試合レポート

袋井vs日大三島

2016.07.24

積極果敢な走塁が功を奏した袋井、延長で春準優勝の日大三島下す

 昨秋は西部地区ブロック大会でも1勝もできないというどん底の状態から、春は西部地区大会2位になるまで、この4月から就任した鈴木彰洋監督が作り直した袋井。自信を取り戻して挑んだこの夏はベスト8にまで進出してきた。春季県大会準優勝の日大三島に挑むという形になった。

 選手個々の体格やパワーでも勝る日大三島だが、受けて立ってしまうと袋井のひたむきな姿勢の野球にやられてしまうこともあるかもしれない、そんな印象を与えた試合前のシートノックだった。

 その予想通り、袋井は先発稲垣君が思い切りよくどんどんとストライクを投げ込んで打者を追い込んでいく。そして、勝負どころとみるや、度胸よく打者の内側に投げ込んでいっていた。これに、日大三島打線も翻弄されていた。そして攻めても袋井は、5回にはアウトにはなったものの一死一塁の場面、2番園田君の二塁ゴロの間に好スタートを切っていた一塁走者の鈴木佑弥君が三塁を狙うという走塁を見せた。刺しはしたものの、日大三島としても「いろいろやってくるぞ」と感じさせられたのではないだろうか。

 ただ、日大三島の左腕背番号10の海野君もここというところでは、力のある重そうなストレートを投げ込んでいていた。袋井は、走者を三塁まで進めることもなかなかままならないという状況だった。

 こうして、0対0の無得点。投手戦のまま試合は進んでいった。

 見せ場は9回に訪れた。袋井は簡単に二死となったが、6番岡本君が二塁へしぶとく内野安打で出ると、続く加藤悠汰君の一打はふらふらと二塁手後方、右翼手の手前に落ちて、しかも球は後方へこぼれていった。一塁走者の岡本君は迷うことなく三塁ベースも蹴って本塁へ向かった。ついに均衡破れるかと思われたが、バックアップの中堅手前田君が好処理で、本塁へ送球して間一髪タッチアウト。三塁側袋井応援席の歓声は、ため息に変わった。逆に一塁側日大三島応援席は大きく沸いた。

 その裏、今度は日大三島が二死走者なしから、守りで好プレーを見せた前田君が左翼線へ二塁打して、一打サヨナラという場面を作る。藤井君は四球で一二塁となった。ここで川口剛監督は勝負をかけて、代打浅井君を送り出したが、袋井稲垣君が投げ勝った。

 力の左腕海野君、柔の稲垣君というタイプの異なる両投手の投手戦は、0対0のまま延長戦となった。

 延長10回、一死から海野君が連続四死球を与えたところで、川口監督は思い切ってエースナンバーをつけた中川君を投入してきた。まさに、ここが正念場というところだったのであろう。それに、海野君もいくらか疲れが出てきていたのかもしれない。

 中川君は2番園田君を抑えて二死としたが、3番井下田君の一打はボテボテの遊撃ゴロ。内野安打になったが、二塁走者の大橋君はそのまま迷わず本塁へ走りこんでクロスプレーとなったが、今度はセーフとなった。袋井が再三見せていた、思い切った走塁は、あわや暴走かと思われるところだが、ここへきて功を奏した。鈴木監督の最後まで、相手に積極的にぶつかっていこうという姿勢が、実を結んだと言っていいだろう。

 そして、その裏は先頭の中川君に四球を与えてしまうが、バントで一死二塁となった後、1番長尾君の当たりを右翼手の園田君がダイビングで好捕。飛び出していた二塁走者も刺して併殺となり試合終了。袋井は都合4つの併殺を記録した。華麗さはないものの、確かな守りで稲垣君を盛り立てた。まさに、攻守にまとまった好チームだった。次は、準決勝というさらに上のステージに挑むことになった。

 (文=手束 仁

袋井vs日大三島 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.15

西東京大会は激戦ブロックが続出!昨夏甲子園出場の日大三は国士舘と同ブロック!【2024年夏の甲子園】

2024.06.15

東東京の横綱に上り詰めた帝京、関東一の軌跡~前田三夫と小倉全由、2人の名将~【東西東京大会50周年物語③】

2024.06.15

【福島】日大東北がサヨナラ勝ち、帝京安積はコールド勝ちで4強入り<春季支部選手権大会>

2024.06.15

今年の東京は「スラッガー大豊作世代」! 超進学校に現れた「プロ入り明言」の二刀流、木製で本塁打量産の早実のスラッガーなどが夏を盛り上げる【注目選手リスト】

2024.06.15

“超不人気”だった東京の高校野球を「3つの出来事」が変えた! 東京ローカルチーム・桜美林の全国制覇、都立高の甲子園出場、そして……【東西東京大会50周年物語②】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.11

センバツ出場・東北のレギュラー左翼手がプロボクサー挑戦へ! エースはENEOS、主力は國學院大、国士舘大などへ進学【卒業生進路】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.11

【北海道】十勝支部は12日に抽選会!帯広大谷、白樺学園の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.06.10

【沖縄】11日に抽選会!春の覇者・エナジック、ノーシードの沖縄尚学の対戦相手に注目<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得