石川に現れた全国レベルのショートストップ・中津大和(小松大谷)の成長の軌跡
石川県は内山壮真(星稜)がドラフト上位候補として注目を浴びる。その内山に負けない魅力を持ったショートがいる。それが小松大谷の中津大和だ。180センチ75キロと均整のとれた体格から昨夏の石川大会では20打数12安打と大当たりを見せている。そしてスピーディかつ安定感のある守備も魅力的で、その高度な守備技術は玄人受けの評判だ。50メートル5秒8の俊足であり、中津は「スピードならば内山に絶対に負けないです」と胸を張る。そんな中津の成長の軌跡を追っていく。
自分の課題を克服して良さを強みに
中津大和(小松大谷)
石川県出身の小松は父親が自衛隊勤務ということもあって、2歳の時に沖縄へ引っ越し、小学校1年生の時から野球を始めた。沖縄の少年野球チーム、中学1年まで那覇ボーイズでプレーし、父親の転勤で石川県の小松に戻り、小松ボーイズでプレーした。
当時から1番ショートとして活躍。中学時代から50メートル6秒前半、ミート力の高さには自信があった。そして中津はボーイズの中日本選抜に選ばれ、鶴岡一人記念大会に出場。そこで感じたのは相手チームのレベルの高さ、体格差だったという。
「強いチームと戦わせてもらって、自分の力の無さに気付かされましたし、周りを見れば、体のでかい人ばかりで圧倒されてしまいました」
それでも良い経験と捉えた中津は小松大谷へ進学することを決意。2学年上の中津の兄が同校でプレーしていたことがきっかけだった。
「兄から色々話を聞いて、小松大谷でプレーしたいと思いました」
中津は実力が認められ、いきなり1年夏から背番号14としてベンチ入り。背番号は10番台だが、実質レギュラー扱いだった。西野監督は起用についてこう語る。
「まず長打力はそれほどなかったのですが、ミート力が高かったこと。そして最大の武器はスピードでしたね、50メートルは5秒8でしたし、一塁まで駆け抜けも4秒切っていましたので、起用することを決めました」
打順は8番、9番。そしてセカンドで起用され、4試合で11打数3安打4打点と1年生にしては結果を残したように見えるが、パワー、技術不足を痛感した。
その課題克服のために打撃フォームでは浅めだったトップを深くとるようになった。
「当てることは得意だったんですけど、当てるだけだったんです。だからトップを深くとってより強い打球を打てるフォームにするために、ティーバッティングなど打撃練習でフォームを固めていきました」
中津大和(小松大谷)
そして中津は守備技術の高さを絶賛されているが、西野監督は「私は守備のほうが課題だと思いますね。起用したのはまず脚力、ミート力の高さがあったからですので」と答えれば、中津も「守備は良くなかったですし、実際にミスも多かったです」と課題だととらえていた。
守備を上達するために、カギとなったのは「左足」から「右足」の置き換えだった。
「自分はこれまで左足に体重を乗せていましたが、そうすると足が固まってしまう感覚になってしまい、うまくスタートが切れなかったんです。そこで、秋の大会が終わってから右足に体重を乗せることを意識して、練習を繰り返しました」
すると、今までとは違う感覚で捕球ができる。足が動き、スピード感を持ってプレーができるようになったのだ。「一発で捕球し、すぐに送球ができるようになりました。何より捕球姿勢が低くなって、打球反応も良くなりました」と手ごたえをつかんだ。
こうした発見は守備練習で何度も自分に合う感覚を試行錯誤したり、源田壮亮(埼玉西武・大分商出身)の守備動画を見て模倣をしながら見つけていったものである。
自粛期間でも有意義に時間を使って
中津大和(小松大谷)
攻守で力をつけた中津は1年生のときよりも手応えを感じながら夏を迎えていた。
「まず打撃面は練習試合から好調でしたし、とても自信がありました。課題の守備は少し不安があったのですが、自分の中で良いイメージで臨むことがができていました」
その言葉通り、中津は大会序盤から安打を連発。決勝進出に貢献し、5試合で20打数12安打3打点と大当たり。長打も増え、中学以来となったショートではそして安定した守備を披露。自身の評価を高める夏となった。
しかし中津は決勝の星稜戦で、奥川恭伸(東京ヤクルト)に完全に抑え込まれ、無安打に終わったことが悔しかった。
「まだ自分のレベルでは打てないんだなと思いましたし、夏の大会が終わってから150キロを超える速球に設定してそれに振り負けない練習を行ってきました」
冬場では練習後に自宅で500本のスイングを行い、さらにウエイトトレーニングで筋力をつけ、入学時は174センチ63キロだったが、180センチ75キロまでサイズアップ。
西野監督から「打撃面の成長は著しく、スタンドインする打球も多くなっていましたよ」とパワーアップした打撃面の成長をたたえていた。その成長の成果を試す舞台が春だった。しかし中止となり、チームも5月末まで休校に合わせて活動停止。夏の大会が開催されることを望みながら、自主練習に取り組んでいる。
この自主練習期間、中津はチームとして取り組んでいる野球手帳に日々の練習計画を記入をして、練習に取り組んでいる。1日に何をやるのか。自分がやることを行えば、短時間で済むこともある。「自主練習期間はとても有意義にできています。入学した当初は何をやればいいのかわかりませんでした。
しかし小松大谷では自分で課題を見つけて取り組む野球部なので、だんだん見つかってきたと思います」と野球手帳の意義を語った。
現在、主将を務める中津。西野監督は「今年の3年生は例年より少なく16名しかいないんです。その中で中津は言葉で引っ張るタイプではないですが、プレーや背中で引っ張る選手だと思います」と期待を寄せる。
中津は「最初は大変さがありましたが、3年生16人しかいないからこそ、チーム力を大事にしてきましたし、この3年生たちと一緒に夏を迎えたい思いは強いです」」と開催を望んでいる。
こうして活動休止期間でも前向きに取り組み、成長を見せている指揮官のコメントを聞くと、何かしらの形で舞台が用意されることを期待したい。
(取材=河嶋 宗一)
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