試合レポート

関東一vs都立篠崎

2014.10.26

関東一5回コールドで準決勝進出、初スタメン松永6打点の活躍

関東一vs都立篠崎 | 高校野球ドットコム

好打が光った都立篠崎・渡邉拓

 3回戦は延長14回と苦戦したものの(試合レポート)、地力のある関東一と、佼成学園にコールド勝ちする(試合レポート)など波に乗る都立篠崎の対戦。
都立篠崎の牛久保和哉監督は、「胸を借りるだけ」と語っているが、選手は、強豪相手に臆することなく、本気で勝つつもりで試合に臨んだ。

 1回表、都立篠崎関東一の先発・田邉廉から2番渡邉拓がライト線に長打。右翼手がクッションボールの処理に手間取る間に、渡邉は三塁まで進んだ。渡邉は5番吉野翔太の右前安打で生還し、都立篠崎が1点を先制した。

 ところが関東一打線は、都立篠崎の先発、サイドハンドの宮澤祐馬に襲いかかる。まず走者2人を置いて4番伊藤雅人の左右間を破る二塁打で、まず2点。伊藤は6番鈴木の右前安打で還り3点目。さらに走者2人を置いて、打席には、この大会初スタメンの8番松永遼介が左打席に入る。
「相手投手がサイドいうこともあって起用しました。しっかり準備をしてくれていました」と関東一の米澤貴光監督は語る。

 その期待に応え松永は、初球に右翼フェンス越えの3ラン本塁打を放った。「インコースのストレート。変化球を狙っていると思わせて、ストレートを狙っていました」と、松永は語る。

 関東一は初回に一気に6点を挙げ、関東一の一方的な展開になるように思えた。しかし都立篠崎は、派手さこそないものの、粘り強い打撃で、関東一に食い下がる。2回には3安打を放ち2点を返す。


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本塁打を放った吉野翔太(都立篠崎)

 3回には関東一は田邉に代えて、3回戦で好投した小松原健吾を投入した。その変わりっぱなを、5番吉野が右翼越えの本塁打を放ち、2点差に迫った。

 ただ、都立篠崎にとって悔やまれるのは、4回表の攻撃であった。この回、渡邉の二塁打や4番藤関唯斗の左前安打などで一死満塁のチャンスをつかむ。しかしながら、前の打席で本塁打の5番吉野は二飛、続く川畑武は三振に倒れ、無得点に終わった。
「あそこは力んでしまった」と、都立篠崎の牛久保監督は語る。

 同点のピンチを切り抜けた関東一は、一気に突き放しにかかった。
4回裏、先頭の3番オコエ瑠偉は三塁強襲の二塁打で出塁。続く4番伊藤の中前安打でオコエは三塁ベースを回り、一気に本塁を突こうとするも、急ブレーキをかけ、三塁に戻るが、アウト。この時オコエと都立篠崎の三塁手染谷悠平が交錯。染谷が一時担架で運ばれるなどしたため、場内がざわついた。
試合後オコエは、都立篠崎のベンチに謝罪に行ったが、都立篠崎側も「大丈夫」と笑顔で応じたように、ラフなプレーではなく、勢い余っての、やむを得ない接触プレーであった。

 ただこの日の関東一は、下位打線が当たっていた。二死一塁から6番鈴木大智の二塁打で、貴重な追加点を挙げた。オコエ、伊藤、森山将など、上位打線に力のある選手が揃う関東一ではあるが、鈴木は前の試合に続き、流れを変える貴重な一打を放った。さらに走者2人を置いて1打席目で本塁打を打った松永が、今度はライトオーバーの三塁打を放ち、2点を追加した。


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今大会初スタメンで活躍した松永遼介(関東一)

 5回にも中前安打で1打点を挙げ、この試合6打点を記録した松永であるが、自分の自信があることを尋ねると、「声ですね」という答えが返ってきた。「守備もうまくないし、ムードメーカーですから」と語る松永のように、試合ごとに新たなヒーローが生まれるのも、関東一の強みである。

 この後都立篠崎は先発の宮澤に代わり、左の吉本達哉がマウンドに上がった。しかし関東一は5回裏吉本に8安打を浴びせ、一挙6点。結局15-5の5回コールドで、関東一が勝利した。

 点数の上では関東一の圧勝だが、どうもすっきりしない試合運びであった。
旧チームから主力だった選手が多く、個々の選手の能力は高いものの、「自分で勝ちたいという意識が強すぎる。チームで勝つということが重要」と米澤監督は強調する。準決勝以降は、チーム力が問われることになりそうだ。

 一方都立篠崎は、ベスト8という成績は、大健闘といえる。
「前の代から2年生が中心でやっていて、落ち着いてできたのが大きかった」と牛久保監督。
粘り強い打撃が光った都立篠崎であるが、都立校ならではの長方形の狭いグラウンドでは、打撃練習もままならない。それでも「フリーバッティングができないことを逆手にとって、鋭く速い打球を打つように心がけています」と牛久保監督は語る。

 関東一に敗れた後、何人かの選手は悔し涙を流していた。準々決勝進出に満足しないその姿勢は、さらなる可能性を感じさせた。
牛久保監督も、「春までに鍛えて、今回以上の結果を出したい」と、力強く語った。

(文=大島裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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