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青木 宣親選手(日向-ヒューストン・アストロズ)「印象は『普通の高校生』『継続する大切さ』を教わる」【前編】

2017.02.21

 青木 宣親といえば、NPBでただ1人、シーズン200本安打を2度達成(※2016年シーズン終了時点)し、イチロー(マーリンズ)と並んでメジャーでも安定した成績を残している「安打製造機」としての評価が定着しており、侍ジャパンでもチームリーダーとしての活躍が期待される。そんな青木の高校時代の印象について「坊主頭でなかったら、普通の高校生と変わらなかった」と当時、青木を指導した満窪 文彦部長(現・宮崎南)は言う。

 無論、野球選手としては俊足、強肩で打力もあり、学校では性格も明るく学業も真剣に取り組んで「文武両道に秀でた」高校生だったが、世界に挑む日本の主力選手になるほどの片鱗は「感じなかった」。だからこそ「普通の高校生でも高い目標を持ち、努力し続けること」の大切さを教え子から学んだと満窪部長は力を込める。

入学当時は能力は高いけれど、甲子園常連校がどうしても欲しい選手ではなかった

青木 宣親選手(日向-ヒューストン・アストロズ)「印象は『普通の高校生』『継続する大切さ』を教わる」【前編】 | 高校野球ドットコム

満窪 文彦部長(現・宮崎南)

 青木の出身地である日向市は宮崎県の北東部に位置し、温暖で日照時間は全国トップクラスを誇る。出身校の日向は1989年夏に好投手・織田 淳哉を擁して甲子園に出場した。織田はのちに早稲田大から巨人に進み、同校出身のプロ野球選手第1号となった。県北部地区では当時、その北にある延岡学園延岡工が甲子園の常連校だったが、県立校の日向も「甲子園効果の影響もあって、優勝はなくてもベスト8、4には常に進出していた」と満窪部長。ただ青木が入学する97年前後は「甲子園効果」にもかげりが出て、低迷し出した頃だったという。満窪部長は青木の入学当時をこう振り返る。

「青木は3人兄弟の末っ子で、兄2人はラグビーをしていました。日向はラグビーも盛んで、常時ベスト4、決勝に勝ち進む強豪校でした。2番目の兄の副担任をしていて、1番下は野球をやっていてうちに来ると聞いていました。確かに足は速かったし、打力もありましたが、身体は小さく特別すごい選手という印象はありませんでした。肩も強かったし、投手もやっていて球も速かったですが、甲子園常連校がどうしても欲しいと思うような選手ではなかったと思います。兄2人も日向だったし、かつて織田がいた頃、1度甲子園に出ていた学校だったから、常連校で甲子園を目指すよりも、地元の学校を自分たちでもう1度甲子園という気持ちが強かったのだと思います。

 その頃、青木と一緒に入学した同級生の野球部員は運動能力が高い子がそろっていて、当時のスポーツテストで1級をとれるような子が10人以上いました。走攻守3拍子そろっていないとレギュラーになれず、1級をとるような能力があっても、控えに回るような恵まれたチーム状態でした。甲子園効果も薄れて低迷していた頃でしたが、能力の高い青木たちが入ったことで再び甲子園を目指そうと、学校も地域も盛り上がっていた頃でした」

 青木ももちろん、運動能力はスポーツテスト1級クラスであり、走攻守3拍子そろった選手ではあったが、同級生の中で特別抜け出ていたという印象はない。中心学年になって3番を打っていたが、それは「当時の監督が、足の速い順から並べて3番目だったから」という理由からだった。

[page_break:大学のスカウトに評価されて、外野手・青木の能力の高さを知る]

大学のスカウトに評価されて、外野手・青木の能力の高さを知る

青木 宣親選手(日向-ヒューストン・アストロズ)「印象は『普通の高校生』『継続する大切さ』を教わる」【前編】 | 高校野球ドットコム

青木 宣親選手

 今でこそ「安打製造機」の異名をとり、広角に打ち分ける技術は日本トップ、ワールドクラスの選手だが、当時は「打順の役割もあって、引っ張って長打を打つことを第1に考えることの方が多かった」。 中心学年になってからはエース、3番、投げない時は外野手と主力選手として活躍し、チームの甲子園出場を仲間と共にひたむきに目指していた。高校生としては間違いなく上位クラスの選手という意識はあったが、こののちNPBで安打記録を作り、メジャー入りするような将来を予感させるエピソードは特になかった。1つ紹介してくれたのがこの話だ。

「高3の夏前に、大分に遠征に行ったことがありました。対戦相手がどこだったか忘れましたが、うちではなく相手校に注目選手がいるらしく、それをどこかの大学のスカウトが見に来ていました。試合の後で『あの外野手は打球に対する反応が良いですね!』と声を掛けられたのが青木でした。打球に反応する一歩目が速く、落下点まで最短距離で走るので左中間、右中間の打球も捕って守備範囲が広かった。ただ、私たちは普段から見慣れていて当たり前に思っていましたが、そういう人の評価を聞いて初めて彼の能力の高さに気づかされました」

 青木たちが高3になる99年春の宮崎大会で、日向は89年夏以来となる県大会優勝を手にする。前年の秋、新チーム最初の県大会ではV候補にも挙げられながら、あるアクシデントもあって力が発揮できず上位に勝ち進めなかった悔しさを晴らした。

「ちょうど秋の大会が始まる直前でしたが、青木の右肩が大きくはれ上がったことがありました。痛みはなかったのですが、明らかにおかしかったので病院を3つほど回りましたが、どこもその原因が分からないのです。最終的には大学病院まで行って、毛虫に刺された毒が原因と分かりました。本人に聞いてみると、体育大会の練習で校庭の木陰にいた時に、確かに刺されたような記憶があるといいます。原因が分かって処置したことで右肩の腫れはすぐに良くなりましたが、この間ほとんど練習ができなくて、秋の大会は散々な結果でした。そんなことがあったので、このときの冬のトレーニングは青木も、チームも相当気合が入って練習していました。もう甲子園に出るチャンスは夏1回しかないという想いがありました」

 後編では最後の夏の大会での様子や現在の活躍について思うことを語っていただきます。

(取材・構成=政 純一郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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