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人間育成を優先しつつ、戦国の千葉で高みを目指す! 検見川 野球部訪問 vol.3

2019.03.17

 vol.1では検見川高校野球部の酒井光雄監督が歩んできた教員生活を中心に、検見川高校の基盤となる部分に迫っていった。そしてvol.2では検見川オリジナルの取り組み、全員野球の定義について語ってもらった。最終回では検見川の細かな野球のルーツ、そして春への意気込みを語ってもらった。

 チームの基盤を作り上げた特別な4年間 検見川高校 野球部訪問 vol.1
 真の全員野球を体現して強豪私立に挑む! 検見川(千葉)野球部訪問 vol.2

考えのルーツは高校時代にあり

人間育成を優先しつつ、戦国の千葉で高みを目指す! 検見川 野球部訪問 vol.3 | 高校野球ドットコム
バッティング中の検見川の選手たち

 1つのプレーに対して様々な意味を持たせ、さらに一歩先のことまで想定する酒井光雄監督の緻密な野球は私学相手に勝つには必要な考えだった。その方針はいきなり実を結び、就任1年目の2017年には春と夏の大会で見事ベスト4に入った。

 では、どうして酒井監督は細かい戦略を生み出すことができるのか。それは市立船橋での現役時代が関係していた。
 「(考え方が)一番鍛えられて今の土台ができたのは、習志野で監督をやっている小林徹監督のおかげです。小林監督は自分の高校の時の監督で、絶対的な恩師ですね。あんなにすごい監督はいないと思います。その恩師の野球から感性を磨かせて頂きました。
 それを元に、公立でも勝てる野球は何なのかと考えたのがこの野球でした。」

 高校時代に培った感性と、選手を育てることを優先した野球を貫く酒井監督。新チームの時のことを副主将の首藤広一選手に聞いた。

 「最初は小見山颯生主将の指示通りに動いていれば大丈夫だと思っていて、そのまま練習試合も重ねて秋の大会に入りました。
 一次予選は代表決定戦までコールド勝利ができて良い流れでしたので、そのままいけるかと思っていましたが、代表決定戦では序盤から崩されて動揺してしまいました。
結局その試合は勝つことができず、二次予選に入っても同様を引きずって何もできずに秋の大会が終わってしまいました」と振り返る。

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首藤広一副主将

 また主将の小見山は、「秋の大会に入る前までは調子が良かったので、監督からも秋の大会前の仕上がりは今まで一番いいと。それなのに県大会に出られなくて正直苦しかったです」と話す。

 酒井監督も、「選手を頼りにしているからこういった結果になっているかもしれません。自分が積極的に采配から何まで自分優先でチームを運営すれば、もう少しうまくいっているかもしれません」と話す。

 それでも勝ちにこだわるのではなく、選手たちの人間教育を優先する。選手たちが将来、社会に出た時に常に前を向き続けてほしい。後ろを振り返って反省ばかりしないでほしい、と考えているのである。

[page_break:改革の年にする!]

改革の年にする!

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寺﨑涼投手

 春は予選から県大会を目指す検見川。最後に春への意気込みを伺った。
 「ピッチャー陣が他の公立高校に比べて安定していると思います。試合でしっかり投げられる左投手が3人いて、右のオーバーやサイド、さらにはアンダーが1人ずつ。また野手でもピッチャーができる選手が2、3人いるので、ピッチャーの枚数はかなり多いです。なので、今年は勝てる野球ができるのではないかと思います。
 ただバッターに長距離砲がいないので、1人、2人打線に入ってくれれば、また8強や4強にいける可能性が高いと思います。」

 そのために、この冬はバッティングにかなり力を入れた。春には一人でも多くバッターがヒットを打ってくれれば、自慢の投手陣でリードを守って勝てると信じているからだ 。

 選手からも春への意気込みを伺った。
 「この冬で信頼と安定感というところをやっぱり身につけていかないと、春は少しでも長いイニングやピンチを乗り越えるピッチングができないと思います。
あと身体も小さいので筋力をつけながら投げ込みをしっかりやって、チームの中心ピッチャーになれるようにしていきたいです。」と酒井監督期待のアンダースロー・寺﨑涼投手。

 また、「二次予選で負けたのは、自分の消極的な守備が敗因だと思っています。また打撃では、チャンスの場面で回ってきた時に、プレッシャーがあると甘いボールがきても振れないと言うか、打ちにいこうとできませんでした。なので、守備でも攻撃でももっと積極性を持っていきたいと思います 」と首藤選手。

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検見川はマネージャーと選手全員で上位進出を狙う!

 そして小見山主将は、「あんまり身体の大きい選手がいないため、長打を打てる選手がいないので、そういう中で少しでも長打を出せる選手の一人に自分がなれればと思っています 。
 そしてチームとしては身体が細いというのが課題なので、春までにチーム全員が体重を増やして、身体を大きくしようと。強豪私立のでかい人たちにも負けないような身体づくりをするというのが1つです。
 後はパフォーマンスの部分で私立と比べて劣ってしまう部分があり、その中で勝つ野球をどうやるのか。細かいプレーを完璧にすれば、パフォーマンスが劣っていてもどこかのチャンスでタイムリーが出せれば点数が入ります。どこかで良い守備で流れを持ってくれば勝てると思います。
 そういう考えを酒井先生とのミーティングで話して、野球への考え方を深めていかないといけない、というのがあります」と話した。

 改めて今年を変革の年にしたい。3年目という意味でも新しい、変革の検見川にしたい、と最後に酒井監督は話してくれた。

 選手のこれからを考え、野球を通じて育てていく酒井監督。そんな監督を小見山主将は、「野球だけではなく、普段の生活から尊敬できる。将来、酒井先生みたいな先生になれればと思っています」と将来の目標を語ってくれた。

 取材を通じて、酒井監督の人としての器の大きさというものを終始感じることができた。これからも検見川高校野球部からは、人として大きく成長した選手たちが育ち続けるに違いない。

 

(文・編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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