Interview

ミズノプロに並ぶ、2大ブランドとなる宿命を背負うグローバルエリート

2019.09.27

 多くの野球選手を支え続けるミズノ株式会社。そのミズノが提供する最高品質といえば、「ミズノプロ」。2019年に30周年を迎えたのを記念して、歴代のグラブ企画担当者のインタビューを行ってきた。

 その「ミズノプロ」とは違う路線を走り、多くのプレーヤーの心を掴んできたミズノが誇る人気ブランドが「グローバルエリート」。こちらも2019年に10周年という節目を迎えたということで、これまでグローバルエリートを担当してきた石塚裕昭さん、そして須藤竜史さんの2人にお話を伺い、「グローバルエリート」が歩んできた10年間を振り返る。

~ミズノプロ30周年・グローバルエリート10周年記念特集~
第1弾…3Dテクノロジーの先駆けとなったミズノプロ グラブが誕生するまで 久保田憲史執行役員
第2弾…3Dから4Dテクノロジーへ。進化を遂げたミズノプロ 寺下正記次長
第3弾…「自分の手のようにグラブを動かしたい」イチローのニーズは全プレイヤーのニーズ 柳館宗春さん
第4弾…進化のカギは「旧シリーズを超えろ」。スピードドライブテクノロジー開発秘話 石塚裕昭さん
第5弾…野球界の進化に比例してミズノプロも進化を続ける 須藤竜史さん
第6弾…ミズノプロに並ぶ、2大ブランドとなる宿命を背負うグローバルエリート

阪急電車からヒントを得たローズブラウンを携えて「グローバルエリート」は誕生した

ミズノプロに並ぶ、2大ブランドとなる宿命を背負うグローバルエリート | 高校野球ドットコム
グローバルエリートを立ち上げた石塚裕昭さん

 「グローバルエリート」の創設者は、スピードドライブテクノロジーを作り上げた石塚裕昭さん。新ブランド立ち上げの背景を聞くと、
 「それまではヴィクトリーステージがありましたが、少し下降傾向にありました。そこで社内で『プロ野球選手にも使ってもらえるようなブランドを作ろう』という流れができました」と当時を振り返りながら語る。

 ミズノプロに肩を並べる人気ブランド誕生に向けて、取り入れたのは「軽快感、軽さ」だった。
 「市場の流れが『軽さ』でしたので、グローバルエリートでもそれを求めました。ただ、軽くすると強度が落ちる問題がありました」

 石塚さんは軽さと強さの両立のために、パーツごとに厚さを設定した。
 「ミズノプロはポケットの部分の革を薄くすることはしないんです。けど、それだと軽くならないので、グラブの芯を作って厚さをパーツごとに決めるようにしました」
 さらにボールを掴みやすくするために、ボールの掴むときのグラブの動き方から逆算。型紙に落とし込むことで、理想に近い形を再現した。

 ただ、新しいカラーリングを作り上げる方にも苦労した。
 「新しい色を作るのが課題で、当時はオレンジやイエロー系が人気でした。なので、オレンジやイエローで新色を探しましたが、なかなかいいものが出来ませんでした」

 そんな石塚さんを救ったのは阪急電車だった。
 「出社する際に阪急電車を使っていたのですが、車両の色を見た時にピンっと来ました。当時はグラブに茶色を使うのはOKでしたので、赤みがかった茶色を作りました」

 こうして新色・ローズブラウンを携えて新ブランド「グローバルエリート」は誕生。当時、(甲子園優勝投手の)堂林翔太が使っていたこともあり、発売当初から好スタートを切ることが出来た。

[page_break:歴代の担当者が明かす、これからの10年への想い]

ミズノプロがミズノプロである所以は伝統とプライドだった

ミズノプロに並ぶ、2大ブランドとなる宿命を背負うグローバルエリート | 高校野球ドットコム
現在携わっている須藤竜史さん

 新ブランドを0から立ち上げ、見事成功させた石塚さんの後を継いで担当した須藤竜史さん。
 「コンセプトに掲げていた『軽量感』というのが評価されていましたが、少年用や軟式用がメイン。ミズノプロはNO.1だとすると、グローバルエリートは2番手止まり。どうしても硬式用のグローバルエリートがあまり使ってもらえず、そこに苦労はありました」

 他社も年々力をつけ始めている中、ミズノの中ではミズノプロに並ぶ強力ラインナップが必要になった。そこで白羽の矢が立ったのがグローバルエリートだったのだ。グローバルエリートが改革を起こしたのは2018年の100回記念大会に合わせて登場した、新色・ラディッシュだった。

 「100回大会に合わせてインフィニティーという、ミズノプロにはないしっかりとした感覚を得られるグラブ。それと同時に、新色のラディッシュを出しました」

 こうして硬式野球でもプレーをするようなトップ層にも愛されるグラブになった。こうした軽量感だけではなく、トップレベルの選手にも愛用されるようなグラブに進化してきたグローバルエリート。様々な工夫を重ねて迎えた10年。今後に向けて初代の石塚さんは、
 「(グローバルエリートは)2大ブランドにならないといけないです。現段階でミズノプロに負けないものになっているはずなので、あとは販売方法や広告のやり方だけ。これからの10年で肩を並べられるようにしてほしいです。
 ただ、コンセプトがぶれそうになることもあるので、そこだけは懸念ですかね」とこれからに不安と期待を胸に秘めていた。

 そして現在携わっている須藤さんは、「グローバルエリートはその選手の能力に上乗せしてあげられるグラブだと思っています。ミズノプロと両立していくためにも、そういった立ち位置を今後も引き継いでいってほしいです」と、グローバルエリートだけが持つ存在感を大事にしてほしいことを明かした。

 これからのミズノのグラブを引っ張るのはミズノプロだけではなく、開発者の熱き思いを背負ったグローバルエリートの存在も欠かせない。

(記事=田中 裕毅

~ミズノプロ30周年・グローバルエリート10周年記念特集~
第1弾…3Dテクノロジーの先駆けとなったミズノプロ グラブが誕生するまで 久保田憲史執行役員
第2弾…3Dから4Dテクノロジーへ。進化を遂げたミズノプロ 寺下正記次長
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第4弾…進化のカギは「旧シリーズを超えろ」。スピードドライブテクノロジー開発秘話 石塚裕昭さん
第5弾…野球界の進化に比例してミズノプロも進化を続ける 須藤竜史さん
第6弾…ミズノプロに並ぶ、2大ブランドとなる宿命を背負うグローバルエリート

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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