元中京大中京OB・西川世一氏(株式会社ESSPRIDE社長)が語る、高校野球が教えてくれたこと
少し日差しが傾きつつも、どこか秋らしい強い日差しが差し込む愛知県名古屋市昭和区。東海道新幹線・名古屋駅から地下鉄鶴舞線で20分ほど離れたいりなか駅が最寄り駅で、閑静な住宅地の中に構える学校こそ、全国区の名門校・中京大中京だ。
先日行われた明治神宮大会では優勝を決めた、秋の日本一のチーム。2009年には堂林翔太(広島東洋カープ)を擁して、日本文理との大接戦の末に甲子園を制した経験もある甲子園勝利数日本一の中京大中京。今回はそんな中京大中京で1996年にプレーし、現在は株式会社ESSPRIDEで代表取締役を務める西川世一社長にお話を伺い、当時の話を語っていただいた。
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愛する母校への進学は相思相愛で決まった
15時過ぎ、タクシーから降りたがっちりとした体格の男性。全身エンジ色のスーツを身に纏い、落ち着いた佇まいで中京大中京の前に現れた人物こそ、西川世一社長だ。
軽く挨拶を済ませ、校舎の奥にあるグラウンドへ足を運ぶ。人工芝のグラウンドにダイヤモンドの部分が土になっている長方形のグラウンドの周りを歩きながら、バックネットの方へ移動。全体練習が始まる少し前とあって、グラウンドにはまだ選手たちが準備をしているところだった。
現在チームを指揮する高橋源一郎監督は、西川社長の1つ下の後輩にあたる。挨拶を済ませると、チームの話へ。取材日は東海大会真っ只中で、神宮大会、そして選抜出場がかかった大事な時期。チームの状態や試合の話で盛り上がりを見せている姿を見て、西川社長も1人のOBとして、しっかりと後輩たちの戦いを見守っていることが分かった。
その後、グラウンドに降りて記念撮影をするなど、後輩・高橋監督と練習前のひとときを楽しんだ西川社長。そのままレフトの方へ歩みを進める。現役時代、慣れ親しんだレフトのポジションへ到着し、腰を下ろすと当時の話を始めた。
「卒業してから20年以上経ちましたが、グラウンドに来たのは、その時以来です。やっぱりレフトを見ると、当時のノックのシーンだとか、大藤監督にミスして呼ばれてホームまで全力で行って叱られるシーンとかを思い出しますね」
小学生の時からプロ野球選手を夢に見ながらも、地元・中京大中京の試合を見に行くほど強いあこがれを持っていた西川社長。小学生の時から春日井ボーイズで投手兼外野手として活躍。周りのチームメイトは愛工大名電や享栄へ進学する中、西川社長のもとには念願の中京大中京からの話が舞い込んできた。
多くのことを経験して社長という会社の監督になった
中京大中京のグランド
西川社長はもちろん迷うことなく中京大中京への進学を決意。だが、中学3年生の夏の時に行った際に、環境に衝撃を受けた。
「周りの同級生には140キロ以上を投げるような投手や、先輩方も凄くて『場違いだ』と思うほど凄いレベルが高かったです。けど、上下関係や礼儀を学ぶことが出来ましたし、中京大中京で良かったと思っています」
また大藤監督との出会いも西川社長にとっては大きな財産となった。
「これまでで一番厳しくしてくれたのは大藤監督でした。あの時の厳しさや学んだことが今になって活きています」
そんな大藤監督のエピソードで西川社長はこんな話を持ち出した。
「僕が思うように活躍できない時に、僕のポジションに主将が来たんです。そうなると僕は2番手になってしまうので、負けたくないですし悔しかったので練習するんです。そうすると、主将はいつのまにか前のポジションに戻っているんです。そういう性格を見て成長のきっかけを作れる監督は凄いと思います」
高校時代の西川世一社長
西川社長は腰の怪我の影響で1年ほどグラウンドに立てない長期離脱があるなど、挫折を経験。しかしバッティングを武器に強豪・中京大中京で存在感を示し続け、怪我から復帰後はレフトのスタメンの座をつかみ取ることに成功した。だが最後の夏、愛知大会準決勝でチームは敗れて甲子園出場とはならなかった。
その後、中京大中京を卒業した西川社長は大学へ進学するが、「父のように経営者になりたい」という夢を叶えるべく、大学を3ヶ月で辞めて経理学校へ転入。音楽イベントのプロデューサーと平行して、様々な経験を積んで父が経営していた紙器製造会社に入社。新規事業を模索し、広告代理店へアポイントをかける営業活動の日々を過ごしてきた。
しかしある日限界を感じてしまった西川社長は、新たな挑戦を始めようと決心し、お菓子を切り口にしたビジネスモデルを構築。そして2005年に株式会社ESSPRIDEを設立して、商品プロデュースを軸に幅広い展開をして企業を拡大してきた。最近では、社長チップスが有名だ。
現在は東京に本社を構え、全国で展開するエスプライド。そのエスプライドというチームの監督として全体を管理する西川社長。高校野球と今の仕事の共通点があるか聞いてみると、「仲間と一緒に結果を残す、目標に向かっていくところは同じ。なので、もっとシンプルに仕事を考えてもいいのかもしれない」と答えてくれた。
そんな西川社長の人生の恩師である、大藤敏行監督との対談の模様は次回ご紹介します。次回もお楽しみに。
(文/田中 裕毅 )
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