Interview

埼玉ナンバーワン左腕・米山魁乙(昌平)が勝てる投手になるために取り組んだこと

2019.10.08

 今年は佐々木朗希、奥川恭伸といった高校生右腕の人材の豊富さが目立つ中、左腕の好投手は数少ない。そんな中、評価が高いのは、昌平米山魁乙だ。速球は140キロ前半ながら、伸びのあるストレートで、さらに120キロ後半のカットボールを織り交ぜ、次々と空振りを奪う。最後の夏は準々決勝まで無失点。16.1回を投げ3失点と抜群の安定感を発揮し、埼玉県ナンバーワン左腕として評価を高めている。

 そんな米山は最後の夏へ向けてどんな課題を設定し、取り組んできたのか。また、来たるドラフト会議に向けて、どんな心境で1日を過ごしているのかについても語っていただいた。

春に出た課題を克服し、夏ではリリーフとして活躍

埼玉ナンバーワン左腕・米山魁乙(昌平)が勝てる投手になるために取り組んだこと | 高校野球ドットコム
米山魁乙(昌平)

 今春の県大会では最速140キロを計測し、県内屈指の好左腕として注目され始めた米山。
 ただ、関東大会出場をかけた春季大会準々決勝で浦和実に敗れ、関東大会出場を逃してしまう。その敗戦で、米山は「気持ちが先走ってしまい、感情もボールも、うまくコントロールできなかったのが反省点として残りました」と振り返る。

 春季大会のピッチングを見ると、浦和実戦に限らず、米山のピッチングは基本的にストレート中心。そしてムキになって制球を乱す場面も見られた。

 制球力の重要性を痛感した米山は練習試合において、シート打撃ではスピードではなく、コントロール重視の投球を心掛けた。

 そして11月から取り組み始めたカットボールの精度を高めた。
 「カットボールを投げるきっかけになったのは、昨秋の地区予選の花咲徳栄戦での敗戦です。遅い変化球だと徳栄のようなレベルの高い打線では、うまく待たれてしまい、打たれてしまった。速い変化球はずっと必要だと思っていました」

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米山魁乙(昌平)

 

 夏前には120キロ後半のカットボールを完成させ、「ピッチングの引き出しが増え、自分の中でバリエーションが広がったと思います」と手ごたえを感じていた。また米山のストレートはナチュラルに動く。

 「自分は普通の真っすぐを投げているつもりですが、動くストレートも自分の特性なので、しっかりと武器にしようと思いました」

 そして夏の大会では先発ではなく、リリーフ中心の起用。米山は「本心では先発でいきたいという気持ちがありましたが、チームが勝つことが一番なので、リリーフで頑張ろうと思いました」とリリーフ起用で勝つ投球に専念しようと心に決めた。

 準々決勝までの4試合で無失点の快投。
 「初戦こそばらつきはありましたが、徐々に制球力が高まっていることは実感していました」
 自慢のストレートもレベルアップしていることを実感した。

 「ストレートで空振りを奪った時、バットがボールの下を振っている空振りも多く見られました。また春日部共栄戦で投げていて実感したことは、インコースに投げ込んだ時に、だいぶ詰まった打球のファールも多くなっていて良かったと思います」

 しかし準々決勝の春日部共栄戦では5.1回を投げて、6四死球、3失点と悔しい内容で敗退、夏が終わった。

[page_break:夏が終わってからもレベルアップ。ドラフトへ向けての心境]

夏が終わってからもレベルアップ。ドラフトへ向けての心境

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米山魁乙(昌平)

 そして夏が終わって、米山は連日、チームの練習に参加している。今までと比べると自分の時間が取れるようになり、生活リズムにも変化が出た。
 「夏が終わって体力面にも課題があったので、睡眠時間が増えました。食事量は夏前とそれほど変化はありませんが、体重は5キロ増えて83キロになりました」

 体重が増えたことで、ボールの質に変化が出ている。
 「今はそれほど力を入れなくても、強いボールを投げることができていますし、夏よりも制球力、球威は出ているように感じます」
 実際に取材日にブルペンでピッチング練習に入ったが、力のあるストレートを投げ込むことができていた。

 そして9月にプロ志望届を提出。ドラフトが近づき米山は
 「自分の実力は、上位候補と呼ばれる投手と比べれば、立ち位置は全然分かりません。不安もありますが、これからも頑張って練習を続けて当日を迎えたいです」

 プロ入りが実現した時について、「僕は横浜DeNAにいる今永昇太投手とタイプが似ているので、今永投手のように活躍したいです」と決意した米山。

 3年間、米山の成長を見守ってきた黒坂監督は
 「コツコツと自分の課題に向き合いますし、性格的には、アマチュア野球よりも、プロ野球のほうが生きるタイプだとみています」と期待を込める。

 今年の埼玉ナンバーワン左腕の下に吉報は届くのか。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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