高校野球を彩った名選手たちを振り返る!【後編】(1990年代後半~2010年代後半)
前編では王貞治が投手として活躍した早稲田実業時代の1950年代から、松井秀喜がゴジラとして甲子園を沸かせた1990年代前半までの高校野球を振り返った。後編では1990年代後半から現在の歴史を振り返っていく。
高校野球を彩った名選手たちを振り返る!【前編】(1950年代~1990年代前半)
松坂伝説と今年の春・夏連覇
横浜時代の松坂大輔
イチロー、そして松井が高校野球界を去った数年後、ある男たちが高校野球界で旋風を巻き起こした。「松坂世代」と呼ばれる、1980年世代の選手たちだ。
この世代の中心人物、松坂大輔は神奈川の名門・横浜で3年間を過ごした。「平成の怪物」と呼ばれる所以は、高校3年時の活躍にあった。
春の選抜を制し、春・夏の甲子園連覇を目指して挑んだ80回記念大会。横浜は初戦で鹿児島実と対戦。そこには1回戦でノーヒットノーランを成し遂げた杉内俊哉がいたが、打線が奮起し6対0で下す。そして準々決勝でPL学園との一戦を迎える。
PL学園のエース上重聡(現日本テレビアナウンサー)と投げ合い、点を取られては取り返す死闘の末、延長17回で辛くも勝利した。
続く準決勝では明徳義塾相手に8回終わって6点ビハインド。ここまでかと思われたが、8回に4点を返すとエース・松坂がリリーフ登板で9回を無失点。これで勢いに乗ると直後の攻撃で3点を奪ってサヨナラ。まさに奇跡とも言える勝ち方で決勝の京都成章戦へ。
そして運命の決勝戦で先発した松坂は、ノーヒットノーランの快投で相手打線をシャットアウト。これ以上ない最高の形で横浜が春・夏連覇を成し遂げ、松坂は伝説となった。
松坂に憧れた斎藤佑樹
田中将大と斎藤佑樹
そしてハンカチ王子こと斎藤佑樹は、松坂に憧れた野球少年の一人だった。
斎藤が全国で飛躍したのは2006年の夏。現在ではチームの同僚の中田翔をはじめ、多くの注目スラッガーを抑えて決勝進出。実力はもちろんのこと、マウンド上で見せる、ハンカチで汗を拭う姿に観衆は目を奪われた。そして、熱狂的なハンカチフィーバーが斎藤の背中を押した。
そんな斎藤を擁する早稲田実業の相手が、田中将大を擁する駒大苫小牧だった。
駒大苫小牧は2004年と2005年に夏の甲子園を連覇。田中は2年生ながらチームの夏の甲子園連覇に貢献。胴上げ投手にもなった田中は、注目選手として最後の夏を戦っていた。
斎藤と田中の決勝戦の投げ合いは一歩も譲らぬ投手戦。8回に互いに1点ずつ奪うが決着つかず引き分け。再試合となったが、決勝戦で再試合になるのは実に37年ぶりのことだった。
翌日の再試合で斎藤が駒大苫小牧打線を3失点に抑え、早稲田実業が優勝をおさめたが、2人の熱投に多くの人が酔いしれた。これからの100年も語り継がれる名勝負であることは間違いない。
この世代は斎藤、田中をはじめ、マエケンこと前田健太や坂本勇人、梶谷隆幸など今の球界を支える名選手が多数いる。斎藤が松坂に憧れたように、彼らの活躍が次世代の高校球児の誕生に繋がるはずである。
[page_break:球界を牽引する89年世代をはじめ、スター選手たちはこれからも良い手本であり続ける]球界を牽引する89年世代をはじめ、スター選手たちはこれからも良い手本であり続ける
丸佳浩と中田翔
斎藤、田中の1988年世代にスター選手が多いが、1つ下の1989年世代にも多くのスター選手がいる。
その筆頭格が巨人のエース・菅野智之だろう。
東海大相模から甲子園を目指した菅野だったが、甲子園のマウンドに上がることは叶わなかった。その後、東海大に進学し頭角を現し、プロ注目右腕として2007年のドラフトの目玉となった。
しかし、かねてから願っていた巨人への入団とはならず1年浪人した末に、翌年の2008年に巨人にドラフト1位で入団。今シーズンは沢村賞を受賞するなど、これまでに数多くのタイトルを獲得し、名実ともに球界トップの投手になった。
その菅野と広島東洋カープの田中広輔は東海大相模の同級生。東海大でも切磋琢磨した球友である。広島が誇る「タナキクマル」の1番打者として、チームの3連覇に大きく貢献した。
北海道日本ハムファイターズの不動の4番・中田翔も89年世代の一人だ。高校3年夏の甲子園に出場はならなかったが、1年時から大阪桐蔭でレギュラーを獲得し、甲子園で活躍を見せて高校野球ファンを沸かせた。
このほかにも、今オフに巨人への移籍が決まった丸佳浩、さらに東北楽天ゴールデンイーグルスで育成からの再出発する佐藤由規らがいる。
丸は千葉経済大附、佐藤は仙台育英のエースとしてチームを牽引。特に佐藤は当時の高校生最速155キロを甲子園でマークし、一躍注目の的となった。
この夏を沸かせた3人 左から藤原恭大、吉田輝星、根尾昂(一部写真=共同通信)
その後、2009年には優勝インタビューで涙を見せた堂林翔太(現広島東洋カープ)。さらに2012年には、春・夏連覇を成し遂げた大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎(現阪神タイガース)や高校最速160キロを計測した大谷翔平(現ロサンゼルスエンゼルス)たち1994年世代。
他にも当時2年生ながら一試合22奪三振の大会新記録をマークした松井裕樹(現東北楽天ゴールデンイーグルス)。高校通算111本の大記録を樹立した清宮幸太郎(現北海道日本ハムファイターズ)など、多くのスター選手が甲子園で活躍し、高校野球ファンの胸を熱くした。
そして今年2018年の100回大会では根尾昂や藤原恭大、吉田輝星などニュースターが誕生した高校野球界は、次の100年に向けて歩き出した。これから先、どんなニュースターが誕生するのか。彼らの良き手本、そして夢を与える存在として一時代を築いた高校時代のスター選手たちが、これからも活躍し続けていくことを願う。
文=編集部