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01年夏の近江の準優勝以降に躍進、18年春センバツは彦根東など3校選出【滋賀・2018年度版】

2018.05.14

滋賀県勢最初の躍進は瀬田工!今年の選抜には3校が出場

01年夏の近江の準優勝以降に躍進、18年春センバツは彦根東など3校選出【滋賀・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
彦根東は昨夏、今春と2季連続で甲子園出場を果たした

 90回の記念大会となった2018(平成30)年春、滋賀県は甲子園に代表校3校を送り込んで話題となった。01年夏に滋賀県勢としては初めて甲子園決勝に進出した実績のある近江、17年夏に続いての出場となって、今や公立の雄と言われている彦根東。そして、21世紀枠代表として59年ぶりに出場を果たした膳所だ。膳所は、専任データ班の活動も高く評価された。

 夏の甲子園出場は1978(昭和53)年の第60回大会から1県1校になる。滋賀県はそれまで、京都府と組んで京滋大会を勝ち上がって初めて甲子園に届いたのだが、京都府の壁は厚かった。それは、46年から77年までの間で京都府勢を倒しての代表は三度しかなかったことでも窺われる。
 その記念すべき年は旧制中学の流れを持つ膳所が制した。膳所は戦前に1度甲子園出場を果たしその後は56、59年の春、72年夏に甲子園出場を果たしている。78年夏は通算4度目の甲子園となったが、桐生に0対18と屈辱的なスコアで敗れてしまい甲子園初勝利はならなかった。

 ところで、滋賀県勢にとっては、その年の群馬県勢はことごとく嫌な存在となっている。というのも、春は比叡山が史上初の完全試合を前橋松本稔投手にやられてしまっているのだ。そういう意味では、記念大会イヤーが滋賀勢にとっては春夏ともに屈辱的な年だったということになってしまったのだ。
 それから40年が経過して、滋賀県高校野球にとっては新たな歴史が誕生したと言ってもいいであろう。

 滋賀県勢としては80年に春夏連続して甲子園に初出場を果たしたのは瀬田工が夏、明野(三重)、秋田商浜松商を相次いでかわしてベスト4にまで進出した。それから5年後今度は甲西がエース・金岡康弘と主砲・石躍雄成を軸に初出場を果たし、初戦で県岐阜商を下すと、勢いに乗ってベスト4に進出している。これが、最初の滋賀県勢の躍進だった。とはいえレベルの高い近畿地区では、それくらいは当たり前という感覚だったのだろう。決勝進出を果たしていない滋賀県勢は、近畿地区では何となく蚊帳の外という印象は否めなかった。

 平成になってからは八幡商が復活してきた。かつては作新学院と延長18回引き分け再試合を演じたこともあったのだが、一時的に低迷。88年夏に復活すると一気に県内では安定した上位校となっていった。学校は1886(明治19)年に大津に創立し、その後近江八幡に移転した。

[page_break:近江と北大津が2強を形成]

近江と北大津が2強を形成し、近年では彦根東が躍進

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近江のブルーのユニホームは甲子園でもすっかりお馴染みになった

 滋賀県勢は近畿大会でも出ると負けの状態から脱皮してきて当然、チームも整備されてくるようになった。
 80年代に比叡山八幡商が競い合っていたが、90年代になってそこへ近江が加わってくる。多賀章仁監督が就任して92年夏に11年ぶりに出場。以降2年ごとに春夏どちらかには出場するくらいに安定。そして01年夏には快進撃を続けて滋賀県勢としては、ついに初めての決勝進出。琵琶湖をイメージしたというブルーのユニホームは、いつしか甲子園にもすっかり定着してきた。
 そして、近江の前に立ちはだかるようになってきたのが公立ながら国際文化コース、体育コース、特進コースなど細分化した独自のカリキュラムで結果を出してきた北大津だった。98年、03年と滋賀大会の決勝にも進出していたが、ことごとく近江に跳ね返され、宮崎裕也監督は「ブルーの壁が厚い」と嘆いたが、04年夏に悲願達成。06年春には甲子園初勝利も記録。
 こうして、滋賀県に近江との2強勢力を形成していった。

 滋賀県は井伊直弼の彦根藩の歴史を担う土地柄でもあるが、彦根城内にその藩校からの伝統を担い母体は江戸時代の寛政年間(18世紀末)といわれている彦根東がある。09年に21世紀枠で選ばれると、13年夏には自力で勝ち上がって甲子園出場を果たした。そして、17年夏と18年春の連続出場となり、いずれも初戦突破している。しかも、18年春は初戦で慶應義塾に逆転勝ちすると、3回戦の花巻東には増居翔太投手が9回を無安打無失点に抑えて、延長で1失点して敗れるものの、その戦いぶりは高く評価された。

 また、新しい勢力としては09年夏に出場を果たして16年と17年に春連続出場を果たしている滋賀学園が県外生も受け入れて強化してき一気に躍進してきた。
 他には八日市南、サッカー部が強豪の野洲安曇川などの公立勢と、93年夏に出場している近江兄弟社や02年夏に出場している光泉などもチャンスを窺っている。

 また、京都市内の大学が新たなキャンパスを滋賀県内に設けるというケースも増えてきている。龍谷大も瀬田市に広大なキャンパスを作って野球部はそこで練習をしている。これらの環境の変化も、滋賀県球児には、新たな励みになっていることは間違いないだろう。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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