1試合23奪三振を記録した怪腕・千葉英太(トヨタ自動車東日本)の現在地
昨年、初の都市対抗出場を果たしたトヨタ自動車東日本(金ヶ崎町)。2年連続の都市対抗出場へ。スポニチ大会は重要な一戦となる。大事な初戦の先発マウンドに登ったのは高卒2年目の千葉英太だ。千厩(せんまや)高時代は、1試合23奪三振も記録した怪腕は昨年、ケガでほとんど投げられなかった悔しさを糧にして、2年目に臨んでいる。
1年目のケガを乗り越えて
千葉 英太(トヨタ自動車東日本)
4回途中で6失点でマウンドを降りたが、潜在能力の高さは十分に示した。
常時140キロ~145キロ(最速146キロ)のストレートは回転数が高く、低めに伸び、さらに高めの釣り球でも勝負ができる。
そして120キロ前後のスライダーはひざ元に鋭く落ちる。高卒2年目にして、大舞台の初戦のマウンドに託されるポテンシャルの高さは伝わってきた。
だが、去年の千葉は全くプレーができなかった。5月に右ひじを断裂。昨年、公式戦・オープン戦含めて登板できたのはわずか1試合だった。
プレーできない期間は千葉にとって学びの時間だった。
「自分は高卒から社会人に入りましたが、本当に野球の半分も知らないと思うぐらい知識がありませんでした。ケガしている間、野球を見る時間が増えましたが、その時間は知識を増やす貴重な機会でした」
治療をしながら、右腕の力に頼りすぎていたフォームを修正し、肘の状態が治ってから投げ込みの数を増やしてきた。そして今年のオープン戦でアピールに成功し、初戦のマウンドを任された。
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笑顔を見せる千葉英太(トヨタ自動車東日本)
「やはり大きな大会で先発を任されたのは責任感を感じつつも、楽しさもありました」と意気込んだ千葉は岩手県一関市出身で、3月11日にマウンドに登ることに特別な思いも感じていた。
「その時の記憶は鮮明にあります。震災当時、小学校が壊れてしまい、登校ができず、水もなく、電気も止まり、大変な思いもしました。だから登板日がその日と被るのは何か縁があります」
相手は社会人野球トップクラスのNTT東日本。「挑戦者のつもりで、できるだけ相手の名前を気にしないよう投げていきました」と心がけたつもりだったが、いきなり初回、5番保坂 淳介(2年目・中央大)に3ランを浴びる。
「打たれたのは高めでも、真ん中でもなく、低めのストレートです。これを本塁打にするんだ」と驚きを隠せなかった。
徐々にNTT東日本の打線が牙をむき、4回途中まで投げて6失点で降板。悔しい結果に終わり、「調子自体は良くて、ストレートの走りもよかったのですが、コーナーに攻め切れないところが課題となりました」と振り返った。
だが、1年目はケガで何もできなかったことを考えれば、大きな前進である。それだからこそ今年にかける思いは強い。
「去年はチームに何も貢献ができていないので、自分のピッチングするというよりも、まずチームの勝利に貢献できるピッチングをしていきたいと思います」
ここから高い社会人野球の壁を感じることがあるだろう。その壁を突き破るために努力することを喜びと変え、2年連続の都市対抗出場へ欠かせないピースとなるのか。
文=河嶋 宗一