日本一のキャッチャーに!小山翔暉(東海大菅生)が秋季大会で得たもの
「強肩強打」という言葉が似合う東海大菅生・小山翔暉。旧チームからクリーンナップに名を連ね、その打力は東京屈指である。しかし国士舘との決勝戦は5打数1安打。5回に迎えた追加点のチャンスでは凡退。自慢のバッティングでチームに貢献できなかった。
そして守備ではキャッチャーとしてエース・中村晃太朗を引っ張るも立ち上がりに4失点。そのまま追いつくことができずに準優勝に終わった。
来春に向けて課題が残った小山に試合後に話を聞いてみた。
気負ったことで生じた狂い
小山翔暉(東海大菅生)
「自分たちの野球ができなかった」と国士舘戦を語る小山。それができなかったのはどうしてなのか。
「監督から120%を出そうとするから空回りする。だから7割8割の力で良いと言われましたが、7割8割の力を出せなかった。それが悔しいです」と、試合中の監督の助言を思い出しながら振り返ってくれた。
またチャンスでの凡退について聞くと、「自分で決めようとしたのが空回りして打ち損じました」と話すように、今日の小山のスイングは大きいが、どこか繊細さが見えなかったように思える。
その理由はこの一言に集約される。
「打順が3番ということで、今大会通じて自分で決めようとしてしまった。それでバットが出なかった」さらには持ち味でもあるミート力を発揮できなかった、と冷静に話しながらも悔しさを感じさせる小山。
3番という打順で気負いすぎたことで、最大の武器・ミート力を奪ったとのかもしれない。メンタルが及ぼすプレーへの影響力はやはり恐ろしい。
打撃で結果を残すことができなかった小山。だがそれ以上にリード面での悔しさが伝わってきた。
「打者の反応などを見て、裏をかいたときに悔しい表情をする。それを見ながら打者に自分のスイングをさせないこと」にキャッチャーの面白さを感じていた小山にとっては、国士舘戦の4失点は悔いが残るのではないか。
東海大菅生の先発は早稲田実業戦でも投げた中村晃太朗。決勝戦当日、「朝から中村の状態を気にしていましたが、本人は大丈夫だと。でも異変に自分が気付くことができなかったことがこの結果に繋がった」と語った。
小山が語った異変とは何か。それを聞いてみると、「変化球がいつもは低めなのに浮いていました。さらにはストレートが走っていなかった。おかしいとは思っていましたが、そこを上手くリードできなかった」と振り返った。
日本一のキャッチャーを目指す!
小山翔暉(東海大菅生)
準決勝で対戦した早稲田実業の主将・生沼弥真人は、「コントロールが良く、ボールのキレが良い」という印象を中村に抱いていた。立ち上がりはその持ち味が影を潜めたのだ。
「小山はジェスチャーを出して低めを要求していました」とマウンド上の中村は語る。小山は何とかして国士舘打線を抑えようと自身の意志を示し続けたが、ボールは浮いてしまった。
それだけではなく、国士舘に生沼を打ち取ったチェンジアップを攻略されていたと小山は感じていた。
苦しいリードとなったが、中村の調子が上がると「真っすぐを見せ球に変化球で打ち取る配球がハマった」と語るように、3回以降はヒットを許していない。それだけに初回の失点が余計に悔やまれる。
あと一歩のところで優勝に手が届かなかった東海大菅生。来春こそ優勝するため、これから鍛錬の日々を迎えるが、小山の目標は大きい。
「この冬1人1人が追い込んで、今度国士舘とやるときは絶対に負けたくないです。個人としては日本一のキャッチャーになりたいです」と意気込む。
2回戦の桜美林戦後、若林弘泰監督は小山の配球について「まだまだです」と話していたが、改めて配球について聞いてみると、
「二松学舎大附辺りから、相手打者、自分の投手、ボールの調子を見てリードするようになった」と成長を感じていた。
それでも「まだまだあんなものではないです」と小山の今大会の結果に満足していなかった。
激戦区・西東京を制するため、そして日本一のキャッチャーとなるため。小山翔暉の奮闘はこれからも続く。
取材=編集部