Interview

広島東洋カープ・石原 慶幸選手「高校球児向け捕手基礎講座・リード編」【Vol.2】

2017.05.20

昨年は25年ぶりのセントラルリーグ制覇を果たし初のゴールデングラブ賞・ベストナイン捕手部門を受賞した広島東洋カープ・石原 慶幸捕手。県立岐阜商(岐阜)から東北福祉大を経て2001年ドラフト4位で入団してから16シーズン目を迎えた今年、2連覇を見据える鯉の女房役として、洞察力あふれるリードで若き投手陣を陰日なたで支え続けている。

 第1回はそんな石原選手が、そんな捕手メソッドの一部を高校球児のみなさんのために公開!高校球児目線を常に考慮して頂きながら「捕手講座・基本編」を展開してもらった。第2回では「キャッチング」について話して頂いた前回に続き、リードについて石原選手の考え方が披露されます。

広島東洋カープ・石原 慶幸選手「高校球児向け捕手基礎講座・キャッチング編」【Vol.1】から読む

「勝つチャンスを上げる」リード論

広島東洋カープ・石原 慶幸選手「高校球児向け捕手基礎講座・リード編」【Vol.2】 | 高校野球ドットコム

石原 慶幸選手(広島東洋カープ)

――リードについても石原 慶幸捕手の考えを聴かせてください。一般的に石原選手はどこでバッターの傾向を読み取るのですか?

石原 慶幸捕手(以下、石原):うーん……難しいですね。特に高校生の場合は1発勝負で勝敗が決まってしまいますし。ただ「初球」というのが僕は一番難しいと思います。バッター優先で考えるのか、ピッチャー優先でいいボールを考えるのか。

 2打席目以降であればその前の打席で打ち取ったボールなど、参考になることが増えてくるんですが、それがない1打席目というのが難しい部分はある。

 僕は高校生に対してはまず先入観を持たずに「いいボールを投げさせてあげた方がいい」と思います。その中でストレートでストライクが入って、変化球で1個でもストライクが入る球種があればいいピッチャーって言われると思います。

――配球でなく、まずは「いいボールを投げる」引き出しを作るわけですね。

石原: 高校生の場合は明らかに前の打席で変化球があっていないバッターでもなんとか食らいついてヒットになることがある。裏をかいたつもりが表になってしまうこともあります。正解は僕にもわからないです。

 ですから、固定概念を持たずにトータル1試合を見て、大量失点をあまり作らないようにすれば。そうやって「勝つチャンスを上げる」と考えた方がいいと思います。

――ただ、TVで見ていると石原選手は、相手打者の打席の立ち位置をよく見ているように感じますが……。

石原: はい、見ています。見る習慣、「打席の位置を見なさい」というのは若いころから言われています。

 実際は見ても全然変わんないんですけど、本当に大事な場面に表情の変化があったり、それは100回に1回であったり、もしかしたら200回に1回であるかもしれないですけどそこをなんとか見逃さないというところが大事だと思います。

 打席では、すごく意気込んでる選手もいますし、年を重ねていけば冷静に入る選手もいます。そのなかで何かの違いがでるかなとか。「出た時を見逃さないように」という感じです。

――では、ピッチャーの調子を見極めるポイントはありますか?

石原: 先発投手は1~2イニング投げないと解らない部分もありますし、逆にブルペンで良ければある程度計算しながらいけることはあります。

 ただ、高校生の場合はプロ以上に緊張であったり、力みであったりが出てくると思うんで、最初のうちはあんまり難しいことを考えずにストライクゾーンにストレートでも変化球でも投げてみて「あ、今日は良いな」という風にした方が早くわかると思いますね。

 立ち上がりからフォアボール、フォアボールってなってしまうと、どんどんストライクが投げづらくなってしまいますので、それよりはまずストライクを投げてみて「バッターがどういう反応するか」というのを見た方が投手の調子を見る上でもわかりやすいと思います。

[page_break:石原慶幸捕手が考える「配球以外の」リード法]

石原慶幸捕手が考える「配球以外の」リード法

広島東洋カープ・石原 慶幸選手「高校球児向け捕手基礎講座・リード編」【Vol.2】 | 高校野球ドットコム

石原 慶幸選手(広島東洋カープ)

――高校生投手の場合、立ち上がりでアドレナリンが入りすぎ、なかなか冷静になれない状況もあると思います。その時のコミュニケーション法はありますか?

石原: 確かにその辺は難しいですよね。キャッチャーはどうしても受け身になりますので、どんな声をかけても投手が冷静になるかまでは解りませんから。でも、そういった時は一回のタイムを惜しまずに、タイムを取って話をしてあげた方がいいのかなと思います。

<span class="blue" ――実際、石原捕手はマウンド上で投手にメンタル的なことと、技術的なことと、どちらを話してるのですか?

石原: 僕はメンタルです。僕が行くということは多くがピンチを招いた時。そういう感情のなかで急に技術的なことを言われても投手の頭に入ってこないと思うので、1回間を取って、冷静になってもらう。

 加えてあまり細かいことは言ってないです。「とにかく腕振って低めに投げよう」とか、打たれていいケースはないと思うんですけど「フォアボールより打たれた方がいい」とか。「ここはフォアボールでもいいから低めに投げてこい」とかそんな難しいことは言わないです。

 あとは、ホントにガチガチに固まってるのなら冗談を言うこともありますし、ナヨナヨしてたら怒ることもあります。

――ベンチに戻ってから、投手にアドバイスすることもありますか?

石原: よっぽど自分が伝えなきゃいけないことは言うこともありますけど、僕はあんまり言わない方ですね。

 ただ、高校生は本当に「一発勝負」なので。ベンチに帰って冷静になったときにキャッチャーが感じたことは投手に伝えた方がいいと思います。

――投手に冷静になってもらう上で、返球のテンポも重要になると思いますが、石原選手のポイントはありますか?

石原: 返球のテンポは僕は早い方だと思います。どんどん乗っていけばそのテンポで、いいリズムでやっていった方がいいですし、いいリズムでやっていけばピンチの時に守れるかなと思っています。

 ただ、投手のテンポが速くなってると思ったら自分で間を取ったり、わざとボールをこねてみたりとかはします。投手というものはボールをもらうと自分の世界に入ってしまうのでちょっと返す前に声をかけたりもしますね。

 今の高校野球をたまに見たら、とてつもなく早いテンポで投げてるピッチャーも多いんですが、それはそれで抑えてるならいいと思いますし、ちょっと間を取ってあげた方がいいなと思うこともあります。ここは試合の流れ次第だとは思います。

――試合後、振り返りは投手と一緒にしますか?

 伝えておかなきゃいけないことは伝えます。ただ、それが試合後なのか次の日なのかは選手によって変えています。その日に全く頭に入らない選手もいますし、負けたときは聞いてても通り抜けてることもありますので、ただ、どんどん高校生は話した方がいいと思います。(続編・第3回を読む)

(インタビュー/文・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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