仙台育英vs九州学院
仙台育英の投打の柱である佐藤世那と平沢大河に迫る
2安打の平沢大河(仙台育英)。
決勝戦でも走攻守三拍子揃ったプレーに期待がかかる
九州学院の好投手・伊勢大夢を打ち崩し、13安打8得点とコールド勝ちを決めた仙台育英。今回は投打の逸材をピックアップしたい。
強打の仙台育英の中で、来年のドラフト候補としてピックアップしたいのが3番ショートの平沢大河だ。九州学院戦では1回表、二死から先制のきっかけとなる右前安打、さらには5回表には右中間を破る三塁打を放った。
176センチ71キロと体格的に際立つ選手ではないのだが、非常に強い打球を打ち返すことが出来るのが強み。打撃の動作を細かく振り返っていきたい。
オープンスタンスでバランス良く構える姿には力みがなく、さらに投手を見据えることが出来た良い構えである。平沢は打撃時に引きつけて打つことを意識している。始動の仕掛けを見ると若干遅い。何より良いのはボールが来るまで頭が突っ込まずにしっかりとボールを見据えることができていること。スイング軌道は縦の軌道を描きながら、踏み込んだ足が開かずに振り抜くことが出来ている。常に安定した形で振り抜くことができているので、強い打球が多い。さらに打球に角度が付けば、本塁打を量産できるタイプだろう。
そして俊足でもある。5回表の三塁打のタイムが11秒07。基準が12秒29であるということを考えるとかなり速い。
守備もフットワークが軽快で、守備範囲の広さを感じさせ、飛び込んで捕りにいきながらもすぐに態勢を直して、強い送球が出来る体の強さもある。走攻守のスキルの高さはこの時期の遊撃手として高いレベルに達しているだろう。
ただすべてが完璧であるかというとそうでもなく、まだ守備では打球に入るときにバウンドに合わせることが出来ず、ファンブルしてしまったり、送球も乱れたりとする。もう少し丁寧にプレーしたり、守備の技術についていろいろ追求をしても良いだろう。
そして気になったのが、凡打の時になると、緩めてしまうことだ。先ほどものべたように、三塁打のタイムが11秒07と驚異的なタイムを計測する選手である。今の走塁姿勢は自分の可能性を狭めることではないだろうか。高校生にとって俊足の選手は相当なプレッシャーを与えるものだ。平沢がどの打席でも全力疾走で駆け抜ける姿勢があれば、内野手守備陣はもっと慌てるはず。そういった相手が嫌がられるようなことを考え、走塁が出来るようになると、もっと走塁で魅せることができるだろう。
2試合通じて1失点の佐藤世那。
浦和学院相手にどんな投球を見せるのか
そしてエースの佐藤世那(2年)の可能性にも迫っていきたい。佐藤の特徴といえば、これでもかというぐらい取るテークバック。まるで「アーム式」のフォームなのだが、可動域の広さがこの投手の強みだ。肩肘の柔らかさが感じられ、下半身主導の重心移動を見ると、股関節の柔軟性も高いのだろう。
ほとんどの試合で完投しているのだが、このメカニズムで、大きな故障がないというのは、彼に一番合っているということだろう。また左ひざが開かずに急激に腕が出てくる感覚なので、想像以上に打ち難いともいえる。
右オーバーから投げ込む常時140キロ前後(最速142キロ)の直球は手元でも失速しないキレのあるストレート。さらに球速が伸びていけば、もっと空振りが奪えるだろう。
また中学2年から投げ始めたという決め球のフォークは、無回転ではなく、回転をかけている。シンカー気味に落としたり、球速のあるスプリット気味のフォークと変化は多様で、なかなか器用な投手だ。この日はストレートのコントロールが安定しており、追い込んでからフォークで仕留めるというパターンは少なかった。
投球フォームからして、速球で押す本格派スタイルと思うが、意外にもフォークを使い分ける技巧派な一面を見せる。仙台育英の先輩投手たちと比べると投球術の巧さ、スタミナ面が優れた投手だ。
強打の九州学院相手に、7回を投げて無失点の好投を見せた佐藤。決勝は巧打者揃いの浦和学院相手にどんな投球を展開していくのだろうか。
(文=河嶋 宗一)