悔しい思い断ち切り 「みんなで」甲子園を獲る 木村優介(広島新庄)
センバツ出場の広陵と夏のシード権も獲得した市立呉。春の県大会Vの広島商を筆頭に如水館・崇徳・広に沼田・広島井口・尾道商と並んだシード校をはじめ、今年も群雄割拠で迎える「第101回全国高等学校野球選手権広島大会」。これに対し、前回大会準優勝で4年ぶりの夏甲子園を見据える広島新庄の「4番・捕手」を務めるのが、1年夏からベンチ入りを続ける木村 優介(3年)だ。
先日行われた広島県高等学校野球連盟招待試合でも大阪桐蔭(大阪)相手に大アーチを放つなど、ここまで積み上げた高校通算本塁打は40本近く。強打の大型捕手として鳴らす彼が今、想うこととは?球歴・打撃・捕手論含め様々な角度から聴いていく。
「ジャイアンツカップ」で全国知り、名将にあこがれ広島新庄へ
木村優介(広島新庄)
―― まず木村捕手が野球をはじめたのはいつですか?
木村優介(以下、木村) きっかけは幼稚園のころ、父とのキャッチボールからです。そこで野球が好きになって広島市立牛田2年の時、「牛田子供会ソフトボール」でソフトボールをはじめました。
―― 当時のポジションは?
木村 「身体が大きい」ということで捕手。そこからずっと捕手です。
―― 広島市立牛田中では硬式野球チームの「広島ボーイズ ジャガーズ」へ入団します。
木村 小学校3年の時から古葉 竹識さん(元:広島東洋カープ監督など)の弟さんだった古葉 福生監督(今年2月逝去)に声をかけて頂いたのと、体験練習を通じて「中学では硬式野球をやりたい」と思って入団しました。
小学校時代はソフトボールだったので最初はリードオフと距離に苦労しましたが、タイミングを取ることでアジャストしていきました。逆に硬式ボールはソフトボールより軽いので、よく飛びましたね。中学3年では4番を打たせてもらいました。
―― 中学時代、全国大会の経験はありますか
木村 全国大会は4回。そのうち2年生の時は「ジャイアンツカップ」ベスト8です。この時は、準々決勝で宮崎リトルシニアに延長サヨナラ負けでした。
ノックを受ける木村優介(広島新庄)
―― その「ジャイアンツカップ」などで全国レベルなど感じ取れたことはありましたか?
木村 「体つきの違い」です。僕自身も身長は大きかったんですが、筋肉の付き方や太ももの大きさとかが違いました。ただ、中学2年生の「ジャイアンツカップ」でその違いが解ったことで、筋力トレーニングにも取り組むことができましたし、90キロで重たすぎた体重を82~83キロに落とすことができました。ただ、減量した最初は打球が飛ばなくなったので(笑)、今はそこも気を付けています。
―― そして高校を選択する時期になりました。
木村 最初は広島県外の高校も選択肢に入れていたんですが、最終的には「現役時代に捕手をされていた広島新庄の迫田(守昭)監督の下でいろいろ教わりたい」と思いましたし、「広島県で甲子園に行きたい、プロ野球選手を輩出しているチームでやりたい」ということで広島新庄への進学を決めたんです。
―― 広島新庄では1年夏の広島大会からベンチ入り、1年秋からは主力となりました。
木村 入学最初当初は何もわからず先輩方に教えてもらいながらでした。先輩たちは打球の伸び」が違う。タイミングの取り方も苦労した覚えがあります。
1年秋から試合には出ていましたが、ここでも先輩たちに頼るばかり。だからこそ気楽に打てた部分もあると思います。最上級生からは4番も任せてもらってプレッシャーもありますが、ここには応えないといけないと思っています。
長打の秘訣は「乗せて・運ぶ」
ティー打撃を行う木村優介(広島新庄)
―― 「4番」としての打撃について聴かせてください。ホームランなどの映像を見るとリストの強さに目を見張るものがありますが、これは自分が元々備えていたものなのですか?
木村優介(以下、木村) はい。リストは確かに強いと思います。ですからスイングのイメージはトップから「ポイントだけ力を入れて、乗せて、運ぶ」イメージ。リストが強いこことで力を入れなくてもボールは飛んでくれるので、ポイントまではなるべくリラックスして運ぶようにしています。
―― その打ち方にたどり着いた要因は?
木村 これは今でもやっていますが、ポイントを前にして弾くティー打撃をしていたんですが、すると1年生の夏休みにホームランを10本ほど打つことができて……。ここでコツをつかみました。
―― では「捕手」として取り組んでいることも教えてください。
木村 公二塁送球はタイムは今1秒9・小さいころから地肩には自信があるので塁間で低いボールを投げることを意識しています。それに加えてキャッチボールから脚を使い、持ち替えとステップを。あとはキャッチングで投手の状態が変わるので、今はその部分を意識して取り組んでいます。
―― エースの桑田(孝志郎・3年)投手をはじめとするリードの部分で考えていることはありますか?
木村 桑田は140キロ後半のストレートを持っているので、そこを活かしながらいかに少ない球数で試合を作れるかがポイントです。秋・春は甘いボールを打たれているので、インコースなどコースを突きながらリードしていきたいです。
「悔しさ」を糧にみんなで甲子園に行く
記念碑の前に立つ木村優介(広島新庄)
―― そして迎える最後の夏。木村選手が考える勝利のかぎは?
木村優介(以下、木村) どのようにしてつないで点を取るか。僕らは昨年暑い中、決勝戦まで行った広島大会の経験もあるので、桑田が点を取られることは仕方ないと考えて打線でサポートしたい。疲労もたまると思うので身体のケアはしていきたいですね。
僕は1年の夏もチャンスでの代打で三振して先輩たちに迷惑をかけて、昨年の決勝戦でも小中学校で一緒にプレーしていた親友・広陵の藤井孝太(3年)にサヨナラヒットを打たれてしまった。その悔しさは今でも忘れていませんし、最後の夏は広陵だけでなく目の前の相手を倒して甲子園に行きたいです。自分としてはケアをしっかりすることを前提に、もっと打率を上げていきたいです。
―― そこで最終的に広島新庄を支えるものは。
木村 「守備」です。投手がよくても守備がよくなくては投手が「打たせて取る」こともできない。それができるのがチームの強みです。
―― 木村捕手の「野球選手の夢」も教えてください。
木村 侍ジャパンへのあこがれはありますし、夢はプロ野球選手。そして僕のひいおじいさんは以前、広島東洋カープで捕手をしていた門前真佐人さんなんです。
僕は門前さんにお会いしたことはないんですが、写真も見てもがっしりした体形ですし、會澤翼さんが昨年更新するまでは広島東洋カープの捕手ホームラン記録も持っていた方。そんな「打てる捕手」になりたいです。
―― では、最後に「第101回全国高等学校野球選手権広島大会」への力強い意気込みをお願いします。
木村 この2年間は悔しい想いをして先輩たちの涙も見てきたので、最後は笑って甲子園に行きたいです!
―― 今回は夏を前にした貴重なお話、ありがとうございました。
木村 ありがとうございました!
文=寺下 友徳
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