昨夏の甲子園で、広陵の中村奨成(現広島東洋カープ)が6本のホームランを放ち、元PL学園の清原和博氏が持っていたホームラン5本の記録を、32年ぶりに塗り替えたことはまだまだ記憶に新しいところだろう。
この話題は大きくメディアにも取り上げられ注目度が非常に高かったが、一昨年にもある記録に挑んだ選手がいることを覚えているだろうか。その記録とは、「盗塁数」である。現在の記録は、の平山敦規(健大高崎・2014年)らの8盗塁が最高だ。
その記録に一昨年並んだのが、今回インタビューした明治大学の丸山和郁選手である。前橋育英時代は、1番打者として打線を牽引。センターを守りながら時には投手もこなすマルチプレイヤーである。
そんな丸山選手が2017年の夏に記録した8盗塁の秘話など、高校時代を振り返りながら、これから初めての夏を迎える1年生たちにもアドバイスをもらった。
中学生の時は軟式野球をやっていた丸山和郁選手が、前橋育英へ進学するキッカケは練習に取り組む選手の姿にあった。
「元々、他の学校からもお声をかけてもらっていましたが、前橋育英の練習を見に行くと2つ上の井古田拓巳さん(現:国学院大)が楽しそうに練習をやっていたんです」と話す丸山選手。しかしそれだけが前橋育英に進学する決め手になったわけではない。
「高校野球って、型にはめようとするチームが少なからず存在すると思うんです。けど前橋育英はそういった雰囲気がなくて、ここなら自分は思い切ってプレーできる」と思い前橋育英の門を叩いた。
ノビノビできる環境に心惹かれた丸山選手だが、前橋育英に進学後、いきなり硬式野球の壁にぶつかる。
「ボールが変わったので、最初はバウンドを合わせられなかったです。入学当初はファーストを守っていましたがトンネルの連続でした。チームで一番下手じゃないかな、とか思っていました」。
しかしその壁を乗り越えるために課題に真っ向から向き合った。毎日ゴロを捕り続けバウンドの合わせ方を身体に染み込ませ、この課題を解決した。
反復練習の大切さを説いてくれた丸山選手だったが、彼が試合に出るまでにどんな取り組みをしていたのか聞いてみた。
「実はあんまり覚えていないです。1年生だけで出場する若駒杯で、1番センターで出場して、毎試合ヒットを打っていたらAチームに呼ばれました。」
高校野球に飛び込み、球速などのあらゆるスピードの速さに驚きを感じていたが、Aチームに入ると、プロ注目の投手との対戦も経験しレベルの高さを体感した。
「レベルの高い選手との対戦を経験できたのは夏以降に活きてきましたが、13打席連続ノーヒットだったときはさすがに心が折れました」と早々に辛い経験をしたが、そんな状況でも大事にしていた練習がある。その練習にこそ丸山選手の神髄があるように見えた。
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Aチームに帯同して、高いレベルの前に結果を残せず辛い時期を迎えた丸山選手。その時期でも大事にしていたメニューが素振りだった。
「前橋育英では、ストライクゾーンを9分割して1ヶ所10スイング。それを9ヵ所やるんです。最後は自由に10スイングして合計で100回。これをシーズン通じて毎日やります。」
しかしただ100スイングをマイペースにするわけではない。前橋育英は6秒の間に1スイングする。つまり1ヶ所1分。100スイングを10分で終える計算となる。
「このペースは普通にしんどいです。冬場なんかは凄く寒い中で素振りをするので、メンタルは本当に強くなります。」と話す丸山選手だが、ペースが早いからと言って、一つ一つのスイングをおろそかにしているわけではない。
「素振りの時はイメージを持ってやらないとダメだと思っています。バッティング練習だとボール球にも手を出してしまうことがあると思いますが、素振りは自分の中で思い描いたボールだけが来ます。そのボールに合わせて自分のスイングができる。そこがいいんです」。
たしかに実戦で来るボールは、自分が思っていたボールと違うのは当たり前だ。ましてや追い込まれた状況ではボール球にも手を出さなければならないこともある。ゴロや進塁打を打つシチュエーションでは、自分のスイングはできない。
それに対して素振りは自分のスイングを徹底できる。イメージで思い描いた通りのボールが自分に向かって投げ込まれる。素振りはそういった意味で非常に大事な練習だと丸山選手は語る。だからこそ1年生には「漠然と素振りをするのではなく、イメージを持って強く振ることを心掛けて欲しい」と丸山選手はアドバイスを送った。
