Column

疲労骨折を防ごう

2013.01.30

ランニング量が多くなると脛に痛みを感じることも

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

今春開催されるセンバツ高校野球大会の出場校も決まり、いよいよシーズンに向けて期待も膨らむ時期となりました。選ばれた36校の皆さん、出場決定おめでとうございます!また今回は出場できなかった皆さんも、来るべき春の大会に向けて、今できることに全力を注ぎ、がんばっていきましょう。

さて今回はランニング量の増える時期や新入生などに多く見られる疲労骨折について、特に足や下腿部に見られるものを中心にお話をしたいと思います。

疲労骨折と聞くと皆さんはどのようなものを想像するでしょうか。「疲れから生じるもの」というふうに思われているかもしれませんが、身体の疲労そのものが原因になるわけではありません。繰り返し起こる物理的なストレス(=衝撃)によって引き起こされると言われ、その様子は針金を繰り返し同じところで折り曲げていると、その部位で針金が折れてしまうように、疲労骨折は「金属疲労」という言葉から由来されたものなのです。よって疲労骨折は突発的な骨折とは区別され、一日で起こるものではなく、時間をかけて生じる骨折と言えます。

繰り返し行うランニング動作やジャンプ動作は、骨の同じところにストレスがかかりやすく、骨に微細な損傷をもたらします。この状態でも痛みを感じますが、プレーが出来るからといって痛みをガマンしながら練習などを続けると、さらに同じ部位にストレスがかかり、やがては完全骨折へといたります。脛骨(けいこつ:すねの骨)、中足骨(ちゅうそっこつ:足の甲の骨)、腓骨(ひこつ:すねの骨)などに起こりやすいですが、肋骨(ろっこつ)、大腿骨、骨盤、膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿の部分)などにも起こります。成長時期である中学生、高校生は成人に比べて骨が柔らかいため、過度のストレスによって疲労骨折を起こしやすい時期であるということも理解しておきましょう。


走る場所もいろいろと変えてみよう

疲労骨折に見られる主な症状としては運動痛と圧痛があり、痛みの部分が少し腫れたり、ポコッと隆起したりといったことも見られる場合があります。初期の場合は軽い運動ができることもありますが、進行すると運動することが困難になります。

痛みがあっても運動が出来る場合、運動の始めの頃は痛みが強く、次第に痛みが軽減していきますが、運動が終わった後はまた痛みが強くなるという傾向があります。運動時に関節以外の部位に痛みを感じる場合には疲労骨折を考慮する必要があります。

軽度であれば1~2ヶ月の練習中止で症状が改善することが多いですが、一度生じると慢性化することが多いため、疲労がたまらないようにすること、練習が単調にならないようにすることが大切です。また以前のコラム「ランニングとシンスプリント」にも書きましたが、痛みを生じる原因を取り除くことが疲労骨折やシンスプリントを防ぐためには不可欠です。

●身体の構造上の問題(扁平足や脛骨の形状等)
●身体の使い方の問題(走り方、着地の仕方、筋力バランス等)
●シューズ等の問題(外的な要因:シューズの減り具合、アスファルトなど路面の問題等)

こういった要因を一つ一つ確認し、当てはまるものがあれば改善しながら、同じ部位に大きなストレスが繰り返しかからないように工夫していくことが大切です。特に扁平足による足底アーチの低下をトレーニングで改善する、走り方を見直して膝が内側に入らないようにする、普段使っているシューズを再確認すると行ったことは、日々の練習の中でも取り入れやすいので、ぜひチェックしてみてください。あとは痛みがあるのに出来るからといってガマンしすぎないこと。1週間や2週間で復帰出来るレベルのケガが、そのままプレーを続けることによって2ヶ月、3ヶ月と時間がかかってしまうことも少なくありません。高校野球に打ち込める時間は限られています。今一度そのことを思い出しながら、早め早めに対応するように心がけましょう。

【疲労骨折を防ごう】
●疲労骨折は同じ部位にストレスが繰り返されることによって起こる
●成長期の身体は骨が柔らかく、疲労骨折を起こしやすい
●初期の頃は痛みがあってもプレーできることがある
●痛みを生じる原因を一つ一つ取り除く
●早めに対応すれば早く競技復帰することが可能
●高校野球に打ち込める時間は有限。痛みをガマンしないこと

(文=西村 典子

次回、第62回公開は02月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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