札幌大谷(北海道)土の上で野球ができる喜びを感じながら!【選抜発表後レポート】
集合写真(札幌大谷)
昨秋の明治神宮大会を制した札幌大谷の鹿児島合宿があった。姶良市の総合運動公園野球場で2月16-19日の4日間、「土の上で野球ができる喜び」(船尾隆広監督)を満喫しながら、春夏通じて初の甲子園へギアを上げていく準備だ。
取材に訪れたのは2日目の17日。「土の上で野球ができただけでも目的は達成されたようなもの」と船尾監督。神宮大会以降約3カ月間は、雪に閉ざされて野球の練習ができない札幌大谷ナインにとって「この時期に野球ができるのは神宮で結果を残したご褒美」(飯田柊哉主将・2年)である。その喜びと感謝を感じながら、野球を満喫する4日間にする。
17日午前中は内外野の連携、走者をつけて状況を想定しながらのシートノックなど守備練習。午後からはフリー打撃で打ち込み、最後の1時間あまりは個人練習。午前8時半頃から始まって、午後4時頃まで土のグラウンドでの「野球の練習」を満喫した。
「バウンドを合わせる感覚はだいぶ楽になったと思います」とノックを打った五十嵐大部長。冬季練習の間、学校では定期的に外のグラウンドに出て「雪上ノック」をやる。硬く滑りやすく不規則なバウンドをする雪の上でノックを受けていると、自然と打球に対するアラート感が増し、打球をしっかり見る習慣がつく。
その感覚で土のグラウンドに立てば打球を合わせる感覚が楽にスムーズにいけるというわけだ。その上で、ランナー一、三塁、バックホームの時はワンハンドキャッチ、グラブは固めて前進するなど、アウトを取るための技術的な約束事を徹底して声掛けしていた。
バッティング練習の様子
打撃練習はポジションごとに6班に分かれ、1班15分交代で打ち込んだ。細かい指導はせずテーマは「思い切り打ち込む」(船尾監督)こと。室内と屋外の一番大きな違いがでるのは打撃面で、打撃投手と打者との距離感や打った先にネットがない感覚の微妙なズレを修正し、本来の打撃の感覚を取り戻すのが大きな狙いだ。
3カ月間みっちり鍛え込んで身体を大きくして、バットも木製から金属解禁となると大きな打球を飛ばして成長を確かめたいと考えるのは打者心理というべきか。その感覚が空回りして身体が開いたり、逆に突っ込んだりする選手も多かった。そんな中でも鋭く外野の間を抜いたり、スタンドに入る打球があるところにこのチームの「潜在力」を感じた。
全体的には指導者が細かいことに口を出さず、選手の自主性に任せてのびのびやらせている印象を受けたが「その裏で厳しくしつける駆け引きがあるんですよ」と船尾監督。「神宮を経験したメンバー、上級生はちゃんと分って」動けている一方で、それ以外のメンバーとの意識の差があるという。
午前中、Aチームがシートノックをした後で、Bチームのメンバーのシートノックが約20分あった。終わった後、「意味をちゃんと考えてやっているのか?」と五十嵐部長の厳しい指摘が飛んだ。なぜバックホームの時はワンハンドキャッチでグローブを固めて前進するのか。その方が送球動作にスムーズに移れて早く確実にアウトがとれる。そういったことをAチームのメンバー以上に考えながらやらなければ成長はない。
今回は部員56人、全員が参加したが甲子園直前の和歌山合宿は30人ほどのメンバーに絞られる。レギュラーメンバーに「安泰感」(五十嵐部長)を持たせないためにも、新戦力の台頭は不可欠だ。この4日間は野球ができる喜びを満喫しつつ、チームの底上げに向けてのし烈なチーム内競争も始まっていることも印象を受けた。
文・写真=政 純一郎