Column

勝つためのリカバリー戦略その1 チームでの実際例

2014.03.29

殖栗正登のベースボールトレーニング&リコンディショニング

体幹を鍛えるトレーニング

 こんにちは!!四国独立リーグ徳島インディゴソックスのストレングス&コンディショニングトレーナーの殖栗です。

 今回は、リカバリー・回復についてです。実際、チームで行っていることを中心にお話をしていきます。
 みなさん、オフに多くのフィジカルトレーニングをこなしていると思います。これからどんどんテクニカルなトレーニングが増えてくると、トレーニングのボリュームが増えオーバートレーニングとなり、障害の原因やパフォーマンスの低下になっていきます。

 そこで、今回から数回にわたり、シーズンインに向けて、「リカバリー」についてお話しようと思います。

「リカバリー」の4段階とは?

 まず大まかに4つの段階があることを知ってください。

1. トレーニング後 1~2時間後
 もっとも疲労が高く、神経活性化の減少、筋グリコーゲンの枯渇、セロトニンレベル(主に生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などに関与する成分)の疲労、コルチゾールレベル(炭水化物、脂肪、およびタンパク代謝を制御し、生体にとって必須のホルモン)は、交感神経系が支配するまで高くなります。そのため自律神経的、精神的に休みを必要としています。

2. 運動後 24時間~48時間 = 1日~2日後
 この期間、身体は、リカバリーを始めます。ATP(アデノシン三リン酸)の回復は早いですが、筋グリコーゲンの回復にはある程度時間を要します。また回復のため酸素を要するので、有酸素運動を。タンパク質やホルモンバランスを戻すことも大切になってきます。

3. 運動後 36時間~72時間後 = 3日後
 ここはポジティブな「適応」が起きています。ここを俗に「超回復」と呼んで、パフォーマンスが向上することを示します。このタイミングを逃すことが「疲労」を生む最大の原因となります。この時に次の強度のトレーニングを課していきます。

4. トレーニング後 72時間後~=3日後以降
 元の状態のフィットネスレベルに戻る。

 このように1週間のサイクルで見れば、戦略的にきついトレーニング日、軽い日、休養に分けて、リカバリーの要素を組み込んでいかなくてはいけません。きつい日に筋力&パワー、有酸素、無酸素運動を入れ、限界まで必ず追い込みます。そこで、次の段階で軽い運動を入れて、リカバリーの要素を入れます。ここでは中途半端にはせずに、完璧に軽くします。


2月のトレーニングスケジュール紹介

 例えば、独立リーグならば11月~1月はオフになりますから、2月のスタートからいきなりハードなトレーニングスケジュールを組みません。

2月1週目

 となり、同じ部位のトレーニングが続かないようにメニューを組み、ランニング量も決めていきます。2月のスタート時は、筋持久系、エネルギー系は、有酸素 + 乳酸系、コアの固定、可動の関節など、機能を整えるトレーニングメニューを立てていきます。

2月2週目では

2月2週目

 として、激しい日を2日入れていき、適応レベルを上げていきます。この週からインターバルトレーニングや筋肥大のウエイトやコアトレーニングに負荷をかけ、機能的トレーニングも連鎖とローディングを加えていき、次のクールの筋力などの土台をつくっていきます。またピッチャーはオープン戦が入ってきますので、ローテーターカフ(※)、ローテーショントレーニングのベーシック、股関節のワイドウォークメニューなど、専門的なメニューを追加していきます。

※ 肩周りのインナーマッスルである3つの筋肉、棘上筋(きょくじょうきん)・棘下筋(きょくかきん)・肩甲下筋(けんこうかきん)をあわせて呼ぶ名称

2月3週目では

2月3週目

 として強度を上げて、筋力系、エネルギー系は無酸素系のインターバル。このあたりから、動作のトレーニングを入れて、次のスピードトレーニング、アジリティトレーニング、プライオメトリクスの準備トレーニングを入れていきます。
 リニア、ラテラルやジャンプの着地。ラダーやカットトレーニングを入れて、アジリティのフットワークやカッティング動作の他、加速の方法を指導しています。

ボールを使ったトレーニング

 野手陣に対しても、ローテーショントレーニング、コアストレングスを導入していき、野球に必要な多関節運動の連鎖、多方向の動き、スタビリティのみならず、強いコア、そして下からの流れを意識させたローテーショントレーニングを入れていきます。
 ピッチャー陣は、今までのベーシックに加速期のトレーニングを加えていきます。体幹を固定して踏み込み脚を支点にしたパワー発揮がメインとなります。それまでにいかにピックアッププログレッションなどでコアの固定と、股関節の稼動と固定を作り、加速期に耐えられる身体の準備を作っていくかが大切になります。

 そして3:1の法則に則り、4週目は強度を落します。

 このころにオープン戦が入ってきますので、コンディショニングトレーナーとしてはメニューが作り易く、ゲーム前、ゲーム後はぐっと、メニューのボリュームを下げ切ります。そして徳島インディゴソックスの場合は3月頭にキャンプが10日間入りますので、ここはテクニカル、戦術確認が増えていきますから、短時間で効率よく、パワー系のメニュー = 加速のトレーニングを入れていき、メディシンボールや本格的なプライオメトリクス、ハードルなどを入れ、ベースで作り上げた片脚のメニューも、プライオメトリクスに入れジャンプさせていきます。
 ピッチャーも、ジャンプ系、50メートル走や、上半身、コアもメディシンボールなどのパワー系のメニューを多く入れていきます。

 そしてキャンプラストにはオープン戦。残りの20日間の半分はオープン戦が入り、スピード系メニューが入ってきて、ピッチャーも、シーズンに近い形の「ゲームのピッチングに向けての調整のメニュー」に入ります。
 開幕1週間前には栄養の戦略から、身体作りの食事から、ゲームのための食事に変更して、リカバリー戦略を進めていきます。

 皆さん、このようにオフの間は筋力、パワー、スピード、リカバリーになっていた順番が、シーズンに近づくにつれ、リカバリー、スピード、パワー、筋力の順に優先順位は変わっていきます。
 今回は現場の実際の例をお話させていただきました。次回はリカバリーの方法などをお話をしていこうと思います。

(文・殖栗 正登

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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