自慢は長身から繰り出す角度のある直球!次は回転数が高い直球を 大畑 蓮(明豊)
今年の明豊は投打ともに逸材が多い。投手には140キロ越えが3人いる。その1人が大畑 蓮だ。184センチ72キロとチームでは最長身の大畑の一番の武器は、角度あるストレート。高校入学時、あまりのレベルの高さにベンチ入りできるのかと悩んだ大畑だが、そこからどう生きるべきかを考えた2年間を振り返っていきたい。
周りのライバルを見て生きる道を決めた
インタビューに答える大畑蓮投手
一歩ずつ地道に積み上げて成長してきた。名門・明豊中に進んで、当初は野手だったものの、中学の監督から投げ方の良さ、球筋の良さを買われ、投手に転向した。大分から甲子園に行きたい思いでそのまま明豊に進んだものの、周りのレベルの高さを実感し、「3年間ベンチに入れるか不安だった」と胸中を語る。
それでも、必死にアピールした。ピッチング、トレーニングを懸命にこなし、紅白戦で投げる機会があれば必死に打者を抑えてきた。
大畑が首脳陣にアピールしたのは角度のある速球だ。同級生には140キロ台の速球を投げる寺迫 涼生や先輩にも140キロ台の速球を投げる投手がいた。スピードではかなわない。そこで投手陣で最身長だった大畑は「いかに角度ある速球を投げられるか」を考え、フォームを固めてきた。
「叩きつけるイメージですね。高校に入って回転数の高いストレートを投げることは意識しはじめて、上から下へたたきつけるイメージで投げています」
その成果は実り、昨春、練習試合解禁日となった初の練習試合で先発登板。そこでのアピールに成功して念願のベンチ入りを果たす。迎えた県大会初戦では6回1失点の好投を見せる。
「自分の中ではもっと点を取られると思ったんですけど、自分の考えた以上に良いピッチングができて嬉しかったです」
練習中の大畑蓮投手
その後も好投を続け、九州大会でもベンチ入りして登板を果たした。
「初めての九州大会で競った試合で緊張したんですけど、思った以上に投げられてよかったと思います」
夏の大会へ向けて収穫のある内容を残した大畑は「さらに強いストレートを投げることと、それだけでは抑えられないので、練習試合では変化球もうまく使って抑えることを意識しました」と、総合的なレベルアップに取り組んできた。
夏の大会でもベンチ入りし活躍を誓ったが、初戦の大分工戦でロングリリーフで投げた翌日、今までにない痛みを感じた。肩の痛みにより不完全燃焼に終わり、大会後は治療に励んだ。
「投げずに治療を行ない、インナーマッスルや下半身を強化するトレーニングを行いました」
しっかりとした治療とトレーニングが実り、九州大会では目覚ましいピッチングを見せる。
自分のストレートには満足していない
ピッチング練習をする大畑蓮
初戦の鹿屋中央戦でリリーフ登板した大畑は、5回途中からマウンドに登り、4.1回を投げて無失点の好投。自己最速141キロもマークし、成長した姿を見せる。
「今までの大会を振り返っても、自分は初戦と接戦に強いタイプなので、良いピッチングができたと思います」
その後も好投を重ね、秋は6試合を投げ、防御率2.63と安定した数字を残し、選抜出場の原動力となった。秋で残った課題は、点差が離れた試合展開でも気を抜かずに安定したピッチングができるか。
大畑は準決勝の日章学園戦でリリーフ登板し、7回裏に失点を喫してしまった。この試合は大畑にとっても反省点が多い試合だったと振り返る。
「自分は抑える気持ちで投げているのですけど、心のどこかで油断してしまい、打たれてしまうことがあったので、そこが反省点です」
この冬場はもう一度、体重アップと筋力アップをテーマにして取り組んできた。
「下半身・上半身・体幹が全体的に弱かったので、しっかりと鍛えてきました」
トレーニングの成果は出ている。
「秋では常時130キロ前半だったんですけど、最近の紅白戦では130キロ後半も出ているので、今までトレーニングでやってきた成果が出ていると思います」
ミズノ社「MA-Q」の計測結果
実際に取材日ではミズノ社の計測アプリ「MA-Q」を使ったが、90球以上投げ、ラスト4球で140キロを2回出しており、投げるスタミナと速球能力は確実に身についている。
だが回転数については課題があり、最高球速140.1キロを出したときの回転数は2136回転。大迫自身、「もともと回転数の高いストレートを投げることは意識しているのに、この数字はダメだと思います。回転数の高いストレートを投げられるようにしていきたいと思いますし、その上で打者を抑えられるようにしたいと思っています」とストレートの球質アップを目指している。
そして変化球では、決め球として使っているチェンジアップの精度が秋には悪くなっていることに気づき、日々のピッチング練習でチェンジアップを投げて、甲子園に向けて準備をしている。
センバツへ向けて意気込みをこう語った。
「ああいう大観衆の中で投げることは初めての経験なのですが、自分は自分なりのピッチングをして強気に攻めていきたいと思います」
そして目指すは夏までに150キロだ。
「やはり高いレベルを目指していかないと大分のライバルも抑えられないですから」
自慢の角度ある直球は甲子園で唸りを上げるか。ブレイクの春とする。
文=河嶋 宗一