Interview

中川 圭太(東洋大)日本代表選手が語る打撃の極意

2018.04.07

 昨年、東都大学野球リーグで春秋連覇を成し遂げた東洋大で不動の4番として活躍している中川 圭太選手。PL学園高(大阪)では甲子園出場こそないものの3年夏の大阪大会で準優勝。東洋大ではこれまで3度のベストナイン(二塁手で2度、DHで1度)に輝き、昨夏は侍ジャパン大学代表として日米大学野球選手権とユニバーシアードに出場。
 特に、日本が二連覇を果たしたユニバーシアードでは首位打者と打点王を獲得するなど、今、大学球界で最も注目されている打者の一人と言える中川選手にバッティングについてうかがった。

高い意識をもって取り組んだ自主練習から繋がる1年春からのレギュラー出場

中川 圭太(東洋大)日本代表選手が語る打撃の極意 | 高校野球ドットコム
ティーバッティングを行う中川圭太(東洋大)

 PL学園高時代から自主練習が多かったという中川選手。「平日は全体練習が2~3時間しかなく、あとの時間は自主練習にあてられていました。自分はバッティングが売りなので、打撃練習をすることが多かったですね」。テーマにしていたのは確実性だ。

 「長打を何本も打てる訳ではないので、いかに速い打球で野手の間を抜き打率を上げるか。チャンスで打点を稼げるかを考えて、どんな球でもヒットゾーンに持っていけるように、広角に打つことを意識してティーバッティングやバッティングピッチャーに投げてもらったボールをひたすら打っていました」。

 2時間以上、打ちっぱなしの日も多かったというが、「ミートポイントを確認し、スイングの軌道とタイミングの取り方を常に頭に入れながら、打つ感覚を養っていきました」と、常に高い意識を持って練習に取り組んでいた。

 また、バットは日頃から木製バットを使用。「中学時代から冬は竹バットを振っていましたし、PL学園では『プロを目指すなら、その準備として木製バットに慣れておいたほうが良い』という考え方だったので、高校時代はずっと木製バットを使っていて大会が近くなってきたら金属バットに変えるという感じでした」。

 そのため、大学に進学してからバットの違いに戸惑うことはなかったという。入学当初については「東都のレベルは高いと感じましたが、この環境で自分を磨くことができることにモチベーションが上がりましたし、絶対にレギュラーを獲って活躍してやろうと思っていました」と振り返るが、大学の投手のレベルの高さには驚いた。

 「1年生の時はまだ2部だったのですが、青山学院大岡野 祐一郎投手(現:東芝)や東京農業大の幸良 諒投手(現Honda)など、すごいピッチャーがたくさんいて、本当に打てるのかなと思いました」。

 そんな好投手を攻略するためにやったのがストレート打ちだ。「高校時代に比べて真っ直ぐのキレが全然違っていたのですが、その真っ直ぐに打ち負けないようなスイングをしようと考えました。それで、練習では自分のポイントまでボールを呼び込んで甘い球を一球で仕留めることができるように技術と精神力を向上させていったんです。

 今、思い返してみると、本当に気持ちだけでやっていたと感じます」。こうした地道な努力の末にストレートをヒットにすることができたら、その後の打席では配球を読んで変化球を狙うなど必死に対応することで、中川選手は1年時からレギュラーとして結果を出していった。

[page_break:バッティングのポイントと主将としての意気込み]

バッティングのポイントと主将としての意気込み

中川 圭太(東洋大)日本代表選手が語る打撃の極意 | 高校野球ドットコム
中川圭太選手のインタビュー中の様子(東洋大)

 そして、3年春には3本塁打を記録し長打力も付いてきた中川選手。その裏側にはバッティングフォームの修正やフィジカルトレーニングなどがあったのだが、詳しく聞いてみた。

――Q.バッティングフォームで大切にしていることを教えてください
中川 前へステップをしても後ろの右足に重心を残して、その右足を軸に回転して打つように心掛けています。
 高校時代は右足と左足の重心は5:5でしたが、今は右足に9割から10割近くまで残しているイメージです。この打ち方にしてからは、ボールを迎えにいくように体が前へ動いて体勢を崩してしまうことがなくなり、軸がブレないので安定したスイングができるようになりました。また、下半身を使って打つことができるので、飛距離も出るようになったと感じています。

――Q.今のバッティングフォームにして、他にもメリットを感じていることはありますか?
中川 ボールの見え方が変わってきました。これまでよりボールを長く見られている感覚があるので、体が前に突っ込んでいた時は遠く見えていたアウトコースのボールが見極められたり、変化球の軌道も見やすくなったりしました。

――Q.フォームが崩れてきた時に行う練習はありますか?

中川 昨年まで指揮を執っていた高橋昭雄前監督に「トスバッティングの時は、いろいろな角度から投げてもらったほうがいい」と言われて、真横や背中側から投げてもらったボールを打ったりするのですが、そういった練習の一つでキャッチャー側の後ろから投げてもらったボールを打っています。このトスバッティングだと前に体が流れてしまうとしっかり打てないので、後ろに重心を残して打つ感覚が身に付くと思います。

――Q.その他にフォームで意識していることはありますか?
中川 昨夏のユニバーシアードの時にPL学園の先輩でもある鈴木 英之コーチ(関西国際大監督)に「ヒジの力を抜いた方がいい」と言われたのですが、そのアドバイスのおかげで懐が広くなったと感じています。打席では一旦、バットを肩に置いてリラックスしてから構えるのですが、そうやって力を抜くことでハンドリングが良くなったのでストレートを待っていて変化球が来た時もバットを合わせやすくなりボールを拾って打つことができるようになりました。

――Q.フィジカルトレーニングのテーマを教えてください
中川 体のキレを良くするトレーニングをしています。5mほどの短い距離でシャトルランをするのですが、ターンをして切り返す時に素早く体を動かすことを意識して、体にキレが出るようにしています。また、メディシンボールを使ったトレーニングではボールを受けて返す時に体のキレを意識しますし、連続ティーなども効果があります。そうやって体のキレを良くしておけば、インパクトで振り遅れることが少なくなると思います。

――Q.打席で集中するためにやっていることはありますか?
島田 自分は打席に入る時、手首をクネクネと動かしてから股割りをし、軽く体をほぐしてから打席に入っています。意識してルーティンとしてやり始めた訳ではなく、中学時代から自然とやっていることなのですが、同じ動作をすることでどんな場面でも同じリズムで打席に入ることができていると思います。

 今年は主将も任されることになった中川選手。「中学、高校とキャプテンをやってきて、先頭に立って引っ張るのは楽ではないと感じていますが、その分、良い経験ができると思っています」と話しており、「今年になって勝てなくなったとは言われたくないので、選手には『(誰かに任せるのではなく)自分たちでやるんだ』と伝えています」と早くもリーダーシップを発揮している。

 今年の目標は「個人としてはまだ獲得したことがない首位打者のタイトルをとること。チームとしてはリーグ戦を連覇して日本一」を掲げた。昨秋の明治神宮大会では右太もも肉離れのため満足なプレーができなかったが「昨年の借りは最終学年の今年しか返せないので、きっちりやり返したい」と意欲を燃やしている。
 また、昨年同様、今夏に開催される日米大学野球選手権の代表候補にも名を連ねており、今後も活躍の場は広がっていきそうだ。

文=大平 明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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