主将として、攻守のキーマンとして、荻野魁也(岩倉)はさらに己を磨く【後編】
1年時から攻守の要となる4番・キャッチャーのポジションを任されている岩倉(東京)の荻野魁也選手(2年)。昨秋には新チーム結成と共に主将も務めることとなり、東京大会ではチームのベスト8進出に貢献した。そんな中心選手として活躍している荻野選手に、これまでの成長の軌跡を伺ってきた。後編では、主将に就任した新チーム発足当初のエピソードや、この冬の課題について迫っていく。
主将に就任し秋季大会ではベスト8に大きく貢献
バットを構える荻野魁也(岩倉)
新チームでは主将を任されることになった。
「1年の時から公式戦を経験させてもらっているので、『少しでもチームに貢献したい』と思って自分から立候補しました。キャプテンをやるのは初めての経験ですし、自分が指示を出さないとチーム全体が動いていかないのでたいへんだなと感じることもありますが、一つひとつの行動がゆるくなると練習に悪影響が出るので、一日のスケジュールを頭に入れながら、できるだけ早く次の行動へ移れるように意識しています。
それから、常に気を張って、周りを見て、気付いたことがあれば話をするようにしていますが、正直なところ、あまり言葉でいろいろと言えるタイプではないので、チームメートから一目置かれるような高いレベルのプレーを見せて引っ張っていきたいです」
そして、チームをまとめるうえで大切にしているのが元気だ。
「豊田(浩之)監督からは『どんな時も明るくやれ』と言われているので、返事ひとつをとっても元気よくするようにしています。まだまだなところもありますし、ちょっと波があるチームなんですが、声を出すことで自分たちから良い雰囲気を作って練習できるようにしていきたいです」
こうして迎えた昨秋の東京大会では投手陣の頑張りもあって、久々にベスト8まで勝ち上がった。その好投を引き出すキーマンとなったのが、キャッチャーを務める荻野選手だ。
「リードについては、1年生の頃から豊田監督に『初球の入り方が悪い』とずっと指導されていて、本当に『頭を使っていかなければいけないんだな』と痛感させられました。
でも、昨秋は上手くリードできた手応えがありましたし、課題だったストップもできて、自分としては良かったと思います」と話す。豊田監督も「ピッチャーに対する気配りができていたし、試合の流れを感じながら状況判断ができるようになった」と合格点を与えるなど成長した姿を見せている。
ただ、唯一、心残りになっているのが、敗れてしまった準々決勝の東海大菅生戦。「同点の8回に決勝点を奪われたのですが、あの場面は無理をせずに次の打者へ回しても良かった。それなのに勝負しようとしてボールが少し甘く入ってしまったので、自分にはまだ足りていないところがあるのだと思わされました」
冬場の課題は守備面、目標は甲斐拓也選手
ノックを受ける荻野魁也(岩倉)
また、高校通算本塁打を29本まで伸ばすなど、8月から9月にかけて好調だったバッティングも秋季大会では不振に陥る。
「打撃ではまったく力になれませんでした。今、振り返ってみると、自分がやらなきゃというプレッシャーがあったのかもしれません」と、2回戦の八王子戦こそ二塁打に加えて9回に勝ち越しの犠飛を放つなど勝負強さを見せたものの、東京大会の全4試合では13打数2安打と期待に応えられなかった。
そこで、現在は新たなバッティングフォームに取り組んでいる。
「以前は高い位置でバットを構えていたのですが、今はトップを低くし、バットの先を回しながらヘッドの重さを使って飛ばすイメージでスイングしています」
フォームを変えてからは飛距離が伸び、ミート力も上がっているという荻野選手。練習法も工夫している。
「フリーバッティングでは『10分間、速いボールを打ったら、次は遅いボールを10分間打つ』というように速い球と遅い球を交互に打つようにしています。この練習で、140キロの速球にも振り負けないスイングを身に付け、その同じスイングのまま遅い球も自分のポイントまでしっかりと引きつけて打てるようにしています」
そして、この冬の課題としては「ストップはかなり良くなりましたが、配球についてはもっと深く考えてリードを向上させていきたいです」と、まずは守備面を挙げた。ちなみに目標としているキャッチャーはソフトバンクの甲斐 拓也選手だという。
「甲斐キャノンと呼ばれるほどの強肩はすごいと思いますし、スローイングの正確さなども意識するところです。自分も肩の強さには自信があって、二塁へ送球する時は絶対にボールが高くならないようにベースを目掛けて投げているのですが、そのおかげで盗塁は刺している方だと思います」
バッティングについては「現在は100%で強く振り切るスイングができているので、あとはこの冬も筋力を上げるトレーニングで力を付けて、今春、そして夏にしっかりと実力を出せるようにしたい」と抱負を語った。
ホームランについては「高校通算で40~50本は打ちたい」と10本以上の上積みを誓った荻野選手。さらに、「目標は甲子園」と力強く宣言。現時点でも強肩強打の左打ちの捕手として注目されている好素材は、聖地へ向けて、さらに自分の実力を磨いていくことになる。
文=大平明