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柔軟で緻密、そして「考える」ことこそが杉山野球の真髄 杉山繁俊監督(東海大福岡)【前編】

2019.05.31

 福岡工大城東時代は、春夏合わせて5度の甲子園出場、2017年には就任4年目にして東海大福岡を選抜甲子園に導き、ベスト8進出を果たした杉山繁俊監督。
 県内の名伯楽として知られる杉山監督だが、指導者としての理念は出身校である東海大相模、東海大学での経験が色濃く影響している。今回はそんな杉山監督のルーツを辿りながら、指導者哲学を紐解いていきたい。

二人の恩師から学んだ「攻撃的な野球」と「緻密な守備力」

柔軟で緻密、そして「考える」ことこそが杉山野球の真髄 杉山繁俊監督(東海大福岡)【前編】 | 高校野球ドットコム
杉山繁俊監督(東海大福岡)

 福岡工大城東時代と現在の東海大福岡で、計6度の甲子園出場経験を持つ杉山監督。
 時として豪快、また時として堅実な守備型のチームを作り上げ、その柔軟で緻密な野球に杉山監督を慕う若手指導者も多くいる。

 杉山監督は、自身の指導者としてのルーツには二人の人物がいると話す。
 一人目は、杉山監督が「親父」と慕う、故・原貢氏だ。

 「高校で3年間、大学でも(2学年年下の)息子の辰徳(読売巨人軍の原辰徳監督)が入学してからの2年間を育ててもらったのですが、とにかく親父の好きな言葉は『攻撃は最大の防御』です」

 原貢氏の野球は、打撃も守備も投球もすべてにおいて攻めの姿勢を持ち続けるものであった。練習時間も、バッティング練習に割く時間が非常に多く、多少のミスで点を取られたとしても、常に二桁安打を放ってそれ以上に点を取る野球を目指していた。

 「親父はとにかく狙い球を絞って、どんどん振っていくことを打者に求めていました」

 二人目は、東海大学野球部監督を務めた経験もあり、日南学園を春夏合わせて9度の甲子園出場に導いた小川茂仁氏だ。小川氏は、杉山監督が大学1、2年時に東海大学野球部の助監督を務めており、この時に守備力の大切さを教えられたと杉山監督は語る。

 「例えばランナーが出たら、声や牽制、動きなどでスタートを遅らせるような守備を教わりました。ほんの少しのことですが、一歩でもスタートを遅らせれば、それだけでアウトを取れる確率は高まりますから。そういった守備の大切さを教え込まれましたね」

 原貢氏の「攻撃的な野球」に加えて、小川氏の「緻密な守備力」。二人の名将から受けた薫陶が、杉山監督の指導者としての礎になったのだ。

[page_break:恩師の野球をアップデートした杉山監督オリジナルの「考える野球」]

恩師の野球をアップデートした杉山監督オリジナルの「考える野球」

柔軟で緻密、そして「考える」ことこそが杉山野球の真髄 杉山繁俊監督(東海大福岡)【前編】 | 高校野球ドットコム

練習後に杉山繁俊監督の話を聞く東海大福岡の選手たち

 また杉山監督は、原貢氏と小川氏の野球から「考える」ことの重要性を強く感じたと語る。
 一見、対照的な野球観を持つ原貢氏と小川氏であるが、相手のことを「考える」といった意味では共通点がある。

 「狙い球を絞るためには、相手の配球を読む必要があります。親父は、相手が良い投手になればベンチからも球種のサインを出して、狙い球を絞らせていました。
 また守備においても、ランナーやカウントだけでなく、相手の表情や顔色なども伺いながら、相手の考えを読まなくてはいけません。
 そういった意味で、私は常に選手たちに『いつも同じ考えでいるのではなく学習しなさい』と言っています」

 原貢氏と小川氏の野球を、そのまま踏襲するのではなく、そこに杉山監督オリジナルの「考える」ことを融合させた。柔軟で緻密な杉山監督の野球は、こうして作り上げられたのだ。

 また杉山監督の野球は、若い世代にも脈々と受け継がれている。
 近年、福岡県で躍進を見せている小倉工へ取材に伺った際、チームを率いる若き指揮官・牧島健監督は、指導理念について次のように語っていた。

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杉山監督の教え子である牧島健監督(小倉工)

 「今の選手は、ドカベンのような駆け引きのある野球漫画も読んでなくて、プロ野球を見ない選手も多いです。駆け引きがあって、見応えのある野球を子どもたちに見せたいと思っています。
 なので今は、ゲームプラン、相手投手の出来、試合展開など、その時の状況を選手全員が読み切り、考えてプレーする『ノーサイン野球』を実践しています」

 牧島監督は、福岡工大城東時代に主将として2006年の夏の甲子園に出場し、東海大学時代には選手会長として2度の全国大会準優勝に貢献した経歴を持つ。つまり杉山監督の教え子であり、後輩でもあるのだ。

 「考える野球」を徹底している点で、牧島監督は恩師である杉山監督の野球を明らかに踏襲している。
 原貢氏と小川氏の野球をアップデートした、杉山監督オリジナルの「考える野球」は、福岡の地で存在感を放ち続けている。

文=栗崎 祐太朗

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