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遠軽(北海道)が一体感のある戦闘集団になるまで【前編】

2019.05.22

 北海道オホーツクの町・遠軽町。遠軽は遠軽町で唯一の高校だ。2013年には21世紀枠として選抜出場を果たし、1勝を上げた。近年では2016年秋、全道大会ベスト4に入るなど上位躍進も多い。今回は初めて夏の甲子園を目指す同校の取り組みに迫る。

一体感を求めるチーム作りを

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シートノックに向かう選手(遠軽)

 長く北北海道の道立の強豪校として君臨していた遠軽は、昨秋の新チーム時から体制が一新し、これまで部長だった阿波克典先生が監督に就任した。

 だが秋はチームが変わったばかりで、選手たちは一枚岩になれずに苦しんだ時期があった。秋季大会では初戦で北見工に敗戦。その内容は阿波監督曰く「ほぼ自滅」だったようで、7回まで2対1でリードしていたが、8回表に失策が重なり4失点し、2対5で敗れた。

 阿波監督は今年のチームについて、ポテンシャルが高いチームだと評価する。しかしそれを発揮できないチーム状態だった。大会後、選手たちはミーティングを重ね、また選手同士で役職を決めた。たとえば、内野リーダー、外野リーダー、整備リーダーなど様々な役職を選手たちが考案した。

 阿波監督が選手たちに求めていたのは一体感だ。

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阿波監督(遠軽)

「取り組み方は古臭いと思われるかもしれませんが、まずチームが1つになること、一緒に行動することを求めました。今年のチームにはそれを求める必要があったんです」

 オフシーズンには週1回の12キロ走や、50分間走も行った。長距離走を行うと、どうしても遅れてしまう選手がいる。そこで、マネージャーも伴走しながらなるべく1人にさせないようにした。遅れた選手に話を聞くと、「心の支えになりました」と感謝し、マネージャーも「選手の大変さが分かりました」と語る。

 選手はそれぞれの欠点を克服するために練習を重ねた。主将で強肩強打の捕手として注目される浅野駿吾は打撃ではタイミングの取り方を見直し、守備ではキャッチング、スローイング、ストッピングの練習を繰り返した。セカンドの間村 湧介はフルスイングを信条とする強打のセカンド。秋までは粗い打撃が課題だったが、冬場は振り幅が大きいスイングでもインコースを打つための練習を行った。

 その成果は発揮できており、浅野はオープン戦で打撃好調。間村もオープン戦期間で3本塁打を放っている。他の選手たちも大きく伸びて、公式戦に入ることができた。

[page_break:この春、1年前に敗れた相手にコールド勝ち!]

この春、1年前に敗れた相手にコールド勝ち!

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ミーティングの様子(遠軽)

 阿波監督は「今年は初めて沖縄遠征を行ったのですが、そこから非常にまとまりが出てきたように感じました」と手ごたえを感じている。

 充実したチーム状況は取材日の練習を見れば、よくわかる。

 選手同士で話し合い、活気ある雰囲気となっている。その中で、チームをまとめるのが浅野だ。マネージャーによると、「学校では面白い子なのですが、グラウンドに入るとしっかりと締めることができていて、キャプテンシーがある選手です」と評価も高い。

 そして迎えた北海道北見支部予選。初戦の相手は最速144キロ左腕・石澤大和擁する網走南ヶ丘だった。石澤は速球だけではなく、130キロを超える高速スライダーを投げ込む投手だ。

 遠軽は昨夏の北見支部予選で網走南ヶ丘に0対1で敗れている。9年連続で北北海道大会に進んでいた遠軽にとっては屈辱的な結果で、何としてもリベンジしたい相手だった。

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ビニールハウスでティーバッグ

 遠軽の打者は打席位置を工夫しながら、狙い球を絞った。結果は21安打16得点の猛攻を見せ、8回コールド勝ちで勝利を決めた。

 試合後の選手たちの表情はとても充実したものだった。浅野は一体感になって戦えたと語る。

 「ベンチ内でもずっと声を出して、戦うことができましたし、何よりスタンドの応援もすごくて、励みになりましたし、本当にチームが一体となって戦うことができたと思います」

 阿波監督にとっても会心の勝利となった。

 「やはり昨夏、網走南ヶ丘に負けていたので、良い形で勝つことができて良かったです」と振り返った。

 この春、上々の滑り出しを切った遠軽。さらに支部予選の準決勝の北見工と対戦して、7対1で勝利。全道大会出場がかかった支部予選決勝戦では北見北斗には10対3で勝利し、4年連続の全道大会出場を決めた。

 順調に成長を見せる遠軽ナイン。後編では今年の遠軽ナインの顔ぶれに触れつつ、現在の活気のある遠軽野球部を語るには欠かせない遠軽町と遠軽高校の関係性に迫っていきたい。

(取材・河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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