試合レポート

大阪桐蔭vs開星

2014.08.15

大阪桐蔭、甲子園に吹く“逆転の風”で辛勝も唯一の弱点があらわに

 龍谷大平安市立和歌山神戸国際大附智辯学園が1回戦で敗れる中、地元関西の期待を一身に背負う大阪桐蔭が受けるプレッシャーは並み大抵ではない。さらにこの試合の下馬評は圧倒的に大阪桐蔭が高い。
そういう諸々のプレッシャーやスキを開星は見逃さなかった。

 大阪桐蔭が三者凡退に倒れたあとの1回裏、開星は二塁打で出塁した1番黒田雅也(3年)が2番打者のバント失敗で三塁憤死し、チャンスはついえたと思ったが、3番持田隆宏(3年)の二塁打、4番池田成輝(3年)の死球で満塁とし、5番金築翔太(3年)の走者2人を迎え入れる左前打で先制する。
さらに2死後、いずれも一、二塁の場面で7番石原司(2年)、8番恩田和季(3年)がタイムリーを放ち、2点を加点する。

 1回が終わった時点で4点先制された大阪桐蔭の不利は誰の目にも明らかだが、今年の甲子園には奇妙な“逆転の風”が吹いている。

◇8/12 星稜5-4静岡
 1回表に2点先制された星稜がその裏に1点返し、同点で迎えた8回裏に勝ち越す
 ◇8/12 大垣日大12-10藤代
 1回表に8点先制された大垣日大がその裏に4点返し、終盤の7、8回に3点ずつ入れて劇的な逆転勝ちを収める
 ◇8/13 健大高崎5-3岩国
 1回裏に1点、2回裏に2点挙げた岩国に先制された健大高崎が、3回表に2点、4回表に1点、5回表に2点返して逆転勝ちを収める

◇8/14 山形中央9-8愛媛小松
 1回裏に1点先制された山形中央が2回表に2点取って逆転、その後再び5対8とひっくり返されるが9回表に4点取って逆転する

 この印象に残る逆転劇には共通点がある。それは、先制された直後の反攻である。
健大高崎こそ1回裏に先制された直後の2回表、無失点に終わっているが、3回表には2点返しているように間(ま)を置かずに得点している点が重要である。さらに4例の逆転劇には相手のミスを手掛かりにして反撃に転じているという共通項があった。


 これらの“逆転のパターン”が開星大阪桐蔭戦でも見られた。
4点先制された大阪桐蔭は2回表、2つの四球と1つの死球、さらにショートのエラーと2つの暴投などで早くも2点を返している。

 3回表には先頭の1番5714(3年)が四球で出塁し、2番峯本匠(3年)の二塁打で1点差、4回表には6番森晋之介(3年)が四球で出塁し、7番横井佑弥(3年)の二塁打で同点に追いついている。
この4得点のうちヒットを2本しか打っていないことが驚きで、いずれも四死球をきっかけにしていることがわかる。

 対する開星も3回にショートのエラーと四球をきっかけに1点、8回には2つの死球をきっかけに1点奪っているが、暴投、ボークや走塁ミスは開星のほうが断然多かった。

 個人ではやはり大阪桐蔭の素材のよさに目が行った。
峯本の走塁、森の外野からの強肩、エラーはあったが遊撃手・福田光輝(2年)の俊敏なフィールディングと3番香月一也の打撃センスなど、優勝候補の前評判はダテじゃないと思った。

 唯一の弱点が投手陣だろう。
先発田中誠也(2年)は直曲球にキレを欠き、5回投げ5失点で降板している。リリーフの背番号1・福島孝輔(3年)はストレートが140キロを計測したもののサイドハンドからの球道が定まらず、4イニングで3死球という乱調ぶりだった。

 開星も先発恩田と2番手の宮川公佑(3年)がそれぞれ4つの四球を与える制球難で7失点を喫しているが(恩田はこれに死球1が加わる)、注目したのは3番手で登板した持田。9回にマウンドに立つまでは3番ライトでスタメン出場し、2安打を放っている選手だ。

 投げ始めてストレートが素晴らしいのに驚かされた。早い左肩の開きがなく、広いステップで上半身を前に誘導し、腕の振りは真上。このフォームからストレートが最速144キロを計測し、大阪桐蔭の1~3番を三者凡退で退けている。
早い登板がなかった理由はそれなりにあるのだと思うが、もっと早い登板、あるいはこの3年間でエースに育てるプランはなかったのかと思わされた。

(文:小関 順二)

【野球部訪問:第35回 大阪桐蔭高等学校(大阪)】

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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