高校最後の公式戦は吉田輝星のすべてが凝縮!味方、敵、誰もが脱帽!
ラスト登板は吉田輝星らしさ十分の快投
高校野球最後の公式戦で好投を見せた吉田輝星(金足農)
今年の福井国体は例年以上に駆け付ける観衆の規模が違った。
すべては吉田輝星、金足農ナインを見るためである。10月2日の金足農vs常葉大菊川の一戦は8257人が詰めかけた。
吉田にとって最後の高校野球公式戦は吉田のすべてが凝縮された試合だった。まずマウンドに上がると甲子園で注目を集めた侍ポーズを見せて、沸かせると1回表、二死満塁のピンチから6番・伊藤勝仁(2年)に対し、全開ストレートで奪三振に打ち取ると、1回裏には打撃で見せる。漢人友人から先制の適時打。吉田はU18大会後、野手としての練習も行っていたようで、その成果が発揮された。
そして2回表には、最速152キロのストレートで空振り三振。吉田は「ざわざわした感じがしたので気づきました。今日は150キロが出るかと思いました」と状態の良さが150キロにつながった。
そのボールを受けた捕手・菊地亮太はこう語る。
「今まで受けていたんですけど、今日は一番すごかった。152キロのストレートは本当に速くて予測できない伸びでした。だから捕球音を鳴らすことができなくて…。しっかり鳴らしてあげたかったです」と捕手が音を鳴らせなくて悔しがるほどのボールだったのだ。
吉田は5回まで11奪三振の快投。ただ本人は「今日は20点。球速は出ましたが、コントールがだったのでそこをしっかりやらないといけないです」と答えたように、5回まで91球とやはり球数は多い。そこが本人にとって納得がいっていないのだろう。それでも吉田輝星らしさは十分に発揮した。
6回表にはライトに回り、7回表にはライトへ飛んだ大飛球をスライディングキャッチ。さらに7回裏には、一塁けん制の隙をついて三塁に陥れるなど、技ありの盗塁を見せ、そして7点目のホームをふみ、吉田で始まり、吉田で終わった試合であった。試合後の会見は金足農、常葉大菊川も吉田絶賛会と表現していてもおかしくないぐらい、吉田を絶賛するコメントが相次いだ。
ミーハー受け、玄人受けする吉田輝星の魅力
絶賛のコメントが相次いだ吉田輝星(金足農)
常葉大菊川・高橋利和監督
やられました。吉田君は本当にすごい投手ですね。見ていてもホップしていましたから。うちの打者が無理、無理といっていましたからね。走者を出すんですけど、彼は大事な場面でスイッチを入れてくる。ストレートが良いイメージだったんですけど、変化球もよかったですね。
そして好投手から走れといいますが、走れない。クイックで投げますし、すぐに投げないで、じっくりと間合いをとってから投げてからピッチングをするので、非常に盗みにくい。非常に上手かったです。
守備もうまくて、最後の7回裏にヒット打たれてましたが、明らかにホームランを狙っていたようなスイングに見えました。こういう選手が出てきてよかったと思います。
常葉大菊川・根来 龍真
非常に楽しい勝負でした。実際に打席に立ってみると今まで見たことがないストレートでした。
常葉大菊川・奈良間 大己
本当にすごいストレートで、本当に見たことがないようなすごいストレートで、変化球もよかったです。でも対戦ができて楽しかったです。
金足農・菊地亮太捕手
甲子園より良かったと思います。ストレートは今までにない伸びでしたね。普段、僕は低めに構えるのですが、低いかなと思うボールでも、伸びてストライクになるからです。でも、その伸びが[stadium]甲子園[/stadium]よりすごかったですね。相手の見逃し方を見ても低いと思ったボールを見逃したらストライクだったという見逃し方が多かったですし、相当驚いたのではないでしょうか。速いときのストレートは、もうミットに入っていた。そんなレベルのストレートです。
あと変化球もよかったです。スライダー、スプリット。そして2年生との紅白戦で投げていたカーブ。遊びのつもりだったのですが、予想以上に良かったので、カーブも使いました。
そして吉田とバッテリーを組めて本当に楽しかったですし、自慢になります。
吉田は5回11奪三振を成し遂げたように誰もわかるような快投劇を見せ、そしてお茶の間で話題になるような「侍ポーズ」を見せる。そして野球玄人をうならせるよな間合いの取り方のうまさやフィールディングのうまさもある。これほど分かりやすいスーパースターはなかなかいない。
高校野球最後の公式戦で自身が持っている武器をすべて発揮した選手もそうそういないだろう。
そして吉田輝星は10日、プロ志望届を提出。プロ志望が確定となった。吉田の魅力は他のドラフト1位候補の選手にはない「華」があり、そして「何か」を起こし、終わってみれば、吉田は主役になってしまう。そんな魅力を持った選手なのだ。
それはチームにも好影響をあたえる。金足農ナインに勇気を与え、全国準優勝への原動力となった。そういうプラスアルファがある選手であり、争奪戦になって当然の選手なのだ。
文=河嶋宗一