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奥川、西はどのような投球を見せたのか?研修合宿に参加した投手14名を徹底考察!【西日本編】

2019.04.10

 4月5日から行われた高校日本代表研修合宿は座学、紅白戦、実戦形式の練習があり、非常に内容の濃いものであった。全国トップレベルの選手が切磋琢磨する姿は見ていて面白いものがあった。選手を分析するものからすれば、これ以上ない機会をいただき、感謝を申し上げたい。今回は西日本の投手のパフォーマンスを実際に考察していきたいと思う。

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佐々木、及川の実力は?研修合宿に参加した投手14名を徹底考察!

奥川はスイッチオフ?西は安定した投球

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紅白戦で先発した奥川 恭伸(星稜)

奥川 恭伸星稜):投手/3年/183/82/右/右

 紅白戦で先発した時、「あんまりスイッチ入っていないなぁ…」というボールだった。本人は懸命に投げたというだろう。ただスピードガンは嘘をつかない。常時140キロ~143キロで、120キロ後半のスライダーを投げ分ける投球。スカウトもこの日の奥川は本気モードではないことを察知したのか、ずっとスピードガンを測ることはなかった。

 それでもこの投手の受け答え、異様な落ち着きぶりを見ると、やはり日本のエースとして託したいと思わせるものがあった。奥川が高校生のレベルを超えたピッチングができる投手であることはこれまでの公式戦で実証済み。しっかりと夏に標準を合わせてもらいたい。

浦松 巧啓新):投手/3年/173/68/右/右

 プレートの三塁側からインステップ気味に踏み込んで、120キロ後半ながら、横の角度で勝負できる右投手。ただ変則タイプが代表入りするにはよほどのボールがないと生き残れない。高いレベルを追求して取り組むことを期待したい。

前 佑囲斗津田学園):投手/3年/182/87/右/右

 甲子園では140キロ前半のストレートを投げ込んでいたが、紅白戦では130キロ中盤~135キロとマックスの調子ではなかった。ただ、回転数の高いストレートを両サイドに投げ分け、カットボール、スライダー、カーブを出し入れするピッチングは完成度が高く、余裕が感じられた。夏にかけて出力を高めて、これは凄いと思うストレートを投げられると、評価はもっと高まるだろう。

林 優樹近江):投手/3年/172/62/左/左

 左の技巧派では最も投球ができる投手。本人は「コントロール、テンポを大事にしています。それがなければ僕は抑えることができない」と語るように、130キロ前後のストレートをポンポン投げてストライクを稼ぎ、スライダー、カーブ、チェンジアップを投げて打ち取る投球術は絶品。国際大会でも通用する投球術はあるが、あとは同世代の左腕との相対評価になるのではないだろうか。夏にかけてさらにレベルアップを遂げたい。

西 純矢創志学園):投手/3年/184/87/右/右

 速球、変化球、コントロールとすべてにおいて一級品と評することができる好投手。昨秋よりも腰回り、太ももががっしりして、しっかりと鍛えこんできたのが伺える。

 角度のある140キロ中盤の速球は素晴らしいものがあり、両サイドに投げ分け、スライダー、カーブ、縦スライダーをリズムよく投げ分ける。打たれても抑えても淡々と投球を組み立てる様子を見ると、これからも安定して活躍が期待できると実感させられた。

[page_break:途中合流でもしっかり爪痕を残した浅田 将汰(有明)]

途中合流でもしっかり爪痕を残した浅田 将汰(有明)

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打撃でもアピールした浅田 将汰(有明)

河野 佳(広島広陵):投手/3年/174/78/右/右

 横移動が強い投球フォームから常時140キロ~143キロのストレートは威力があり、登板投手の中でもトップクラスの力強さがあった。120キロ後半のスライダーもよい。ただ結構振り抜かれる当たりもあったのが気になった。

 それはなぜかと考えたとき、河野はストレートも、変化球も一定の軌道で、怖さを感じない。ストレートを生かすだけの変化球や配球ができていなかった。奥行きのある投球術を求めていきたい。

  

香川 卓摩高松商):投手/3年/165/62/左/左

 選抜初戦では回転数抜群の130キロ後半のストレートを披露した香川。あの時は体幹がきれいに回転してベストタイミングでリリースができていたが、今の香川はそれが掴めていない様子。体が突っ込み気味で、引っ掛けたストレートが多い。紅白戦での最速は135キロで、本来の香川ではなかった。好調時は130キロ後半のストレートに加え、スライダー、カーブ、スクリュー気味のチェンジアップと投球に奥行きがあり、牽制技術も優れていて、もっと高い評価をされていてもおかしくない投手なのだが…。夏では香川らしい投球を見せることを期待したい。

浅田 将汰有明):投手/3年/181/86/右/右

 4月5日の準決勝、4月6日の決勝に投げたにもかかわらず合流した7日にはシート打撃で志願した投手。連投の影響を隠せず、135キロ程度にとどまったが、角度がある直球を低めに集め、カーブ、スライダー、フォークの精度も高かった。何より打者に臆せず、強気に投げ込む姿が素晴らしい。打者8人を無安打に抑えた投球は素晴らしかった。

 また打者としても2安打を記録。しっかりと体幹を意識して強く振れており、投手の中では最も打撃が良かった。気持ちの強さ、野球選手としての総合力も高く、夏まで代表候補として徹底マークするべき投手だといえる。

宮城 大弥興南):投手/3年/172/78/左/左

 球速では及川にかなわないが、総合力では参加した左投手ではナンバーワン。インステップ気味からスリークォーターはまるで田浦文丸秀岳館-福岡ソフトバンク)を彷彿とさせる。常時138キロ~142キロのストレートに加え、100キロ台のカーブ、120キロ台のチェンジアップ、120キロ台のスクリュー、120キロ台のスライダーと球種は非常に多彩。

 右打者に強く、外角ぎりぎりに142キロのストレートを投げたかと思えば、ひざ元に120キロ台のチェンジアップの投球を見せる。なかなか憎い配球をするのだが、左打者になると攻めが甘くなり、森敬斗桐蔭学園)に三塁打を打たれるなど、ベルト付近に集まりやすい傾向にある。これで左打者の外へ逃げるスライダー、左打者のひざ元にしっかりと決められる変化球、あるいはストレートがあると、もっと打たれにくい投手になると思う。

文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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