至学館vs菰野
強烈な先制攻撃、至学館「思惑以上の出来」で快勝
初回に得点を重ねて笑顔の至学館
この秋の東海地区大会としては、1回戦の中では一番の好カードかと思われた。ところが、思わぬ展開の試合となってしまった。
至学館は初回、一死から藤原 連太郎君が四球で出ると、この日は「一番シュアな鎌倉に最初の回に打席に入ってほしい」という麻王 義之監督の思いもあって、県大会の4番から3番に入っていた鎌倉君が鋭い打球で左中間を破る三塁打で先制。さらに、4番井口君がスクイズを決めて2対0。手堅く得点をしたのだが、この後が凄まじかった。
続く三浦君が右前打すると、吉見君の打球は遊撃と二塁手の間にふらふらと上がっていき、どちらも躊躇する形となって落球。結果、二死二三塁となる。ここで7番木村君はライナーで左中間を破り2者を迎え入れる。さらに、四球後、藤原 大介君が三遊間を破り、1番に戻ると定塚君も左前打して2点を追加する。続く藤原 連太郎君も三塁前バント安打とし、送球の間に好走した藤原大介君が生還して、この回だけで驚きの7点目が入ってしまった。この間、20分近くを要した。
やっと攻撃に入れた菰野だったが、その裏の攻撃がわずか3分。
至学館は2回にも先頭の4番井口君が安打で出る。盗塁失敗で走者がなくなっても、三浦君がライナーで左翼手頭上を破る二塁打で出塁し、二死から木村君が失策で出ると、これこそが持ち味と、策を練っていたというディレードダブルスチールを仕掛けて、これがものの見事に成功して8点目。さらに、川口君のバント安打も決まり9点となった。まだ2回なのだが、この段階で思わぬ大差がついてしまった。
その後は、菰野の村上君もすっかり立直って、本来の力のある投球が蘇ってきて、ここまでの試合とは全く違う展開になっていった。左腕からの力強い投球で、176cm78kgという体格から、力のある重そうなストレートが、力強く捕手の元山君のミットを叩いていた。こうなると、さすがに至学館打線も初回や2回のようにはいかない。3~6回までは1安打のみだった。さらに、7回は左翼手からリリーフした岡林君が3人で抑えていただけに、あまりにも序盤の失点が大きかった。
リリーフした菰野・岡林君と、捕手の元山君
何とか反撃したい菰野だったが、9点差となった2回に4番の戸田 将人君が初安打を放つものの、三振併殺で結局3人で終わってしまう。戸田 直光監督としては、攻撃に関しては、やろうとしたこともすべてが、うまくいかないという展開になってしまっていた。結局、7回で4安打散発。安打したのも、クリーンアップのみで、5番岡林君は2安打したものの、いずれもチャンスは広がらず、二塁へ進んだのも5回の一度のみだった。
至学館の背番号10の先発川口君は、決してきれいなフォームではないが、自分でいろいろ工夫をしていく中でたどり着いた形で、自分の投球をこうした大きな舞台で披露することで、またこれが自信となっていきそうだ。
想定以上の大勝となった至学館だったが、麻王監督は、「序盤で、いろいろやりたかったことが試せました。正直、もっとロースコアで、2~3点で競り合っていくのかなと思っていました。だけど、県大会で苦しい試合をひっくり返して自分たちは負けないんだという意識もできてきて、それがいい形で出たんですね」と、県大会の準々決勝の東邦戦では、4対1とリードしながら9回に6点を奪われて逆転されて、それでもその裏に4点奪い返してサヨナラ勝ちした勢いがまだまだ途絶えていないと喜んでいた。
そして、麻王監督自身も、「ボクも驚くくらいに、まだまだこの子たちは伸びていっているんじゃないかなぁと思いますよ」と、試合をしながらどんどんと強くなっていく至学館らしさは、「あの時に似ている」と、初の甲子園出場を果たした11年夏を思い起こさせる勢いである。
(文・写真=手束仁)
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