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人間的成長を促す指揮官の情熱と8つのチーム方針 江戸川中央リトルシニア(東京)に迫る! 

2019.06.03

 2001年に、東京都江戸川区で発足した江戸川中央リトルシニア。2006年に全日本選手権大会初出場を果たすと、その後も着実には力を伸ばしていき、2013年にはOBである中村祐太投手が広島東洋カープへ入団。
現在では関東地区でも有数のリトルシニアの強豪として、名が広く知られるようになった。

 江戸川中央シニアが、強豪として着実に力を伸ばしていった裏には、どのような理念や取り組みがあったのだろうか。チームを率いる、屋代剛一監督の言葉から紐解いていく。

普段の生活から活躍する選手は、野球をやっても活躍する

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練習
中の江戸川中央シニアの選手たち

 江戸川中央シニアの練習グランドには、非常にピリッとした空気が流れている。
屋代監督の情熱に、選手たちも感化されているかのように真剣な眼差しで練習に打ち込み、強豪チーム特有の熱量の高い空気感が作り出されているのだ。

 屋代監督の指導方針は、人としての在り方や野球への向き合い方に一貫している。
野球選手である前に中学生としての正しい行いが出来ないと、野球に対しても真っ直ぐに向かっていけないと屋代監督は語り、学業はもちろんのこと、生活態度の面でも日頃から選手たちに指導を行っていると語る。

 「高校に向けての準備として、『やらなければいけないこと』をきちんとやって、『やりたいこと』に全力を注いで頑張っていくための準備をここでは行っています。なので、選手に言うことのほとんどは人間的な成長の部分です」

 そのために、江戸川中央シニアでは8つのチーム方針を掲げている。この8つのチーム方針は、チームのパンフレットやホームページなどでも明記されており、選手たちが目指すべき目標となってる。

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OBである広島東洋カープの中村祐太投手(写真は関東一時代)

1.挨拶がしっかり出来ること。
2.はっきりと意見が言えること。
3.最後まで粘り強くやり遂げること。
4.世の中のルール・モラルをしっかり守れること。
5.縦社会・横社会をしっかり理解できること。
6.親はもちろんお世話になった人に感謝出来ること。
7.しっかり声を出して返事が出来ること。
8.自分で自分の役割や仕事が見つけられること。

 屋代監督は、普段の生活から活躍している選手は、野球をやっても活躍してくれると持論を語る。普段の生活と野球の繋がりを何よりも大切にすることが、江戸川中央シニアの強さの屋台骨となっているのだ。

 「学校は全然頑張らないけれど、野球は頑張りますというのは、無理があると思っています。なので、学校生活からしっかり協力して頑張っていこうと言わせてもらっています」

[page_break:大会の象徴を獲りにいく気持ちを重視]

大会の象徴を獲りにいく気持ちを重視

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タイヤを使ったトレーニングを行う江戸川中央シニアの選手たち

 そんな屋代監督に対して、チーム内でも信頼を口にする声は非常に多い。
選手の保護者の方から、「あれほど人間的にできた方はなかなかいないと思います」と声が上がれば、選手たちからも「厳しい中に、愛情もある監督だと思います」との声が上がる。

 昨年、リトルシニア選手権では東北楽天リトルシニアを相手に完封勝利を挙げた岡本陸投手(現専大松戸)は、江戸川中央リトルシニアに入団した際のエピソードを披露した。

 「江戸川中央シニアに入ろうとした時、自分が全然喋らなかったために、最初は監督が入団を認めてくれませんでした。ですがその後、『江戸川中央というのは人間的成長をモットーにしているチームなので、そこで人間的成長をする覚悟があるならば入っていい』と言われて、入団を認めていただきました
屋代監督に人間的に成長させてもらってここまで来られたので、屋代さんのお陰だと思います」

 また、技術指導よりも人間的な指導をメインにしている屋代監督であるが、その一方でチームとしての成績も着実に残している点も見逃せない。
屋代監督は、「チームの勝利」の部分については、明確な目標設定に秘訣があると語る。

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1年生にして春季大会では横浜高校のスタメンに名を連ねた安達大和

 「大会に出るからにはやはり勝って、『優勝旗』や『優勝カップ』などの大会の象徴を獲りにいこうといった声掛けはよくやっています。
 目標を設定することによって、『今その目標に向かってやっていけてるのか』、『そこに行くのにふさわしいチームになっているんだろうか』といった、問いかけが出てくるはずです」

 OBを見ると、桐光学園に進学した森田翔が春季関東大会に1番として出場し、新1年生の安達大和も早くも横浜高校で春季大会に出場を果たしている。

 徹底した人間形成と明確な目標設定で、卒業後も選手たちが活躍を続ける江戸川中央リトルシニア。今後の活躍、そしてOBの活躍にもこれから注目だ。

(取材・栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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