Column

実戦、人間力の作り方 我喜屋優監督(興南)vol.4

2019.02.10

 沖縄県の名門校・興南を率いる我喜屋優監督に「人間力」をテーマに語ってもらった連載企画。今回は第4弾で実際に練習に落とし込んだ際に、我喜屋監督はどんな方法で選手たちに接するのか、迫ります。

実戦、人間力の作り方 我喜屋優監督(興南)vol.4 | 高校野球ドットコム今までの連載記事
第1回:自分自身の基準を持つ「人間力」
第2回:「根っこ」を育てるには
第3回:人間力は掛け算

基準が自分で作れない時はどうするのか?

実戦、人間力の作り方 我喜屋優監督(興南)vol.4 | 高校野球ドットコム
練習風景

 野球における基準を作れるようにするには?言い換えると、「人間力(野球力)」をつけさせるためにはどうしたら良いのか?

 我喜屋 優(がきや・まさる)監督(興南)は話してくれた。

 「これは、練習中でも何回もタイムをかけるんです。「今のプレーはおかしいぞ、もう一回やってごらん」と「行けたのに、たぶんファーストが取ると思っていたから行けなかったんだろ」と。失敗その瞬間に直してあげるんですよ。

紅白ゲームをやっていても、僕がすぐに(グランドに)降りていく、「今のはおかしいじゃないか、なんで見過ごすんだよ」と、やっぱり失敗を見過ごさないで、その場で修正する・注意をする、その繰り返しです。

もちろん、その場をみんな見ているから、それが伝統として、あるいは3年生が注意されているのを、2年生が、2年生が注意されているのを1年生がと2度と同じ失敗はしないはずですから。自分で経験してもらう、人の経験を自分が見て学ぶということですね」

「人間力」を作るための極意である。失敗の瞬間に、基準を教えてあげるのが大事だと話してくれた。

 野球ノートの活用法を我喜屋監督に伺うと、

 「「自分がやったこと、監督が言ったことすぐメモしとけよ」人間はすぐ忘れるので、動物だから。これいつも左手にあれば、あのときこう言われたなぁとか。頭の中だけでは限界があるから、これも学校のノート移すのと一緒ですよ」
と話してくれた。

「失敗の瞬間に教える・学ぶ」これも基準を教えて覚えさせるための効率的なやり方である。

[page_break:指導者もしっかりした人間力・根っこが必要]

指導者もしっかりした人間力・根っこが必要

実戦、人間力の作り方 我喜屋優監督(興南)vol.4 | 高校野球ドットコム
興南高校校舎

 野球から「人間力」を上げるためには、指導者が基準をきちんと持っている必要がある。そしてその基準を選手に伝えることで、選手の根っこが育つのである。

 ここで我喜屋監督が話してくれた野球におけるいくつかの例を紹介したい。

「走塁においては第2リード大きくとって今までのリードより1m先に行けば、ホームでのクロスプレーは50センチの差だからね、「1メートルでもリードしておけばセーフになったでしょ」とかね。走塁の大切さもいまやっています。

 バッティングにおいては、逆打ちとかね。
逆打ちに関しては、ランナーがセカンドにいる時は、右方向に流せば、大きなスイングをすれば、ライトフライでもタッチアップできるし、もちろん抜ければホームまで行けるし、ゴロでも行けるし。出るランナーをいかに進めるかというのをアウトカウントを増やさないで、たとえアウトカウントを増えても、必ず送っている、「出る、進める、返す」という事が大事だと言っています。

 守備に関しても、打球の方向を見て、お互い声を掛け合うとか、「内野外野の間なら外野優先だぞ」とか、ライトセンター間ならセンター中心だぞとか、きめ細かなことも普段練習のときから取り組んでおけば、必ず役に立つから。無駄な練習はないから。無駄な努力がないのと一緒で、必ずやっておけば、そこから反省も出てくるし、チェックもでてくるし、それこそ次の目安も出来てくるしと、小さな成功体験、小さな気づきを沢山積み重ねることによって、気がついたらすごいチームになっている」

 「野球は取り組んだあとに、気が付かないとだめなんですよ。あっこれだ!というそれが小さな成功体験なんですね」

 皆さんは、もうお気づきだろう。野球の話をしているが、大事なポイントは「人間力」と「PDCA」なのである。始めは指導者が「根っこ」作りを手伝うが、最終的には選手が「自分自身の基準」を身に付けて、自分でPDCAを回せるようにするのが、我喜屋監督の考える指導者の役割なのだろう。

文=田中 実

実戦、人間力の作り方 我喜屋優監督(興南)vol.4 | 高校野球ドットコム今までの連載記事
第1回:自分自身の基準を持つ「人間力」
第2回:「根っこ」を育てるには
第3回:人間力は掛け算

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.05.12

【春季新潟県大会】プロ注目右腕・茨木佑太が完封!元プロの芝草監督は素材、メンタル面も絶賛!

2024.05.12

【春季京都大会】センバツベンチ外の西村がサヨナラ打!新戦力の台頭目立つ京都外大西が4強進出

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.07

【鹿児島】神村学園は昨秋4強の鶴丸と初戦で対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.07

【北海道】函館大有斗、武修館などが初戦を突破<春季全道大会支部予選>

2024.05.07

【山陰】益田東と米子松蔭、鳥取城北が石見智翠館と対戦<春季大会組み合わせ>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?