負けん気と元気の2つの「気」を武器にチーム一丸となって全国制覇へ! 龍谷大平安(京都)【後編】
前編では新チーム結成時から近畿大会優勝まで、チームが歩んできた道のりを監督・選手たちに振り返ってもらった。後編の今回は、近畿王者として向かう選抜をテーマに話を伺った。
スタートも遅く、昨夏の経験者も少ない龍谷大平安はなぜ近畿の頂点に立てたのか?【前編】
あの夏を経験したことで成長が加速した
バッティング練習をする龍谷大平安の選手たち
取材に訪れたのは2月20日。センバツ開幕を1ヶ月後に控えている時期だが、原田英彦監督は「あと2ヶ月ほしいです」と苦笑する。
「正直ね、この春に優勝目指すとか日本一目指すとかそんなレベルじゃないです。だから僕は一応、『挑戦、日本一』という言葉を与えたんですけど、夏までに自分の思っている85%くらいのチームになればいいと思っているんです」
チームの現状をこう語る原田監督。現時点ではまだ理想の50%にも届いていないと評価は厳しい。そんな中で原田監督が褒め称えているのが、誰もインフルエンザに感染していないことだ。近年はインフルエンザが流行し、学級閉鎖に追い込まれることが多かった。しかし、「今年は元気あるし、絶対インフルエンザにかかるな」と呼びかけたところ、ここまで誰も感染することなく、練習を継続できている。
「この子らはやろうと言ったらできるんですよ。自分での防衛ができていると思うんです」と教え子を評価する原田監督。水谷祥平らが最上級生になり、自覚が芽生えたことで一つの目標に全員で向かうことが次第にできるようになっていた。
原田英彦監督
彼らの成長を語る上で100回大会の甲子園を欠かすことはできないだろう。「あんな大会は今後もないですね。今までで最高の大会じゃないですか?」と原田監督は昨夏の甲子園を振り返る。龍谷大平安にとっても甲子園通算100勝を達成した1回戦の鳥取城北戦(試合レポート)は息詰まる大熱戦だった。
その試合でサヨナラのホームを踏んだのが水谷だ。水谷は「喜びすぎて何が何だかわからなくて曖昧な感じです」とホームインした瞬間を回想する。
大舞台を経験したことで「絶対にここに帰って来てやろうと思いました。伝えられることはどんどん伝えていこうと思って練習に取り組みました」と水谷は新チームで主将となり、精力的にチームを引っ張ってきた。
水谷の強烈なキャプテンシーに引っ張られ、近畿大会優勝という結果を残したが、原田監督の中で秋のオーダーは理想の形ではない。
「中島大輔(2年)がもうちょっと強い1番になってほしいですね。2番にちょっと曲者の北村涼がいますから。三尾健太郎が体も大きいので、3番を打ってくれたら理想に近づくんですけどね。羽切陸(2年)が強いスイングができれば6番くらいを打てると思います」(原田監督)
ベンチとスタンドが一体になって日本一へ挑む
目指すは日本一!
秋は三尾が6番、羽切が7番だったが、彼らの打順が上がり、秋に3番を打っていた多田龍平が下位打線で捕手に集中できるようになれば総合力が上がってくるだろう。
さらに原田監督は「あとはもうちょっとピッチャーが存在感を示して、オーラを出してくれればいいですけどね。もう少しガッと存在感を示して、野手が見ていて『こいつら凄いな』と思わしたいんです」と投手陣の奮起を期待している。
投手陣は京都大会で背番号1を背負った野澤秀伍と近畿大会、神宮大会で野澤からエースナンバーを奪った豊田祐輔の両左腕が二枚看板。原田監督は彼らに競争を促すためにあえて同じタイミングに隣同士で投球練習をさせている。
「自分のボールの球質と比べて基準がわかるので、隣で投げている方が自分は良いです(背番号1へのこだわりは)あります」と野澤が言えば、「良い刺激になっています。この冬でどれだけ野澤に追いつけるか考えながら取り組んできました」と豊田も負けじと火花を散らす。
原田監督も二人の成長を実感している。「豊田はメチャクチャいい加減な人間だったんですけど、秋以降に変わってきました。野澤も顔つきや言動が変わってきて、良い傾向だとは思います」
切磋琢磨して冬を越えた彼らの成長が楽しみだ。
「僕は夏までの過程として考えていますので、センバツの中で彼らがどういうパフォーマンスをしてくれるのか、そこが楽しみです。だからチームの特徴である『元気と負けん気』を出してくれるかです。1回勝つことで喜びと色んな経験ができますし、2回勝ったらその喜びも倍になる。勝つに越したことはないですね」と原田監督はあくまでセンバツを通過点として捉えている。
集大成は夏であることに変わりはないが、選手たちが目指すはもちろん日本一だ。水谷は「目標はやっぱり日本一なので、メンバー外もメンバーも勝ちに向かって試合に挑んで、全員で勝ちたいです」と意気込む。
持ち前の「元気と負けん気」を発揮して近畿の頂点に立った龍谷大平安。チーム一丸で戦った先に5年ぶりの頂点が見えてくるはずだ。
(文・馬場 遼)