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群雄割拠だった福岡大会を総括!それでもやっぱり筑陽学園は強かった

2019.07.30

 選抜甲子園でベスト8に進出した、筑陽学園の優勝で幕を閉じた第101回選手権福岡大会。今年は例年以上に群雄割拠の様相を見せた大会となったが、最後は「秋の九州王者」と「春の九州王者」の対戦という、決勝に相応しい戦いとなった。
 そんな第101回選手権福岡大会を総括する。

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第101回 全国高等学校野球選手権 福岡大会

粘り強さに「力強さ」も加わった筑陽学園

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投手陣の柱に成長を遂げた筑陽学園の西舘昂汰(写真は明治神宮大会)

 春から打順の組み換えもあり、また春までは主にリリーフを務めていた西舘昂汰が主戦としてマウンドに上がるなど、戦力図に大きな変化があった筑陽学園。それでも、選抜甲子園で見せた粘り強さや接戦の強さは健在であった。

 決勝の西日本短大付戦では、序盤に3点のリードを許す苦しい展開となったが、中盤以降は進藤勇也の逆転ツーランホームランなどで効果的に点を重ね、最後は西舘が4失点完投でゲームセット。
 これまでの粘り強さに力強さも加わった新たな野球で、春夏連続、そして16年ぶり2度目の甲子園出場を決めた。

 敗れた西日本短大付は、近藤大樹神宮隆太の攻守の要を中心に、高い総合力を見せて勝ち上がってきたが、終盤のチャンスをモノに出来ずに西舘を打ち崩せなかったことが悔やまれた。
 大会を通じて主戦として投げ続けた江崎陸は、春季福岡大会、春季九州地区大会で大きな成長を遂げた投手。コーナーへの制球、そして緩急の上手さが非常に際立っており、この夏も抜群の安定感でチームを支えた。
 7年ぶりの甲子園出場は果たせなかったが、「春の九州王者」としての戦いぶりは福岡の高校野球ファンの目にしっかりと焼き付いた。

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最速149キロ右腕の下村海翔(写真は九州国際大付訪問にて)

 また、優勝した筑陽学園が最も苦しんだ試合と言えば、5回戦の九産大九州戦であった。
 先発した背番号10の2年生左腕・野田壮吾のボールに、全くタイミングが合わなかった筑陽学園打線。8回までを無失点に抑えられ、0対3と絶対絶命のピンチに立たされたが、一死からの四球を皮切りに驚異的な粘りを見せて最終回に一挙4得点。土壇場の逆転劇で準々決勝進出を果たしたのだった。

 敗れた九産大九州の野田はまだ2年生。
 球速は常時120キロ代前半ながらも、左横手からの変則的なフォームを武器に、この夏は好投を続けて5回戦進出に大きく貢献した。秋以降の投球にも注目である。

 そして今大会ナンバーワン投手と称された、下村海翔を擁する九州国際大付もまた筑陽学園の前に屈した。
 筑陽学園の西舘に対して、再三チャンスを作った九州国際大付打線だったが、中川壱生葛城陸といった中軸の打者に一本が出ず、2016年以来となる甲子園出場はならなかった。

 2点リードの五回から登板した下村も、6回に致命的な3点目を許して1失点。
 今大会では最速149キロを記録してドラフト上位候補に名乗りを挙げたが、チームの流れを変えることは出来なかった。

[page_break:ベスト8には公立高校が3校進出]

ベスト8には公立高校が3校進出

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ベスト4に進出した東筑(写真は東筑高校より提供)

 また今大会は、公立高校の躍進も大きく目に付いた大会でもあった。

 2018年の選抜以来の甲子園出場を目指した東筑は、「経験の浅いエース」の活躍でベスト4まで進出した。今大会で背番号1を背負った藤原圭一郎は、これまでは決してエースの立ち位置ではなかった。
 それでも、3回戦でシード校の嘉穂東を被安打3、8奪三振で完封勝利を挙げると、その後も実力校を撃破し続けて気が付けばベスト4に。準決勝では、西日本短大付の前に屈したが、青野浩彦監督の指導力と采配には感服させられた。

 そして、30歳の青年監督・牧島健監督が率いる小倉工も、大胆かつ緻密な野球でベスト8に進出した。
 選手個人の状況判断に任せる「ノーサイン野球」を実践する小倉工は、4番の久木田和志、5番の高橋駿介がポイントゲッターとなり、毎試合で6、7点を挙げる安定した戦いぶりをみせた。
 準々決勝では筑陽学園に力負けしたが、古豪復活に向けて大きな足掛かりを築いた大会となったのではないだろうか。

 最速146キロのプロ注目右腕・坂元創を擁した春日は、飯塚大牟田と県内の実力校を立て続けに撃破したことで一気に注目を浴びるようになった。
 初のベスト4を目指して臨んだ準々決勝は、惜しくも1対2で西日本短大付に敗れたが、「春の九州王者」を相手に接戦まで持ち込んだ戦いぶりは立派という他ない。

 進学希望を口にした坂元には、是非とも4年後のドラフトを目指して欲しい。

 ベスト8の顔ぶれを見ると、近年では珍しく順当に実力校が勝ち上がってきた大会となった。ここでは紹介でなかったが、潜在能力の高い選手が並んだ福岡大大濠や2012年以来の甲子園を狙った自由ケ丘も、全国でも通用する実力を有していた。
 2018年の春から3季連続で、福岡の代表校が九州地区大会を制しているように、近年の福岡県の高校野球レベルは非常に高い。

 そんな福岡を勝ち抜いた筑陽学園が、夏の甲子園の舞台でどんな戦いを見せるか注目だ。

(文=栗崎 祐太朗

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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