試合レポート

横浜vs相洋

2016.09.15

来年の神奈川の主役は俺だ!増田珠が大暴れ!

横浜vs相洋 | 高校野球ドットコム

三塁打を打って雄叫びを上げる増田珠(横浜)

  今年の神奈川は飛び抜けた実力を持った学校がなく、まさに本命不在の大会となっている。それでも2017年度の神奈川の主役になりそうな選手は3人いる。1人が3回戦の再試合、4回戦で完封勝利を挙げ、創部初の8強入りを導いた142キロ右腕・本田仁海星槎国際湘南)、夏の神奈川大会では準々決勝で2本塁打、そして秋の県大会でも本塁打量産中の慶應義塾のスラッガー・正木智也。そして横浜増田珠だ。

 1年夏からレギュラーを獲得した増田は、この夏は3本塁打を放って甲子園出場に貢献するなど、2年生とは思えないパフォーマンスを見せてきた。そして秋に突入し、ここまで苦戦が続いていた横浜であったが、増田の活躍によって横浜らしさを取り戻した試合となった。

 4回表だった。一死から3番増田がストレートを捉え、ライトの頭を超える三塁打を放ち、チャンスを作る。これで勢いが生まれたのか、4番万波中正があっという間に左中間を破る適時二塁打を放ち、1点を先制する。さらに敵失で1点を追加した横浜。5回裏に相洋の1番小栗の適時打で1点を返されたが、6回表、増田は左翼線を破る二塁打を放ち、チャンスメイクをすると、二死一、二塁となって、7番市村の適時三塁打を放って2点を追加し、4対1に。7回表には万波の適時打、8回表には板川の適時打。8回裏にはタイムリーエラーで1点を失ったが、9回表、増田が追加点となる本塁打を放ち、7対2と点差を広げたのだ。

 増田は夏の神奈川大会で3本塁打を放ってから自分のタイミングというものをしっかりと掴んできたのか、見ていて欠点が本当に少ない。スクエアスタンスで構える姿は力みがなく、柔軟な構えでどこに投げても打たれるのでは?と恐怖感を感じさせ、実際に打撃のメカニズムを見ても、ゆったりと左足を上げていくが、どの打席を見ても、投手に対してしっかりとタイミングを合わせることができる。

 そして真っ直ぐ踏み込んでからも、軸の動きがぶれることは少なく、開きも小さく、スイング軌道も実にコンパクトで、小さくまとまるのではなくしっかりと振り切ったスイングができる。下半身を主導に状況に応じて右打ち、あるいは引っ張って三塁手の横を抜ける当たりを打って二塁打にする巧打力、そして高めに入ればスタンドインさせてしまう長打力と、ホームランバッターではないが、打者の逸材揃いのいまの2年生においてもトップクラスの実力を持った選手といえるだろう。

 打撃だけではなく、外野の間を抜ければ、一気に二塁、三塁へ陥れる脚力の高さ、そしてシートノックを見れば、バックホームの返球では、当たり前のようにノーバウンドでキャッチャーミットへ届く強肩。三拍子すべてにおいて高いパフォーマンスを発揮している。


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適時打を打った二宮主将(相洋)

 さらに彼が良いのは気持ちを全面に押し出すプレースタイル。技術だけではなく、メンタリティも素晴らしいものを持った選手ということだ。彼は打席前に大きな声を上げて打席に向かうが、気持ちがみなぎっていて、周りが乗ることができる。こういう選手がチャンスメイク、さらに勝負強い一打を打てると、チームは乗っていくが、実際に横浜は彼の安打をきっかけにしっかりと得点を加点していった。まさにスター選手と呼ぶべき素質を持っている選手で、来年の神奈川県を代表する選手に相応しい活躍をこの[stadium]平塚球場[/stadium]で見せてくれた。

 ただ投手はまだ不安定。左腕・板川 佳矢は125キロ前後のキレの良いストレートを投げるが、高めへ浮くボールを相洋打線は決して見逃さず、10安打を浴びてしまい、4失点のでき。 やはり今年は打ち勝つ野球という方針だろう。増田がシングルヒットが出ればサイクル安打。また4番の万波も2安打2打点と春先に比べれば、対応力も、勝負強さも出てきた。そして2人の後を打つ打者も打てるようになり、だんだんと打ち勝つ野球の形にはなってきている。

 次は星槎国際湘南。エース・本田仁海が安定感抜群の投球を見せており、簡単には打ち崩せない相手だろう。今年の横浜のチーム力が問われた試合となりそうだ。
 相洋は10安打4得点を奪った攻撃力は評価できる。このまま打撃力を磨いていけば、打撃のチームとしてウリにすることはできるだろう。

 投手力については、先週の日曜日に横浜打線を3失点に抑えたことよりも、今日の7失点の内容を現実として受け止めるべきだろう。課題は明確となっただけに、一冬越えてシードの座を狙えるチームへ成長することができるか、注目をしていきたい。
 

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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