Interview

無名球児から夏の甲子園準優勝投手へ! MIZUNO 田林正行さん(智辯和歌山出身)はいかにしてエースになったのか【前編】

2018.08.14

 和歌山きっての名門・智辯和歌山。今春、選抜決勝戦まで勝ち進んだが、夏、決勝まで勝ち進んだのは2002年だった。準優勝に終わったものの、その時エースとして活躍していたのが田林正行さんだ。現在はグローバルフットウェアプロダクト本部・クリーツ企画課に所属し、スパイク作りに携わる。そんな田林さんに智辯和歌山時代のエピソードを話していただきました。

智辯和歌山に入学し、同期のレベルの高さに驚かされた

無名球児から夏の甲子園準優勝投手へ! MIZUNO 田林正行さん(智辯和歌山出身)はいかにしてエースになったのか【前編】 | 高校野球ドットコム
グローバルフットウェアプロダクト本部・クリーツ企画課所属 田林正行さん

 ―― まず田林さんが智弁和歌山に行くことになったきっかけについて教えてください。

田林正行(以下、田林): 私は和歌山県にあります岩出中出身で、そこで軟式野球部で投手としてプレーしていたんです。野球部の先生が智弁和歌山の高嶋先生の智辯学園時代の教え子だったんです。それで一度、高嶋先生に来てもらおうかという話をしてくださって。それがきっかけです。

 ――田林さんが中学3年生だった1999年、智辯和歌山は夏の甲子園ベスト8まで勝ち進んでいます。そこに行けると決まった時はどうでしたか?

田林: 嬉しかったですね。初めは違う高校に推薦で行こうとしてたんです。
 でも、そこに行って甲子園に出られるのかって、当時の中学校の先生に言われたんです。確かにそうだなと思って。高嶋先生が来てくださって、たまたま自分を見てくださって智辯に行けることになりました。ものすごく嬉しかったですね。強い学校だったので。

 ――入学する前の智辯和歌山は選抜準優勝。3年生には池辺選手、2年生には武内選手、すごい先輩がいましたね

田林: びっくりしました。入学して、選抜が始まって、すぐ高校生として選抜の応援にも行って、それで準優勝しました。こんな人たちと一緒に野球するんだという感覚でした。それで、その夏は全国制覇して。すごいところに入ってしまったと思いましたね。

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智辯和歌山高校

 ――智辯和歌山に入学して、練習に交じって、改めて先輩のすごさを感じましたか?

田林: 間違いなくみんなすごかったんですけど、同級生にぼくは驚きました。学年は10人しかいないんですけど、同じ学年でもすごい力の差を感じましたね。こいつ、すごいな、こいつらと一緒に野球するのかと。今まで、地元の小さな中学校の中でやってただけなんで、広いところに出ると、選手一人一人の能力が高かったので驚きました。

 ――そうなると、やはり不安を感じますよね。

田林: 不安しかなかったです。実際、スタートしても、元々ピッチャーで入ったんですけど、あまり使いものにならずに外野手になりました。外野手になっても、使いものにならずにピッチャーに戻って。挫折の繰り返しでした。そうやって自分は成長していったのかなと思います。

 ――その中で、ピッチャーとして自分はどういうふうに生きていこうと思いましたか?

田林: 最初は普通に上手投げで投げてたんです。だけど一回、1年生の夏に首になって悔しくなって。外野でも大成しなかったんで、1年の正月前にピッチャーに戻ってこいと言われましたが、上で投げても使いものにならないので、サイドスローにしろとアドバイスをいただいて。
 確かに、学年に10人中、5人ピッチャーがいたんです。そこからベンチ入りするには、ほかの4人にはない特殊な存在にならないと生きていけないので、横手投げをすることになりました。
 人と違うスタイルで生きていくという選択肢で、それを極めていった感じです。

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[page_break:転機となったサイドスロー転向 ]

転機となったサイドスロー転向

無名球児から夏の甲子園準優勝投手へ! MIZUNO 田林正行さん(智辯和歌山出身)はいかにしてエースになったのか【前編】 | 高校野球ドットコム
グローバルフットウェアプロダクト本部・クリーツ企画課所属 田林正行さん

 ―― 今までと違う投げ方に変えたんですね。どういうふうに学んでいったんですか?

田林: プロ野球選手を見たりとか、見ることが中心でした。投げ方の感覚なんですけど、上手投げと横手投げの投げ方のポイントは同じで、上から投げてたものを倒しただけなんです。距離は変わらないので。今までと同じように投げてる感覚で、上体を倒しただけですね。そんな感じでやってました。

 ――プロの選手の話を聞くと、オーバーもサイドも投げる軸は変わらないと聞きます。

田林: そうでないと、しっくりこなかったんです。いろいろ試すことは好きで、いろんな投げ方を試したりしたんですけど安定しなくて。そうやって投げてみたら、ある程度、しっくりきました。

 ――その感覚に気づいたのはいつぐらいだったんですか?

田林: 2年の春ぐらいだと思います。投球練習の時にきた感じですね。

 ――そこからピッチングが楽しくなったんですか?

田林: 楽しくなりましたね。思った通りにできるというか、思った通りに体が動くというか。頭と体が一致する感じでした。

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智辯和歌山 高嶋仁監督

 ――投手の指導は当時から高嶋先生が教えられていたんですか?

田林: 基本的には林守先生ですね。ぼくが1年生の時、1年間は部長先生でいらっしゃった方なんですけど、その方に横手投げのスタートは切らしてもらいました。2年生の時、その方は奈良の監督になったので、それからは元プロ野球選手だった鈴木幸雄さんがコーチに就任しました。鈴木さんは現役時代、アンダースローだったんです。その方に教えていただきながら固めていった感じです。

 ――鈴木さんにはどういうことを教わったんですか?

田林: 鈴木さんの指導は基本的なことが中心ですが、感覚的なところも多かったような気がします。
 鈴木さんからもらったアドバイスは、アンダースローで投げるのと横から投げるのでは球筋も違う。基本的には低めを狙えと。そこからどう投げるかは自分で考えろと。

 ――最初に掴んだ感覚からは段々変わっていったんですか?

田林: そうです。段々、変わっていきました。段々、低くなって、アンダーまではいかないですけど、サイドよりもちょっと下くらい。アウトコースに投げるピッチャーって多いと思いますけど、そこだけ投げてても活躍できないので。だから、バッターのインコースに投げられるようにしなさいと教わりました。そこに投げるにはどうするかを考えて、体を動かしてやってくださいと言われました。

 前編はここまで。後編では2年生で初めて経験した甲子園がどんな形で活かされたのか。そして3年の夏の大活躍へのプロセス。最後に今の仕事の面白さや球児へのメッセージをもらいました。お楽しみに!

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田林さんがスパイクに込めた想いとは?

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文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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