試合レポート

宇都宮商vs霞ヶ浦

2012.10.31

宇都宮商vs霞ヶ浦 | 高校野球ドットコム

逆転3ランの氏家(霞ヶ浦)

勝負の恐ろしさ

2対1。宇都宮商が1点リードして迎えた6回裏、霞ヶ浦は一死一、二塁からこの日8番でスタメン起用された背番号18の氏家亮太(2年)が、ライトスタンドへ逆転の3ランを放った。
予想してなかった一発に盛り上がる霞ヶ浦ベンチ。対照的に打たれた宇都宮商の二番手・飯岡健太(2年)は呆然としていた。霞ヶ浦にとって悲願のベスト4進出への流れができつつあったが、この一発がゲームの行方に大きく影響してくるとは・・・

序盤3イニングは0対0。両チームとも得点圏に走者を置くが取りきれなかった。
霞ヶ浦は前日の1回戦で東海大相模を3点に抑えた左腕・上野拓真(1年)が連投。キレの良い変化球で丁寧なピッチングを見せていた。
宇都宮商も1回戦同様に、左腕の柴山和博(2年)が先発。2回に一死満塁から8番氏家を打ち取った所で、ライトを守っていた右の飯岡にスイッチした。
これが当たり、霞ヶ浦に先取点を許さない。

ゲームが動いたのが4回表。宇都宮商は一死から4番新井諒(2年)がセンターへヒットを放つと、5番飯岡が送って二塁へ。続く6番小材佳久(2年)が左中間を破る三塁打を放って先取点を挙げた。さらに7番柴山も二塁打で2点目を挙げる。

その裏、霞ヶ浦は一死二塁から8番氏家が右中間を破るタイムリー二塁打で1点を返した。
この氏家の起用。高橋祐二監督は、右投手が先発してくるとの読みだったが、結果は外れる形だった。だが、「必ず右が投げてくる」と交代させることなく、ゲームに残した。第1打席では左の柴山に打ち取られたが、この第2打席では右の飯岡から長打。指揮官の目論みは見事に当たった。

ゲームは中盤へ。
1年生エースの上野は5回と6回に走者を背負いながら無失点に抑える。連投の疲れが徐々に見えるようになるが、6回の先頭打者を出した直後に牽制球で刺すなど、攻撃へのリズムを良くする形でベンチに戻った。

そして6回裏。先頭の5番平瀬翔梧(1年)がセンター前ヒットで出塁し、一死から7番山本司(1年)がレフトとショートの間にポトリと落とすヒットで繋いだ。
打席は8番氏家で、次は9番の上野と続く。控え投手にも自信を持っていた高橋監督は、チャンスで上野に回った場合は代打を使うことを考えていたという。その中で出た氏家の逆転弾。疲れが見えながらも良いリズムになっていた上野の打席で走者がいなくなった。指揮官は次のイニングもと期待して上野をそのまま打席に送った。

4対2となって7回表にゲームは入る。


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無念のエース・上野(霞ヶ浦)

マウンドの上野は先頭の6番小材にヒットを浴びる。さらに7番柴山の打球が内野安打となって一、二塁。8番佐藤史隆(2年)が送って一打同点の場面となった。
9番小林和史(2年)はセカンドゴロを打つが、この間に1点が入る。二死三塁となって宇都宮商は4巡目となる1番君嶋謙蔵(2年)が打席に入った。その初球、上野の球が高めに浮いく。君嶋のバットから放たれた打球がライトの頭上を越え、三塁走者が生還。ゲームは振り出しに戻り、場面は二死二塁となった。
2番渡辺佑二(2年)が内野安打で繋ぎ、盗塁もあって二、三塁。3番五十嵐雄太(2年)の打席はフルカウントとなる。修羅場の上野と何としても勝ち越したい五十嵐。両者の思いが交錯する中での6球目、五十嵐の放った打球が三遊間を破った。三塁走者が生還し、宇都宮商が勝ち越しに成功。高橋監督はここで上野に代えて、右の片野凌斗(2年)をマウンドに送る決断を下した。

残った一、三塁のピンチを凌いでベンチに戻った片野。8回裏の攻撃は、この日の得点パターンである6番平瀬からの打順だった。

平瀬は四球で出塁し、一死二、三塁とチャンスを広げてこの日大当たりの氏家の打順を迎える。

宇都宮商の金子安行監督は、三番手で上がっていた新井に代えて、ライトに下がっていた左の柴山をもう一度マウンドへ送った。
「もう一度登板がある」と指揮官に告げられ、心の準備ができてきたという柴山。右投手対策として起用された氏家との対決。初球、氏家は思い切ってバットを振るが、打球は前進守備のセカンドゴロ。三塁走者が本塁でタッチアウトになり、勝負は柴山が勝った。

9回裏にも一死二塁と攻め立てた霞ヶ浦。しかし、3番白川拓海(2年)が放った痛烈なライナーが、無情にもショートの正面。飛び出した走者が戻れず、ダブルプレーでゲームは終わった。

試合後、ベンチ裏の壁にもたれかかって号泣していたのが1年生エースの上野。それを横目に見ながら高橋監督は、「疲れがある上野を引っ張りすぎてしまった。片野を信頼していたのに・・・」と敗因は自分にあることを話した。

チームに最高のムードをもたらした逆転3ラン。だが、これが指揮官の決断に大きな影響をもたらしてしまった。
1回戦とは逆の形で勝負の恐ろしさを痛感した霞ヶ浦。泣きはらした目は真っ赤になりながらも、1年生エース・上野は前を向いて球場を後にした。
『来年、必ずこの悔しさを晴らす』という目をして

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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