試合レポート

履正社vs横浜

2016.08.14

履正社・山本が値千金の3ラン!悔やまれる横浜の投手起用

履正社vs横浜 | 高校野球ドットコム
逆転3ランを放った山本 侑度選手(履正社)

 横浜の先発がドラフト1位候補の藤平 尚真(3年)でなく左腕の石川 達也(3年)と発表されても、スタンドは沸かなかった。前の試合、東邦vs八戸学院光星が歴史に残るような大接戦になり、東邦が4点差を追う9回裏に5点を挙げて奇跡のサヨナラ勝利を収めた余韻が依然としてスタンド内を覆っていたのかもしれない。

 スタンドが湧いたのは1回裏だ。石川が履正社打線を3者連続三振、それもすべてストレートで空振りに取るという迫力でスタンドを大いに沸かせた。次の回は先頭の安田 尚憲(2年)にセンター前に運ばれ、バントで送られるが、6番寺島 成輝(3年)を空振りの三振に取り、ボールの威力は依然として保持していた。どこで藤平にスイッチするのか、私の興味は継投のタイミングに絞られていた。

 しかし、7番若林 将平(2年)にライト前に運ばれ一、三塁となり、8番山本 侑度(3年)には2ボールからの3球目ストレートをレフトスタンドに運ばれ、試合はあっという間に履正社ペースになる。

 9番若林 健治(3年)に死球を与え、1番福田 観大の3球目が暴投となり走者が二塁に進み、6球目が四球になったところで横浜ベンチはライトを守る藤平と石川をチェンジ。そして藤平が代わりっ端の2番北野 秀(3年)に初球をライト方向に二塁打され、さらに2点が入る。相手投手が超高校級のドラフト1位候補、寺島だけにこの5点は横浜ナインに大きなプレッシャーとなった。

 その後、寺島、藤平が踏ん張ってゼロ行進が続き、横浜が挙げた得点は1回に内野安打と履正社の守備の乱れをついて挙げた1点、履正社は2回の5点だけで終わった。こういう展開を予想した人は少ないと思うが、そうなった原因は横浜の投手起用にあったと思う。

 石川の出だしが予想外によかったため、石川は力で履正社打線を抑えられると考えたのではないか。その気分はリリーフした藤平にもあったと思う。石川が被弾した球は何の変哲もない真ん中ストレート、藤平が北野に撃たれた二塁打は146キロと速さはあるが初球の甘いストレートだった。

 藤平は3回以降、ヒットを2本に抑え履正社の後続を断ったが、ボールが走り出したのは7回からだ。ストレートの最速がこの回に148キロを計測、8回には8、9番打者を146キロ、147キロのストレートで空振りの三振に切って取った。

 もし藤平が先発だったら、しっかりゲームプランニングし、緩急とコーナーワークを駆使した7、8回のようなピッチングを最初から展開したはずだ。履正社打線が6人の左打者が並ぶため左対左の優位性を考えて石川を立てたのだと思うが非常に悔いの残る投手起用になった。

 履正社の先発、寺島は素晴らしかった。投手にとって最も重要なのはスピードでなく、コントロールと緩急とコーナーワークを駆使した投球術だと、今日のピッチングを見て再認識させられた。

(文=小関順二

履正社vs横浜 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【宮崎】日章学園、富島、小林西などが初戦を突破<県選手権大会地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?