上達の原則 北村勝朗著 CCCメディアハウス
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書評
高校を卒業したら音楽学校に行くのが夢だったという著者の北村 勝朗さん。音楽学校の進学に失敗し、「やっぱり素質が必要なのか」と嘆きつつ、それでも納得できない自分がいたからこそ、「才能」に関する研究に従事することとなりました。「努力すれば絶対に結果は出ると思いたかったし、いつかきちんと証明したいと思っていた」。そして東北大学での15年にわたる研究をもとに書かれた本が、今回ご紹介する「上達の原則」です。
「才能」を過大評価し、知らず知らずのうちに「諦めている」ことはありませんか。
これを北村さんは「才能の迷信」と呼び、一つずつ検証しています。「素質がある人にはかなわない」「今からやっても手遅れだ」「いま成果が出ないなら、この先も同じだ」「いい環境でないと上達できない」「教えてくれる人がいなければ上達は無理」。
こうしたマイナス思考を一つずつ取り除き、上達のメカニズムを理解することで、質の高い練習とやる気を無理なく持続させられるようになります。
上達の過程は「ホップ・ステップ・ジャンプ」の三段階で考えるようにします。「導入期」「専門期」「発展期」とそれぞれの時期にあった上達のメカニズムがあり、最終的には発展期で自立性を養うことが大切だと書かれています。よく言われる「やる気スイッチ」が、段階ごとで変わってくるのはかなり興味深いですね。
導入期のやる気スイッチは「すごくおもしろい」と感じる何かと出合うこと、専門期は「これができるようになりたい」もしくは「できなくてくやしい」と感じ、達成しようと思うこと、発展期は「もっといいものを」「自分らしさを」といった向上意欲がスイッチを入れます。
こうしたことを踏まえ、本書では「すぐにつかえる上達のコツ」として段階に応じた具体的な行動を紹介しています。質の高い練習ができる状況づくりとして、練習に不要なものは片づける、整理整頓といったことをあげられるなど、今日から実際にできそうなものばかり。この中には「集中力を高めるためには体調を整えること」といった当たり前だけれど、おざなりにしがちなことについても書かれています。また上達をアシストするための指導についてのアドバイスも載っており、選手はもちろん、指導者の方にも参考になることが多いのではないでしょうか。
正しい方向性をもって、コツコツ努力をし、上達すること。「野球がうまくなりたい!」という思いをアシストする一冊です。
(書評:西村 典子)