Interview

横浜DeNAベイスターズ・梶谷隆幸外野手インタビュー 「ハマの快速強打」を支える足下のこだわり

2017.12.23

 2017年、日本プロ野球を最もスリリングな展開に誘った横浜DeNAベイスターズ。セ・リーグ3位からクライマックスシリーズで阪神タイガース、広島東洋カープを連覇し19年ぶりに日本シリーズ出場を果たし、3連敗から福岡ソフトバンクホークスに連勝した粘りは、見事の一語だった。
 その中で、レギュラーシーズンでは4年連続20盗塁以上をマークしながら、今季は本塁打も初の20本以上に到達。上位も下位も打てる右翼手として存在感を見せたのが島根・開星高卒後11年目を迎える梶谷 隆幸外野手である。では、梶谷選手はいかにして「ハマの快速強打」にたる地位を得ているのか?今回は彼を支える足下のこだわりについて聴いた。

11年間、同型スパイクを履きつつ施す「微調整」

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梶谷隆幸選手

――2017年は21本塁打、21盗塁とキャリア初の「20盗塁&20本塁打」をマークした梶谷 隆幸選手ですが、記録の原動力にはやはり足下を支えるスパイクの存在があったと思います。梶谷選手にとって「スパイク」とはどのような位置付けですか?
梶谷 隆幸選手(以下、梶谷) 僕は横浜DeNAベイスターズに入団してからずっと同じスパイクを履いています。入団時から変えたのは刃の長さくらい。1ミリ・2ミリ程度長くしただけです。
 僕は軽すぎず、重みを感じながら走りたいタイプなんですが、高卒1年目からそこを考えて行き着いたのが当初から形を変えていない今のスパイク。2014年からはその形でずっと一緒です。

――その中で梶谷選手が今年、心がけてきたことはありますか?
梶谷 チームが強くなり、むやみやたらに盗塁を仕掛けることができない状況が増え、盗塁も確率が求められる。実は今年24回しか盗塁を仕掛けていないのですが、そこで成功率が高く残せたのはよかったと思っています。

――では、盗塁成功率を高めるため、梶谷選手が2017年にアプローチしたのはどのようなことですか?
梶谷 実は2016年までスパイクのサイズは「27.5センチ」だったのですが、2017年は感覚が少し違っていたので「27.0センチ」にしました。それも成功率上昇につながったと思います。

――形の部分で梶谷選手の「こだわり」はあるのですか?
梶谷  僕のスパイクは投手が多く使っている「折りベロ」を採用しています。野手は現在「立ちベロ」がほとんどだと思うんですが、僕は足にベロが当たっている感覚が好きではないので、「折りベロ」にしています。軽さもいろいろ試しましたが、エナメル生地に戻った感じです。

――となると、人工芝のホーム・横浜スタジアム。一方、MAZUDA zoom‐zoomスタジアムは土、天然芝といった環境が違うグラウンドに、どのようしてスパイクを対応させるかも重要になってきます。
梶谷 グラウンドの違いに対してはスパイクというより、自分の動き方を変えることになります。人工芝のグラウンドは土より硬いので、普通にスタートを切れば刃は地面を噛んでくれますが、甲子園球場やマツダスタジアムといった下が土の場合はスタートを切る際にふわふわしたところがあります。
 実はスパイクの刃を長くした理由もそこなんですけど、自分の感覚としては人工芝の時よりも「楽にスタートを切る」。思い切り蹴らず、軽く踏み込む。「人工芝の時は何も考えず、土の時は気持ち優しくスタートする」感じです。
 思い切り踏み込むと滑って1歩目の歩幅が短くなる。そこは気を付けてスタートしています。

[page_break:スパイクを選ぶポイントは自分のタイプと「フィット感」]

スパイクを選ぶポイントは自分のタイプと「フィット感」

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梶谷隆幸選手

――そんな梶谷選手は中学・高校時代、スパイクはどのような選び方をしていたのですか?
梶谷 いろんなメーカーを試しましたね。その中で「ミズノさんの製品が一番いい」という結論になって、プロ入り当初から使わせてもらっています。

――ミズノでは中高生球児向けにアッパーの柔らかさとフィット感を重視した「プライムバディ」というスパイクもあります。
梶谷 中高生球児のみなさん……実は僕もそうなんですが、新しいストッキングでスパイクを履いた時にはスパイクの中で滑る感覚がどうしてもあると思います。
 ただ、僕のスパイクは大きさを今年0.5センチ小さくしたことで、スパイクの中でストッキングが滑る感じはなくなりましたし、フィット感もできました。そしてバッティングの時も『なんか、いいぞ』という感覚を得らるようになったんです。
 そう考えると、「プライムバディ」のアッパーの柔らかさやフィット感のよさは僕も重視している部分と同じ。靴下がズレないということも含めてはとてもいい商品だと思います。

――そして今、梶谷選手にもって頂いているスパイクは「PSシリーズ」というバッティングに特化した新製品になります。こちらに対する感想はありますか?
梶谷 僕も先ほど履かせて頂いたんですが、非常に履きやすい。「なんとなくいい」感じがあったので、春のキャンプで一度試してみようと思っています。

――では、スパイクを選ぶうえで梶谷選手から中学・高校球児にアドバイスがあるとすれば、どのようなことを言いたいですか?
梶谷 スパイクは履いた感覚も足の形も人それぞれ。プレーヤーとしてのタイプ、スタイルもそこに加わってきます。そして投手と野手、内野手と外野手では当然動き方やスパイクの使い方も違う。
 個人的にはミズノさんのスパイクがいいとは思いますが、まずは僕もそうだったように、いろいろなスパイクを試して最終的に「これが一番」と思ったものをチョイスしてほしいです。

「レギュラーをつかみ獲る」で、2018年はリーグ優勝と日本一を

――2017年は日本シリーズ出場など、横浜DeNAベイスターズとしてはいい一年だったと思います。改めて2018年に向け、梶谷選手の決意をお願いします。
梶谷 チームとしてはここ数年でクライマックスシリーズ進出、日本シリーズ進出と段階を経ていますが、レギュラーシーズン3位も事実。「まずはセ・リーグ優勝したい」と誰もが思っていますし、誰もがリーグ優勝と日本一を口にしているので、来季はそこをみんなで目指していきたいです。
 個人的は来年30歳になるので、また今季からは一皮も二皮もむけて。いいライバルとなる若い選手が多い横浜DeNAベイスターズの中で「もう一度、レギュラーをつかみ獲る」気持ちをもっていきたいです。

――では、最後に球児へ向けてのメッセージをお願いします。
梶谷 人の見ていないところでたらふく練習する。自分で考えて練習することが大事です。これは僕がプロに入ってからも感じ出ていることですし、人に教えてもらうだけでなく、自分で考え、試すことをぜひやってほしいです。

 開星高時代のエピソードを山内 弘和監督が語った「恩師に聞く」記事を実は読んでいた梶谷選手。「懐かしいですね」と笑顔を見せ、丁寧に1つ1つの質問に答えてくれた表情には、野球少年の面影がふんだんに残っていた。
 「野球が大好き」だからこそ、幹を貫きながら細部を追究し続けたプロ11年間を土台に。ハマの快速強打外野手・梶谷 隆幸は、プロ12年目の2018年も、その象徴たるスパイクを足下に携え、グラウンドを縦横無尽に駆け回る。

(文・寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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