知念 大成(沖縄尚学)「秋の状態を取り戻し、夏は100%の状態で頂点に立つ!」
昨秋の県大会で145Kmをマーク。九州地区高校野球大会では146Kmと自己最速を更新した知念大成(沖縄尚学)。県内にとどまらず、九州を代表するエクスプレスレフティーに、最後の夏に懸ける思いを語ってもらった。
幼稚園児の頃からボールを追い掛けた
九州大会では146Kmをマークした知念大成(沖縄尚学)
二つ上の兄(大河)が野球をしていたことをきっかけに、幼稚園児のときには既にボールを追うようになった知念大成。学童軟式野球チームみんとんBBCで野球の基礎を固めていく。
知念「4年生になる頃には代表チームでメンバー入りしました。左投げだとりいうこともあり、ピッチャーをやってみないかと。そこから外野と兼任でマウンドを経験してきました」。
自分が投げて抑えたときの嬉しさ。チームの勝利に直結するピッチャーというポジションに面白みを感じたのはこの頃だった。みんとんBBCが所属する地区には、県大会の常連チームがおり、大きな大会で成果をあげることは叶わなかった知念。中学では玉城中学軟式野球部に入る。生粋の野球小僧は、バッティングの楽しさにも気付き出す。しかし愚直なまでに取り組む知念の姿勢に、まだ中学生の身体の方が先に根をあげてしまう。
知念「いま思うと、かなり無理な回数、バットを振っていた」。。
肋骨の疲労骨折など、ケガをしてきた。身体の使い方は上手くないという知念。どちらかというと不器用かと問うと、そうですねと苦笑いした。
身体能力の方はどうだったのだろう。
知念「小学や中学の陸上などで呼ばれても、特に目立つことは無かったです。」
足の速さも、バネも。特段あったわけでは無かった。遠投も、記憶に残ることはしていない。それでも、身体の調子が良いときには周りが太刀打ち出来ない力を見せ、玉城中学で県大会優勝を果たす。そして進路。何校か話は来ていたが、心は既に兄が進んだ沖縄尚学に決めていた。
上には上がいる 創成館戦で気付かされた思い
創成館戦の敗戦からコースへの球威とキレの重要性を痛感したと語る
沖縄尚学の門を叩いた知念。一つ上には、砂川リチャード(ソフトバンク育成)をはじめ安里大心など、能力の高い先輩がいたが、一年生の新チームから中軸を任される。翌年春に優勝を経験するが、夏はベスト8に終わった。個々の能力がこんなに秀でている先輩たちでも勝てないのか。これが高校野球なのか。そう心に過ぎった知念。意を決して新人中央大会に望んだが、準決勝で中部商に、3位決定戦で沖縄工に敗れてしまった。
知念「きっとあのときは、比嘉先生だけが僕らの理想の姿を見ていたのだと。僕らは自分のことしか考えていなかった」。
「このままじゃいけない。チーム一丸となり、比嘉先生についていかなきゃ!」ひとつになった沖縄尚学は秋、東浜巨を擁して以来となる10年振りの頂点に立った。エースとしてマウンドに立ち続けた知念は、キレのあるストレートを武器に勝ち続けた。
知念「秋の大会は、ガムシャラに投げていたところがあった。それが良い方向に行ったのだと思います」。
個々の持っている力をひとつにまとめることが出来た秋。知念自身も、これまでにない好調さを感じていた。
比嘉監督「身体の使い方が、まだ上手く出来ていない大成が光った秋。指の掛かり具合なども良かった」。
池間主将「捕手として受けてる大成は、他の投手とは違う馬力があって。最後にこれだけの球を投げられるのか!と驚きがありました」。
満を持して望んだ九州地区高校野球大会だったが、体力が持たなかった。
知念「創成館戦は疲労困ぱいで。ストレートが走らないのでコーナーを突いたのですが、まだまだ自分の力の及ばない存在があると気付かされた完敗でした。」
コースを丁寧に突いたつもりだったが、創成館打線に簡単に持っていかれる。体力増強とともにコースへの球威とキレをUPさせないと甲子園には行けないし、プロになるなんて夢のまた夢だ。
知念「プロへの憧れは持っていますが、今のままだと絶対に通用ませんから」。
新たな目標が出来た秋だった。
[page_break:BESTではない春。夏までにもう一度、あの感覚と身体を取り戻す]BESTではない春 夏までにもう一度、あの感覚と身体を取り戻す
冬トレは投げ込みが出来ず、下半身をいじめ抜いた知念。解禁直後でも投げることは叶わず、ぶっつけ本番の春となった。
知念「言い訳にはしませんが、春の大会もそうですが、招待野球での明徳義塾さんでも、まだBESTの状態では無かった。」
この状態で4位ならまずまず。と、知念は思わなかった。逆に思い出すのが新チーム直後の大会のこと。中部商と沖縄工に負けた新人中央大会の負けが、KBC学園未来沖縄とコザに負けたこの春の負け。この負けがあったから、夏勝てた。そう言えるように知念もそしてチーム自身も厳しい練習を乗り越える。
知念「自分の目標。追い付きたい。追い越したい。それだけです。」
尊敬する偉大な兄。大河と同級生である上原光貴は、「とことん努力する。出来ないことがあると、出来るまで、納得するまでやるタイプ」と、大成の兄を評する。知念自身、秋の優勝で、兄に追い付いたと言えよう。そして追い越すために、誰よりも一番長い夏にする。
知念「夏は100%の知念大成を皆さんに見せられるように。絶対頂点に立ちます」。
知念の口から何度も出て来た言葉が、「まだまだ僕は、身体の使い方が出来ていない」。親子で知念を見てきた上原光貴の父は、「持っているものは大阪桐蔭の根尾昴に引けを取らない」と語る。
もし知念が身体の使い方を覚えたなら。未だ完成していない大器の将来が楽しみでしょうがない。
まずは秋の状態を取り戻すこと。それが出来れば自ずと4年振りの夏の頂上は見えてくる。そして聖地で大暴れしいつかはプロへ。チームの精神的支柱である稀代のレフティーの夏に注目だ。
文=當山雅通