試合レポート

郡山商vs目黒vs志木

2019.08.09

都立目黒、志木(埼玉)を郡山商が迎え入れる交流戦を本宮の白沢グリーンパークで

郡山商vs目黒vs志木 | 高校野球ドットコム
郡山商と志木

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 会場となった[stadium]白沢グリーンパーク[/stadium]は、福島県の中通り地区で、JR東北本線で言えば郡山駅と福島駅の間に位置する本宮駅というところから、タクシーで15分ほどのところにある球場である。正式には「[stadium]楽天イーグルスグリーンパーク本宮[/stadium]」というネーミングライツとなっているようだ。かつては白沢村と言われていた地区だが、平成の市町村合併で本宮市となった。本宮市は、冬は比較的行きも少ないということもあり福島県内で一番住みやすい街ということになっているという。この[stadium]白沢グリーンパーク[/stadium]は体育施設や子ども用のアウトレットのキッズパークのような遊び場などを含めた、一大公園となっている。あの、2011年の東日本大震災後には現在駐車場となっているところに仮設住宅も建てられていたという。

 球場そのものは築25年以上を経ているので、いささかの古さは否めないものの両翼100mあり、中堅122mでファウルグラウンドもかなり広く取ってある。福島県では高校野球の県大会などの会場の一つにもなっているくらいだから、公式球場である。交通の便としても、福島県内の球場の中では悪くない方だということだ。

 この日は福島遠征4日目で最終日となる東京都の都立目黒が遠征最終試合として訪れていた。また、この日の朝に埼玉県の志木市を出発して約5時間かけてやってきたという志木の最初の試合として、いずれも郡山商が迎えるという形となった。

 近年、8月になって新チームが出来た際の合宿として、東京都や千葉県、埼玉県などの学校で福島県の飯坂温泉界隈に宿をとり、二泊三日もしくは三泊四日あたりで福島県内各校と練習試合を組んだり合同練習という日程を組んでいるところが増えている。これは、福島県の安達出身で、現在は千葉県高野連の役員を務めながら白井で指導している櫻井剛監督が、以前に東京都に赴任していた頃から、故郷の福島県で合宿や遠征をしてみませんかと、積極的に各校に声をかけて合宿を組んでいたというところから始まっている。現在は「東関八月会」と称して、交流を深め合っている。

 高校野球は、こうして熱心な指導者がいろいろな活動をしながら、それぞれに苦労しているところに声をかけていきながら輪を広げていって交流が深まるという面白さもある。また、県(都)外の学校と試合をしていくことで、選手たちも新たな高校野球文化を体感していくということも意味としては大きいのではないだろうか。それに、遠征合宿ということで出発までの段取りや荷物の整理。野球を通じてさまざまなことを学んでいくことにもなる。異なる環境に触れることで発見もあれば驚きもあるだろう。そういうことは学校の教室の中だけでは決して学べないことでもある。そういう意味でも、高校野球を経験していくことによる学びの幅は大きいと言えるのだ。だからこそ、高校野球というのは、こうして長い歴史を維持しながら、頂点の甲子園だけではなく、それぞれの地方での活動、頑張りも評価されてきているのである。

 こうした遠征に同行することで、伝える側としても、改めて高校野球の文化的な意味と意義を感じていくということもある。

 郡山商はユニフォームの表記にもあるように「GUNSHO」という呼称で地元では親しまれている。来年には創立100周年を迎えるという県内でも屈指の伝統校である。小林修監督は「少し前は、70~80人くらいの部員がいてグラウンドはサッカー部とともに、ほとんどの男子生徒がいるという状態もありました」と言うが、今度の新チームは2年生8人、1年生14人で女子マネージャーが4人という布陣だ。「あの震災での原発の影響もあるとは思います。今の子たちは当時ちょうど小学校に入ったばかりの1~2年生でした。そんな時に、外で遊んではいけないということも規制されていましたし、県外に避難したという家族も多くいて子どもが減ってきたという影響もあるかとは思います」と、現状を見つめている。それでも、「毎年、女子の方が多い学校だけれども、そこで野球をやっている子たちで学校を活性化させていきたい」という思いで取り組んでいる。

 運営を手伝うマネージャーたちも、明るくテキパキと動いて仕事をしていた。試合では、選手名のアナウンスやSBOボードの操作などをこなしていた。



郡山商vs目黒vs志木 | 高校野球ドットコム
渡部大夢

 試合は郡山商がバントが安打になった3本ものを含めて21安打で都立目黒を圧倒。渡部大夢がしっかりと完投したのは立派だった。小林監督も、「今日は2試合あるので、出来るならば完投して欲しいと思っていたけれども、よく頑張って投げた。球数もそんなに多くはなかったのではないかな。それだけ、自分の投球が出来ていたということ」と評価していた。また安孫子と海村の二遊間の動きや球捌きなども、よく練習しているなという印象だった。

 都立目黒は、エースで4番で主将と言う高下洵が中心のチームだが、遠征最終日の4日目で疲労もあったということは否めない。4回に掴まってしまってからは修正が聞かなかった。鈴木春彦監督はこの4月に都立大森から異動してきて、秋の新チームから前任の鳴海崇行監督(責任教師)と入れ替わった。「グラウンドは決して恵まれてはいませんが、こうした遠征で何かをつかんでもらえれば」という思いである。そして、チームとしては比較的場所も近く同じ都心の都立校ながら2年連続で東東京大会決勝進出を果たしている都立小山台を目標として目指しているという。「ビッグイニングは作らせないということを目指していたのですが、今日は相手にビッグイニングを与えてしまった」と反省していたが、二塁手の田草川などはいい雰囲気とセンスを感じさせてくれる選手だった。

 志木は、1年生と2年生の総勢11人でマネージャー3人という小世帯。しかも、選手のうち一人は現在ケガで入院していて欠場。もう一人も遠征には同行しているが、腕を怪我して吊っているという状態で試合には出場不可能だ。ということで、9人ぎりぎりの中での戦いということになっている。それでも、浅川健太監督は「人数は少ないですけれども、実は投手に関してはそんなに心配していないんですよ。何人かは投げられます。キャッチボールを見て、これは行けそうだなと思ったら、(中学時代に経験はなくても)投手の練習をさせて、投手を作っています」という。

 その言葉を裏付けるかのようにこの日の試合でも、尾崎軍司が3イニング、内野から異動して前原悠汰が2イニング、キャッチボールを見て投手の練習をさせたという星勇之介がセンターから回って来て2イニング。そして最後は抑えて尾崎がライトから回ってきて2イニングを抑えた。そして、その間に先発した尾崎は左翼→中堅→右翼と外野を回っていった。実際、こうして試合で経験を積んでいくことが一番なれることでもあろうし、対応力も身についていくのであろう。

 人数が少ないと個人の練習としては、打撃やノックの機会なども多く、寮はこなしていかれるので、真面目に取り組んでいけば技術的には向上していかれる環境にあるともいえる。実際、志木の選手たちは器用にそれぞれのポジションをこなせていた。ただし、怖いのはケガ。

 この日の試合でも、投手の年の責任を2イニングこなして内野に戻った前原が、跳ねた送球を顔面に受けてしまい、欠場となってしまった。急遽、郡山商の選手を一人借りて、守りだけということで入ってもらっての応急処置となった。遠征初日でもあり、浅川監督は、「明日からどうしようかなと…、ちょっと考えていますが、相手チームにお願いすることになるかもしれません」と少し頭を抱えていた。それでも、前向きに取り組んでいく姿勢を示していた。

(取材・写真=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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