選手第一主義・変化をするために自分で考えさせる!鹿児島高校(鹿児島)【後編】
2017年に決勝、2018年には準々決勝進出を決めた鹿児島。新チームは「選抜出場」をいう目標を掲げてスタート。この目標の意図や成功体験に縛られない重要性を前編では考えた。後編では鹿児島の上之薗 大悟監督の選手育成論を中心に話を広げていく。
前編はこちらから
◆敢えて高い目標から始まった新チーム・鹿児島高校(鹿児島)【前編】
変化をするために自分で考えさせる
練習を見守る上之薗 大悟監督(鹿児島)
「なるべく自分の方から言わないようにしてます。でもグランドに出たらやかましいですし、細かいことを言うんですが、言われたことプラスアルファを生徒がわかってくれるようになるとチームは強くなってくると思います。言われたことをそれしかしないようだと、社会に出て色々な工夫ができないといけないという話もしています。自分で考えて成長できるようになってくれることを考えて指導しています」
上之薗 大悟監督の言葉である。もちろん野球がうまくなるためというのもある。夏を勝ち抜けるチームになるには自分で考え動けることが大前提になってくる。そのためには、日々の練習で言われたことを理解して、それ以上のことを自分で考え動けることが大事になる。
このことは野球以外にも選手にとっては財産になる。つまり、上之薗監督が意識しているのは選手たちが卒業して社会に出たあとの目に見えないスキルなのだ。この選手の将来と言うキーワードは、上之薗監督と話した、食トレの話でもよく分かる。
「食べる量にしても管理はしていないですけど、体重は測っているので増えてるのや増えてないの、差は歴然としてきますね。ただ、たくさん食べさせて、野球が終わったあと、リバウンドして本当に彼らに良いことなのかなども考えていますね」
つまり、管理していない分、自身で考えさせているのである。それは自分で考えて行動することを促している。そして、同時に卒業後の選手のことも頭に入れているのである。
だからこそ、野球ではもちろんのこと、人生の糧になる、「自分で考える」を上之薗監督は選手に求めているのである。
選手第一主義
上之薗 大悟監督(鹿児島)
「捕手出身なので、性格をみるんですね。野球に必要なことじゃなくて社会に出た時に、この子は顔にだしてしまう、この子は嫌なことを避けてしまう、この子は言われたらシュンとしてしまう、など足りない部分をこの子らに教えている感じですね。卒業したあとの人生、『いいお父さんになりなさい、“他気力(たきりき)”と言われますけど、人を喜ばせる、他人を喜ばせる力を身につけなさい』と伝えています」
「原点は、子どもたちができないことを出来るようにするのが僕らの仕事だと思っています」
ここに上之薗監督の指導論を垣間見た気がした。
上之薗監督は、選手の将来までの長い時間軸を考えて指導している。ただし、その中で最大限の効果を出すための方法を常に考えているのである。野球で言えば、秋季大会で「選抜目標」を掲げたように、色々なやり取りをすることで、選手の反応を見て、そして選手の成長を最大限出す方法を探しているのである。
更に、上之薗監督は成功体験に縛られていないことを再度触れておきたい。
だからこそ、変化を恐れずにトライしていくのである。今年の鹿児島は、指導者・選手が変化を受け入れ、前を見ている。夏までに選手たちが自分自身で考え、監督の言われたこと以上の理解をし行動できるようになれば、まったく違うチームになっているだろう。鹿児島にはそれが出来るのではないかという可能性がある。夏までにどのようなチームになっていくのか。十分期待していいと思う。
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◆敢えて高い目標から始まった新チーム・鹿児島高校(鹿児島)【前編】
(文:田中 実)