試合レポート

市立呉vs鳥取城北

2016.11.05

これぞ広島野球。市立呉が小技を駆使して鳥取城北を破り、選抜出場へ大きく前進!

市立呉vs鳥取城北 | 高校野球ドットコム

先発・池田吏輝(市立呉)

 昔の広島県を思い出させるようなコツコツさと相手を驚かせる戦略性を持った野球だった。

 創部10年ながら中国大会準決勝まで勝ち進んだ市立呉。その市立呉を強くしたのが、尾道商で甲子園に導いた中村信彦監督である。元広島東洋カープの山内泰幸投手は尾道商時代の教え子。そして賀茂に赴任した後、オリックスで活躍する海田智之投手を好投手に育て上げ、中国大会出場に導くなど、まさに広島県を代表する名将だ。

 近年は2014年春中国大会出場、2014年夏ベスト4、2015年春ベスト4、2015年夏準優勝を果たしており、広島県を代表する強豪校へ成長していたが、なかなか甲子園にたどり着けなかった。ようやく訪れた甲子園出場のチャンスに市立呉ナインが躍動したのだ。

 「うちのチームは長打力がないんで、つないで、つないでいくしかないんです。そしてそういう中でエンドランなどで揺さぶっていこうと思ったらうまくはまりました」と振り返った3回表。7番西岡裕希の安打、8番上垣内勇允の場面でエンドラン敢行。上垣内が安打を放ち、無死一、三塁のチャンスを作り、9番池田は凡退したが、一死二、三塁から1番普家涼平の二ゴロが野選となり、1点を先制。なおも一死一、三塁から2番奥田一樹のスクイズでさらに1点を追加。

 4回表には、一死一、二塁から6番青木智也の適時打、二死二、三塁から9番池田吏輝の適時打で4対0にすると、二死満塁から1番普家の左中間を破る適時二塁打で、6対0と大きく点差を広げた。市立呉ナインの選手たちは特別長打力のある選手は少ないが、鋭い打球が内野手の間をどんどん抜けていく。抜け目ない走塁、エンドラン、確実な犠打と細かい技術としっかりと鍛えられている。対戦していて嫌らしいと感じるチームだ。

 そしてエースの池田が力投。かなり緊張したようだが、それでも味方を信じて力投。左オーバーから繰り出す直球は、常時120キロ~125キロほどだが、手元でシュート回転する投手で、きれいなストレートを投げる投手ではないのが逆によく、低めに決まるスライダー、チェンジアップがしっかりと決まり、鳥取城北打線を抑え込む。終盤、8回裏に3番瀬戸 成一郎の適時二塁打で2点、さらに9回裏に味方のミスで1点を失うが、粘り強い投球で、見事に逃げ切りに成功。鳥取城北を破り、初の決勝進出。選抜出場へ大きく前進した。

 主将の新田旬希は「この日は最後のミスが出ましたが、守備のチームだと思いますし、自分たちの野球ができればどこにも負けない自信ができました」とコメント。3失点完投勝利の池田をリードした柏尾健太も「県大会で広島広陵に勝てたことが僕らの自信になっていると思います」と語るように1つ1つの勝利が市立呉ナインを成長させているようだ。

 初優勝まであと1勝。次は宇部鴻城。地元・宇部市民が多く集まった中でやるのは大きなプレッシャーだと思うが、その中で力を発揮できるか。
 宇部で新たな歴史を切り開くことができるか注目したい。

(文・写真=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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