丸山選手はイメージを持つことにこだわりを持っている。これにはある理由があった。
「自分も入学して間もない頃は素振りかぁと思っていましたが、イメージするボールが凄ければ凄いほど実際に対戦する投手のボールに驚くことは減っていくことに気づきました。170キロの真っすぐを想定すれば、それ以上速いボールを投げ込む投手はほとんどいないわけなので」。
だからこそイメージは大事だと思い、素振りでは高いレベルの投手を想定して取り組んでいる。
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レベルの高い投手を想定して素振りをし続けた丸山選手。その努力が実り、高校2年の夏には初めて甲子園の地に足を踏み入れた。当時のことを振り返るとこんなことを話してくれた。
「球場練習で初めてグラウンドに立った時は、球場の雰囲気やテレビの中だと思っていた夢舞台に来たことに驚くことしかできなかった」と言う丸山選手だが、「試合になるとそういった感情は一切なく無我夢中で試合にのめりこんでいた」とも。
初めての甲子園は初戦の嘉手納戦で敗退。丸山選手が最高学年として新チームの中心選手となっていったが、この時ある想いを秘めていた。
「自分たちが引っ張ってここに戻ってくるんだ。」という強い覚悟を持って臨んだ1年間は、正に有言実行だった。
3年春は自身がエースとして選抜に、そして3年夏もチームの主軸として甲子園出場を果たす。この3年の夏に丸山選手は大きな記録を残す。それが冒頭で紹介した盗塁記録である。
3試合で大会記録に並ぶ8盗塁を達成。きっと丸山選手の中で盗塁の極意があると思い、話を聞いてみると意外な答えが出てきた。
「走塁の極意はないです。強いて挙げると癖を見抜くことと割りきることが大事だとは思います。けど、あの夏(3年の夏)は監督からのサインはあんまり出ていなかったです。自分のタイミングでスタートを切っていました」。
衝撃だった。丸山選手は相手投手の雰囲気を察知して盗塁を決めていたのだ。実際に成功した8回のうち2回程度しかサインでは走っていないと丸山選手は語った。特に三盗に関してはすべてノーサインで決めていた。だが、この成功にはある人の支えがあった。それが一塁コーチャーの深川理来選手の存在である。
「自分のリードの幅だけ深川もボックスの中で移動してくれたので、深川を見ればリードの幅がわかりました。あと、深川がショートの位置を声とジャスチャーで教えてくれたおかげで、セカンドの位置とピッチャ―に集中できたので三盗が決まったと思います。」
コーチャーの深川理来選手とのコミュニケーションが大会記録に並ぶ8盗塁を決めたといっても過言ではないと丸山選手は語った。
その活躍が評価され、U-18日本代表に選出され同世代のトップ選手たちとともに世界相手に戦った。しかしその舞台は反省の場となった。
「大会期間中は、チャンスの場面で打つことができず申し訳なかった。清宮(幸太郎)や安田(尚憲)には打撃など人それぞれ強みを持った人たちばかりで、自分のレベルの低さを感じました。実力不足を痛感しましたね」。
この春から明治大学に進学。肩のケガの影響でなかなか実戦復帰ができずにいるが、掲げる目標は高い。
「自分はプロを目指しているので、走・攻・守すべてでトップレベルを目指します」と大学野球における目標を力強く語ってくれた。
最後に1年生へのメッセージをもらうと、こう話してくれた。
「高校野球は辛い練習のなかで仲間との信頼関係は深まります。その練習を通じて心身は成長しますし、結果として出れば楽しいです。自分にとっての高校野球はそういうものでした。だから手を抜いて欲しくない。荒井直樹監督の言葉を借りると、“今日は昨日の自分を超えて、明日は今日の自分を超える”という気持ちを持っていて欲しいです」。
3年生の夏にかける想いの強さには1年生は敵わないが、同じくらいの強さを持っていかなければ夏を勝ち上がれない。チームの団結力を強めるためにもそこは大事にして欲しいと、夏に向けてのコメントももらった。一日一日を無駄にせず、高いイメージを持ち続けたことが丸山選手の活躍に繋がったのだろう。
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取材・編集部
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