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ケガをしたときに行うセルフチェック

2017.08.31

ケガをしたときに行うセルフチェック | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 オーバーワーク(使いすぎ)やオーバーロード(過負荷)によるスポーツ傷害は、普段のセルフコンディショニングなどである程度予防することが可能ですが、デッドボールや接触プレーなどによる突発的なスポール外傷はどうしても避けられないことがあります。スポーツ現場にトレーナーやドクターが常駐している場面はあまり多くないと思いますので、受傷したケガについてのセルフチェック法についてご紹介したいと思います。

ケガをしたときの状況を把握する

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痛みの程度が軽い場合は痛みスケールを活用しよう

 まずは受傷したときの状況を確認しましょう。次の4項目についてチェックします。

(1)ケガをしたときの状態(どういう格好で、どういう状況で、落ちた、転倒した、捻った、打撲したなど)
(2)動けるか、動くか、変形しているか、歩けるか、しびれがあるかなど
(3)痛みは我慢できる程度か、できないほど強いかなど
(4)腫れがあるか

 この4項目を確認し、医療機関を受診するか、そのまましばらく安静にして様子をみるかを判断します。痛みの程度が強かったり、腫れが見られる場合はすでにケガによって炎症が起こっている状態と考えられます。また変形している場合は骨折の疑いがありますので、いずれもRICE処置を行いながら、すみやかに医療機関を受診しましょう。頭頸部の外傷については時間の経過とともに悪化する場合がありますので、より慎重に判断することが求められます。判断に迷ったらまずは医療機関を受診しましょう。

 痛みの程度が軽く、しばらく様子をみる場合でも急性のスポーツ外傷にはRICE処置が有効です。患部を冷却し、腫れの程度が広がらないようにします。また痛みスケール(ものさし)を活用し、10段階で自己評価を行います(一番痛い時を10、痛みのない時を0として数値化する)。受傷当日を10とした場合、数日後に再度痛みの程度を数値化し、たとえば8であればまだまだ痛みが残っている状態で、プレーをするには支障があると判断できますし、5であれば受傷日から比較すると痛みが半分程度になったと評価できます。

[page_break:トレーナーがチェックする項目]

トレーナーがチェックする項目

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肘の曲げ伸ばしでいつもと同じように動くかどうかをチェック

 専門知識のあるトレーナーが評価する項目ですが、参考までにご紹介します。4項目の英語の頭文字をとって「HOPS」と呼ばれています。

H)History(ケガの履歴)…どの部分を痛めたのか、いつから痛いのか
O)Observation(患部の観察)…腫れや内出血、変形などがみられないかを観察します。健常部位(左右)と比較します。
P)Palpation(ケガの部位に触れる)…患部を触って圧痛があるか、熱感やしびれが見られるか、筋肉の拘縮などを健常部位(左右)と比較しながら確認します。
S)Special Test(専門的な機能テスト)…関節可動域(関節の動く範囲)や徒手抵抗による筋力チェック、疑われるケガに対する機能テストなどを行います。

 選手に触れることはケガを悪化させるおそれがあり、トレーナーとしても慎重に対応する必要があるものです。選手や指導者、保護者の方などが状況確認を行う場合は、HOPSの「H」「O」の2項目については、直接触れることなく把握することができますので参考にしてください。

運動機能をチェック

 ケガをした部位について、グランド外で大丈夫と判断しても、実際にプレーしてみると痛みが再発したり、思うように動けなかったりすることもあると思います。プレーに復帰する前にはケガをした部位の運動機能もぜひチェックしておきましょう。

《下肢のケガについて》
(1)体重をかけたり、痛みがなく動かしたりすることができるか
(2)ジョギングやバック走、サイドステップなど前後左右の動きはできるか。そのときに痛みはないか。
(3)スピードをコントロールすることができるか。全力ダッシュ、ブレーキング、ステップなど複雑な動きにも対応出来るか。

《上肢のケガについて》
(1)左右を比べて、患部の関節可動域に大きな差はないか
(2)筋力レベルがケガをする前の状態まで回復しているか
(3)キャッチボールが痛みなく行えるか

 これはケガをしてしばらく全体練習をはずれ、リハビリテーションなどを行って競技復帰する際にもぜひチェックしたい項目です。プレーを再開する場合は痛みがなくなったというだけではなく、以前と同じ動作を行っても不安なく行えるかどうかを確認してから練習に復帰するようにしましょう。不安を残したままではケガの部位をかばって、他の部位を痛めてしまうことにもつながります。ケガをした時には病院に行くかどうかの判断とともに、不安なくプレーできるかどうかを競技復帰の目安としましょう。

(文=西村 典子

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注目記事
2017年秋季大会特設ページ 〜選抜への道〜

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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