東海大菅生vs國學院久我山
東海大菅生強豪対決制す、二刀流勝俣、投打に活躍
投打に活躍した東海大菅生エース・勝俣翔貴
夏の西東京大会で準優勝の東海大菅生とベスト4の國學院久我山という強豪同士の対決。
中でも注目は、東海大菅生のエース・勝俣翔貴だ。春は外野手、夏は一塁手として活躍し、夏の準決勝の日大三戦で本塁打を放つなど、その打撃は早くから注目されていた。しかも勝俣は、相当速い球を投げるという話は、東京の高校野球界で広まっていた。そしてこの日、都大会でそのベールを脱いだ。
立ち上がり勝俣は、國學院久我山の1番長田卓に内野安打を許したものの、後続を断って無失点。力のあるストレートはMAX142キロだそうだが、それ以上の球威を感じる。
しかしこの日の見せ場は、1回裏の彼の第1打席であった。あっさり二死となった後打席に入った勝俣は、2球目を叩くと、ライト柵越えの本塁打となった。
実は勝俣は、夏の西東京大会の決勝戦で死球を受け、左手の薬指を骨折し、8月下旬まで打撃練習ができなかった。それでも打撃練習を始めたらガンガン打つのだから、打者としての素質はかなりのものだ。
もっとも投手としても、8月下旬の練習試合で横浜高校を無安打無失点に抑えたというのだから、こちらの素質も半端ではない。
勝俣に対する國學院久我山は、「詰まっても、しっかり振れ」と尾崎直輝監督は指示した。狙いはストレート。
しかし、力のあるストレートにスライダーを効果的に組み合わせる勝俣の投球に、國學院久我山打線は、苦戦する。とはいえ、東海大菅生に勝俣がいるのであれば、國學院久我山には、夏は捕手で5番打者であった了海航がいる。
東海大菅生・勝俣の本塁打に本塁打で返した國學院久我山・了海航
4回表新チームに入ると不動の4番の了海が、レフト柵越えの本塁打を放ち、同点に追いついた。ともに主砲の一発で先制したとあって、ここからは接戦も予想された。
ところがその裏、東海大菅生に4点を取られたことで、勝負は決した。
4回裏東海大菅生は、6番小磯和貴の左前安打、8番馬場大輔の右前安打、さらに9番斎藤駿汰の三塁線上で切れそうな打球は、ファールになることなく三塁ベースに当たる、幸運の内野安打になり満塁。1番澤田翔人はマウンド直撃の強烈な打球が内野安打になり、1点を勝ち越し。さらに2番小川貴広はボールをバットにうまく乗せるような形で運んだ打球は、レフトラインの内側に落ちる走者一掃の二塁打になって、勝負を決定づけた。
それでも國學院久我山の先発・福富玲央は、尾崎監督が「我慢してよく投げた」と語っているように、6回から登板した植田雄大とともに、東海大菅生にそれ以外の点は与えなかった。もっとも、東海大菅生にしてみれば、4点差があれば十分であり、5対1で強豪対決を制した。
「勝俣は悪くなかったし、斎藤(駿)もよくリードした」と東海大菅生の若林監督。
もっとも当の勝俣は、「全然よくない。狙ったところにボールが行っていない」と厳しい評価。その厳しさが、さらに自分を高めるに違いない。
(文=大島 裕史)