春季大会は中止。最後の夏に全てを懸けることになった。

 4月に緊急事態宣言が出されてから5月24日までは全体練習ができず、実家に帰ることになった。近所のバッティングセンターも閉鎖されていて、思うような練習はできなかったが、「動画見たり、考えたりする時間があったので、キャッチャーとして一皮むけたのは感じましたね」と小牧監督が話すように大きく成長する期間にできた。特にスローイングは3月に就任した青山友紀コーチの指導を取り入れ、創意工夫を重ねてきたという。その中でも意識して取り組んでいたのが足の運び方だ。

 「スローイングの足の運びを相手打者の左右で変えています。右バッターだったらノーステップで投げ、左バッターではステップしやすいので、ステップして投げています。今は右バッターの時にノーステップでいかに早く投げられるかを考えて練習しています」

 自粛期間に家で地道に足運びのトレーニングを行ったことで、二塁送球のタイムが大幅に改善。これまで2秒前後かかっていたのが、現在は1.85秒まで短縮された。昨年と比べても動きが俊敏に見え、より捕手らしくなった印象を受ける。現在の姿を多くの人に見てもらえれば、評価はさらに上がることだろう。

(記事=馬場遼

関連記事
第528回 細かい野球を追求し悲願の甲子園へ 京都国際(京都)【後編】
第1014回 早、釣のドラフト候補だけではなく、全学年に逸材が揃う京都国際。そして選手の個性を引き出すスタッフ陣にも注目!【後編】
第991回 大混戦を勝ち抜き京都翔英が優勝を飾った秋季京都大会を総括!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!