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世界一への道は、野手陣の成長が最重要!U-18野手の走攻守の課題を洗い出し!

2019.08.29

 8月30日から始まる第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ。順調な仕上がりを見せている投手陣に対し、野手陣は走攻守すべてにおいて課題がみられる。世界一のカギを握っているのは、「野手陣の成長」といっても過言ではない。

ここまで好調な野手はだれだ?

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石川昂弥(東邦)

まずはここまでの国内合宿で、バッティングの調子が上がっている選手を紹介したい。

 最も好調なのは、高校通算53本塁打の石川昂弥東邦)。

 国内合宿で行われた実戦3試合すべてで安打を放ち、チームトップの4打点、4安打を叩き出した。石川の対応力は代表選手の中でも一番。大学代表戦の5回表に放ったフェンス直撃の適時二塁打は、あわやホームランの当たりとなったが、140キロ中盤の速球にも対応できており、チームの打の柱となることは間違いない。

 同じく東邦熊田任洋も素晴らしいバッティングを見せている。24日の駒澤大戦では、2試合で3安打。さらに大学代表戦でも、適時打を放ち、チームトップの4安打をマークした。

 遠藤 成東海大相模)は、駒澤大とのオープン戦で2試合連続適時打を放つ活躍で、「長打力」という点では石川に次ぐ選手だ。打撃フォームの形が良く、強い打球が打てるのが魅力。

 まだ目立った活躍はないものの、世界大会での本塁打を期待できるのが森敬斗桐蔭学園)だ。体全体を効率よく使ったフルスイングで、捉えた時の打球はホームラン性の当たりも多い。飛距離はあるものの、まだファールも多いが、打撃練習を見ていても痛烈なその打球に期待がもてる。ミスショットを少なくし、戦いながらも、いかに精度を高められるかが課題となる。

 また、武岡龍世八戸学院光星)にも期待したい。大学代表戦ではインコースの速球を振り抜き、二塁打とした。しかも、打った投手が、150キロを超える速球を投げる伊藤大海(苫小牧駒沢大)からだった。

 武岡はインコースが課題といわれているが、スイング軌道が良い時はコース関係なく打ち返している。

 調子が良い時は、手首が早く返らず、下半身にも粘りがあって縦軌道のスイングができているが、悪い時はすぐに手首が返ってしまう。良い状態が続けば、スタメン固定も時間の問題だ。

 横山陽樹作新学院)も大学代表戦で安打を放ったが、スイングの鋭さ、打球の鋭さは他選手にも負けてはいない。

[page_break:今後の課題は左投手への対応!指名打者を誰にするのか?]

今後の課題は左投手への対応!指名打者を誰にするのか?

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武岡龍世(八戸学院光星)

 毎年、日本代表の課題は、『左投手への対応』といわれているが、今年もその傾向は変わらない。ここまで、駒澤大戦とのダブルヘッダーと大学代表戦の3試合で登板した左投手は、塩田 幸十郎(駒澤大)、早川隆久(早稲田大)、佐藤隼輔(仙台大)の3名だが、左投手から奪った得点は1点のみ。

 その1得点も、駒澤大戦で、左腕・塩田から別の投手に代わってから点を挙げたもの。塩田に失点がついた形とはなるが、実質、左投手から1本も適時打を打っていない。

 今年はU18代表には、左打者は6名いる。大学代表戦のスタメンのうち、左打者は5人という構成だったが、左投手対策をさらにしっかりと行っていきたいところ。

 また、DHの選択も課題だ。ここまで投手陣の中では、最も打撃が良い浅田将汰有明)が先発出場しているが、投手が本職なだけにDHは厳しいだろう。

 日本代表は、色々なポジションを守れるマルチプレイヤーが好まれるため、どうしてもDHが弱くなる。本大会でも課題となりそうだ。

【守備面】ポジショニング、判断力など課題は山積み!投手陣を盛り立てられるディフェンスを!

 今年は内野手7名、捕手2名、外野手2名という守備人員の構成となっている。

 そのため、自チームでは遊撃手だった6名の選手が、三塁、一塁、外野を守ったりしているが、不慣れな面は拭えない。

 本来はショートの武岡龍世が、「真剣に守り始めると、ポジショニング、カバーリング、スローイングの距離感など覚えることがたくさんある」と語るように、外野守備の難しさを感じている。実際に大学代表戦の試合を見ても、レフトに回った遠藤成もポジショニング、打球勘に苦労している様子がみえる。とくに、ナイターになった時の打球勘をつかむことができるかが課題となる。

 また、ポジショニングの徹底もどこまで出来るかが不安が残る。

 ここまでの3試合を見ると、ポジショニングが甘く、また大学代表との試合を見ると、次のプレーのメンバー間での共通認識もできていない。

 例えば、大学代表との試合では9回裏、同点の適時打を許した場面。捕手の山瀬慎之助はアウトにできないとみて、ホームベースを飛び出して打者走者の状況を見ながら送球を取りにいっているのに対し、センターの森は二塁走者をアウトにしようと思って思い切りバックホームしている。守備の連係で一番怖いのは野手の認識の相違で、ここがずれてしまうと、思わぬミスにつながってしまう。そういった部分を一つずつ積み重ねてしまうと、取り返しがつかなくなってしまう。

 木製バットを使う今大会は、ミスで失った得点を打って返せるほど甘くはない。そのため、無駄な点を与えないディフェンスが求められるだろう。今年は遊撃手からほかのポジションを守っている選手が多いので、判断力を鍛える時間はわずかしかないが、経験を重ねて、隙の無い守備を築いていきたい。

 

 それでも、チームとして、一歩ずつ成長している様子はみてとれる。

 26日までの大学代表戦まで、最初はサインミスが多発し、永田監督も厳しい表情を浮かべていたが、大学代表戦の9回表の勝ち越しスクイズは永田監督もベンチを飛び出して拍手をするほど大盛り上がり。この攻撃は、チームとしての一体感も感じさせた。

 緊迫した場面での成功体験は間違いなくチームを成長させてくれることができる。30日から始まる世界大会では、1試合ごとにレベルアップし、日本代表らしい戦いを期待したい。

(記事=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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