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弱みは強み!創意工夫でレベルアップを図る 六甲アイランド【前編】

2019.02.14

 2学年で部員38名。グラウンドはあるものの、普段使えるのは内野の部分だけ。外野を見ればライトでは他の部活が練習中。38名が練習するには少し物足りない広さだ。
その上、周囲のマンションとの関係で照明を使うこともできない。

 練習環境にあまりにも多くの制限がある中、秋季県大会でベスト8。厳しい環境をものともしないそのチームは、今回紹介する神戸市立六甲アイランド高校である。

 このような環境の中、いかにして兵庫県の21世紀枠推薦校にも選出されたのか。監督や選手たちからお話を伺った。

頭を悩ませる練習環境

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練習に向かう六甲アイランドの選手たち

 「神戸西高校でコーチを5年やってから、櫨谷(はぜたに)中学で4年間勤務。7年前から六甲アイランドに来ました。」
 そう語るのは、六甲アイランド野球部を指揮する深浦健太監督。落ち着きのある雰囲気と口調が印象的だが、時折出てくる関西弁に親しみを感じる。

 ここに来たときは、「顧問の指示ではなく、主将中心に選手間で指示を出し合って練習ができる」「思った以上に考えて動ける選手がいる」という印象だった。そのチームを指導するにあたって、
 「普段は内野の部分しか使えないので、このスペースを最大限活かして練習をしようと思いました」と、深浦監督。

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六甲アイランド 深浦健太監督

 限られた環境の中でも、ピッチャーを含めたバント処理や、内野ノック。さらには走塁など、細かなところを徹底的に磨き上げた。

 だが、外野手の練習は満足に行えないため、練習試合が連携の確認の場となる。また大会前になれば大学の野球場を借りて、内外野の連携を確認する。しかし、普段から練習ができない分、打球判断やカットプレーはまだまだ課題が多く、ちょっとでも外野が空けばランナーを付けてノックなどの実戦練習をするが、「それでも数は足りない」と深浦監督は頭を悩ませる。

 それでもチームは昨秋の県大会でベスト8まで勝ち進んだ。この結果には、決められた時間と場所を100%フルで活用する練習方法があった。

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限られた環境で創意工夫を凝らす

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ハーフバッティングを見ると太ももにはチューブが巻かれ、足元にはテニスボールがある

 取材当日、練習場所は7ヵ所に分かれていた。
・壁あて
・手投げの守備練習
・特守(内野手と外野手が同じ時間に2か所でノック)
・ハーフバッティング(近い距離から投げた球を打つ)
・ティーバッティング
・マシーンバッティング

 6班に分かれて、時間を決めてローテーションで練習を回す。選手たちが内野の至るところで己のスキルを磨く練習風景は圧巻だ。

 少し練習を見ているとあることに気が付いた。
 例えば近い距離からの手投げのハーフバッティングの方から、ポコーンという打球音が聞こえる。よく見ると、選手たちが打っていたのはテニスボールだった。さらに太ももにはチューブが巻かれ、足が固定されている。バッティングをしている選手たちにも同様に巻かれている。

 壁あてを見れば2人1組で基本の正面はもちろん、半身や逆シングルで捕球。手投げの方は捕球をした後にハードルを飛び越えている。

 これらの練習の狙いや効果を、夏の大会では4番を務めた1年生の森口龍希選手と、深浦監督が4番候補と期待する五十嵐陽路選手に伺った。

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ハードルを飛び越えてステップを踏む意識付けをさせる

・壁あて
正面の時は基本の構えで握り替え、逆シングル、半身は中継プレーでの捕球を意識する
・手投げの守備練習(ハードル)
取った時に右足をしっかり前に出す。しっかりステップを踏む意識を持つ
・ハーフバッティング(テニスボール)
至近距離から撃つことでミート力とスイングスピードのアップにつなげるため
・バッティング(チューブ)
固定をすることで軸足がブレないようにするため
・バッティング
ネットを張って2か所。ストレートと変化球の2種類で、ストレートに関しては140キロほどにすることで、強豪私学にいる力のある投手を打ち崩す狙い。

 他にもサンドボールを使ってリスト強化。長いバットを使って体全体でスイングすることを覚えさせる練習もあるそうだ。

 できる範囲で最大限の練習を行う。短い時間、狭いスペースでいかに効率よく練習するか。こうした意識の元、六甲アイランドは日々の練習に打ち込んでいるのだ。

 前編はここまで。後編では躍進した秋季大会について監督や選手に振り返ってもらった。後編もお楽しみに!

(文・編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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