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【春季大会総括】先を見据えた浦和学院、川越東を後を追う埼玉の各校たち

2015.05.09

 浦和学院の優勝で幕を閉じた埼玉県大会。激戦あり、感動ありと高校野球ファンの感情を揺さぶられるような試合が多かった埼玉県大会を総括する。

先を見据えた浦和学院、川越東。17人の東京成徳大深谷

小倉(浦和学院)

  優勝候補に挙がる学校がそのまま前評判通りの結果を残すチームというのは、選手たちの個々の能力の高さ、野球の質だけではなく、先のことを見据えて、どれだけ余裕をもってプレーできているか。今年の浦和学院は春の優勝は通過点であくまで夏の甲子園に出場することを主眼に置いて取り組んでいるのが伝わってくる。この春はエースの江口奨理の登板はなかった。

 本格派左腕・小倉匡祐、2年生右腕・榊原翼、左腕・森兼望の成長が著しく、江口頼りではなくても勝負できる布陣となってきた。また打線のレベルも底上げし、得点力があり、何よりそれぞれの個性が出た打線で、簡単には打ち取れない凄味が出ている。この夏も優勝候補筆頭になりそうだ。

 準優勝の川越東は、投手陣ではエースの高橋佑樹が目立つチームだったが、右サイドの磯川雄太が台頭し、県大会でも好投を見せたことで、バリエーションが広がった。また準決勝ではこの2人が投げずに、関東大会進出を決めるなど、いろいろな選手を試しながら勝つことができたのは夏へ向けては大きな収穫だ。打倒・浦和学院へ向けて、着々と準備しているのが伝わる内容であった。

 3位で関東大会出場の聖望学園は、エースの松本 龍尭が急成長。埼玉松山(試合レポート)に1対0で完封勝利を挙げると、2回戦の所沢西戦(試合レポート)では13奪三振の好投を見せると、3回戦の西武文理戦(試合レポート)では、2安打完封。さらに準々決勝の花咲徳栄戦(試合レポート)では、1失点完投勝利と、まさに関東大会出場の原動力となったといっても過言ではない。そして打者では地区予選・県大会通じて3本塁打を放った2年生スラッガー・大野亮太も成長も著しく、関東大会を経て投打で厚みが出てくるか。

 4位の東京成徳大深谷は3年生17人だけで勝ち上がった。個人を紹介すると、威力ある速球を武器にするエース落合大地、リードと強肩が光る180センチの大型捕手・吉田龍弘、170センチと小柄ながら広い[stadium]大宮公園球場[/stadium]で本塁打を打ち、粘れて右打ちができる理想的な1番打者・高橋滉斗と粒ぞろいの選手たちだ。昨年の4月からグラウンドが諸事情で使用することができず、練習はキャッチボールが中心。軟式の野球場でゴロの捕球練習を行い、バッティング練習は土日にバッティングセンターで行い、フリーバッティングは出来ないなどの厳しい環境の中で、実力に磨きをかけてきた。初戦の川越工戦で逆転サヨナラ勝ちすると、その後も正智深谷春日部東試合レポート)を破ってきた。

 限られた環境の中で奮闘を見せ、グラウンドで躍動する東京成徳大深谷ナインの姿に惹きつけられ、後押しするファンが、勝ち進むごとに大きくなり、それが彼らにとって大きな力となっている。この夏も、後押しする人の存在はより大きくなるだろう。最後の夏に燃える17名のストーリーをぜひ埼玉の高校野球ファンは目に焼き付けてほしい。

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[page_break:戦力整理中の春日部共栄、夏の爆発を期待したい花咲徳栄、埼玉栄]

戦力整理中の春日部共栄、夏の爆発を期待したい花咲徳栄、埼玉栄

出井(埼玉栄)

 ベスト8以下では、高野凌治を中心に勝ち上がった春日部共栄。夏へ向けていろいろな選手を試しながらチーム力を高めている。夏へ向けてしっかりと整備するのがこのチームの怖いところ。またベスト4にしっかりと対抗し、優勝を狙える戦力を誇るのが花咲徳栄。エース鎌倉知也、左腕の高橋昂也の二枚看板。打線では強打の外野手・大瀧愛斗を中心とした打線は強力だが、春では爆発とならなかったが、夏へ向けてピークを持っていくことができれば脅威のチームであることは間違いない。

 またベスト8の春日部東朝霞は基本的に守り勝つチーム。今大会の守備の良さを見せてベスト8進出を決めたが、さらに上を目指す意味でも、攻撃力を磨きをかけていきたいところ。

 そして若生監督が就任した埼玉栄も、夏へ向けてチーム状態を仕上げていきそうだ。エースの出井敏博は県大会では不調で、130キロ前半止まり。夏へ向けて、状態を仕上げ、また打線にも力を入れて、上位進出の強豪校を脅かす存在となっていきたい。また春日部共栄試合レポート)と延長11回の熱戦を演じた浦和実も上位進出に期待がかかるだろう。ベスト16入りの西武文理も、攻守に粘り強いチームへ成長。さらに上へいくために、強豪私学を破る力を夏までにつけていくことがカギになる。好投手・登坂航大擁する市立川越は、夏へ向けて、攻撃力の強化が課題となりそうだ。

 今回は県大会で躍進を見せたチームを中心に紹介をしたが、夏では地区予選で敗退したチームも一気に勝ち上がる可能性は十分にある。次では夏の組み合わせを見ながら、上位進出が期待できるチームを占っていきたい。

(文=河嶋 宗一

コラムに登場する高校の野球部訪問は以下から!
西武学園文理高等学校(2015年03月30日公開)
春日部共栄高等学校(2014年11月20日公開)
春日部共栄高等学校(2011年06月22日公開)
花咲徳栄高等学校(2014年09月16日公開)
聖望学園高等学校(2014年09月04日公開)
聖望学園高等学校(2010年05月31日公開)
市立川越高等学校(2014年01月14日公開)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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