美里vsコザ
攻守にチームを引っ張る比嘉健汰(美里)
本塁打に三塁打二発!一人でコザを沈めた絶好調男・比嘉健汰
この秋コザは初戦の南部工戦を4ー1、2回戦の名護商工戦も4ー0で勝利。美里も同様に前原に4ー1、那覇商に10ー0と快勝。好調を維持する両ナインが、ベスト8の座を懸けて2年半振りに北谷の地でぶつかった。
元将太郎や仲宗根康二という高校トップクラスを擁した昨年のチームに比べると若干の小粒感は否めないが、美里・池宮城朗監督曰く「プレッシャーの無い、常に挑戦者の立場で向かっていける面白いチーム」と称した新チーム。ところがどっこい、攻守でナインを引っ張る一人の男がここには居た。4番の比嘉健汰である。
ケガで出られなかった春と夏
2011年新人中央大会で準優勝。秋季県大会は九州出場こそ阻まれたものの興南を破ってベスト4と、その力を誇示していた美里。その中にあって年齢こそ一つ下ではあるものの不動のレギュラーとして活躍していたのが比嘉健汰だった。
年が明けた2012年。春季県大会前のチーム練習でセカンドランナーを務めていた比嘉健汰は、投手の牽制球に対してヘッドスライディングで戻る。だが誰も予想していなかった事態が起こった。右肩に痛みが走る。完治まで約半年を要する右肩脱臼であった。要であるキャッチャーを守っていた彼の戦線離脱は、美里にとって非常な痛手となってしまう。比嘉健汰を欠いての春季県大会では準々決勝まで勝ち上がったものの、勝負どころのバッテリーエラーで興南にリベンジを許し敗退すると、最後の夏は屈辱の1回戦敗退と奈落の底へ転がり続けた。
試合に出たくても出られなかった悔しさを一人で噛み締めていた彼だったが、その思いを込めたバットがこの秋で一気に火を吹く。
比嘉康輔(コザ)
先制の三塁打に追い上げの狼煙を上げるホームラン!
比嘉健汰
「(笑顔で)今日は百点です。送球のときに少し違和感がありますがバッティングには問題ありません。」
その言葉通り、2回戦の那覇商戦で大会第4号のホームランを放っていた絶好調男は、この日も第一打席から観衆を魅了する。ニ死二塁からコザ先発仲程の、外寄り高目のストレートに逆らわずに振り抜いた打球はグングン伸び、レフトの頭上を越える先制タイムリー三塁打となった。
だが秋季県大会17年振りのベスト8を狙うコザもチームとしての好調さでは負けていない。その直後に下位打線からチャンスを作ると、ツーアウトながら二・三塁として8番比嘉康輔が、内寄りやや真ん中付近を思い切り引っ張るとレフトのポールを巻く3ランホームランで逆転に成功する。
コザ・比嘉康輔
「高校野球どころか中学時代でも無かったホームランです。小学校ではランニングホームランならありましたけど(苦笑)。」
野球人生初のフェンス越えを放った意外な伏兵の一発でコザベンチが一気に盛り上がる一方、美里の比嘉健汰は落ち着いていた。追い掛ける展開は慣れていて逆にやり易いぞとチームを鼓舞。そしてコザへ傾きかけた流れを自らのバットで徐々に取り戻していく。
5回の裏、先頭打者として打席に立った彼のバットが今度はライトの頭上へ高々と舞う。フェンス際でジャンプを試みるライトだったが、打球はフェンス奥の緑の芝生に跳ねた。1点差に詰め寄る自身この秋2本目となるソロアーチで、ジワリジワリとコザにプレッシャーを与えていった。
サイクルヒットよりも勝ちたい!
6回の裏、先頭の吉浜が内野安打で出塁すると、送りバントを指示せず絶好調男に任せた美里ベンチ。それまでストレートを打たれていたコザバッテリーが選んだ球はカーブだったが、ものの見事に右中間へと持っていくと何のためらいもなく二塁ベースを蹴った。
美里・比嘉健汰
「サイクルヒットは全く考え無かったです。勝ちたいので」
ケガで棒に振った春夏の悔しさを覚えてきた男にとって、個人の記録はオマケでしかなかった。追い付き追い越すために一つでも先の塁へ!主砲のその思いを次打者の屋宜が汲み取るようにレフト前へ運んだ。先制タイムリー、1点差に追い付くホームラン、そして同点のホームを踏んだ比嘉健汰に乗せらた美里は8回の裏に6、7、8番の3連打で1点をもぎ取り、粘るコザを振り切って2年連続11度目のベスト8進出を果たしたのだった。
攻守にチームを引っ張る比嘉健汰(美里)
美里・池宮城朗監督
――試合を振り返ってみて――
「 相手先発の(コザ仲程)緩急の差が大きくて最初打てなかったけど、前に立ってみたり色々やってみて徐々に(合ってきてた)ね。守備に関してはエラーが無かったし良かった 。このチームは自分たちでどうにかしようとしてくれる。ベンチでもワンチャンス来るからなと言い続けて(見事モノにし)やってくれた 。
諸見里は四球を出さないしこの一週間調子が良かったので、大崩れしない(タイプ)ので。序盤悪かったけど、終盤良くなったね。後は1、2、3番の出塁率をどうにかして彼(比嘉健汰)の前に走者をね。ウチはチャレンジャー精神でぶつかるだけです 。」
――先制直後に逆転の3ラン――
「 あれはボクのミス。(先発の)諸見里の球は悪く無かった。8番の子の振りを見ているとインコースを打てないような振り方をしていたものですから。ニ死二・三塁で一塁も空いているしということで、キャッチャーの比嘉健汰がこっちを見たのでしょう。インをつけと指示したらちょうど真ん中に入ってしまって。(インで)詰まらせてのアウトを想定していたのですが、ボクが甘かったです。」
――本塁打、三塁打と大活躍の比嘉――
「ひとつ上のチームでもレギュラーだったけどケガで半年も棒に振っちゃって。でもここ1〜2週間ほどきてて。学校でもレフトに流して(スタンドインの距離であるネットに)打つ。コンパクトに、でも非常に振りがきていた。」
――終盤良くなった諸見里に――
美里・比嘉健汰
「今日は”気”が抜けてる感じがしてましたし良くならなかったのでマウンドに集まったときに、ケツを叩いて気合いを入れたら終盤良くなりましたね(笑)」
どこでもいいけどやるなら沖縄尚学!と打倒私学、打倒沖縄尚学を公言した比嘉健汰。コザに勝利した数時間後に、八重山との戦いで見事逆転勝ちしてきた第2シードを相手にどう立ち向かうのか!?この目でしっかり確かめてきたいと思います。(レポートをお楽しみに)
(文=當山雅通)
コザ | TEAM | 美里 | ||
守備位置 | 氏名 | 打順 | 守備位置 | 氏名 |
三塁 | 島田一輝 | 1番 | 三塁 | 木村拓也 |
二塁 | 新屋 大 | 2番 | 遊撃 | 池宮城広也 |
左翼 | 吉山盛敦 | 3番 | 中堅 | 吉浜清亮 |
中堅 | 宮城昂弥 | 4番 | 捕手 | 比嘉健汰 |
一塁 | 兼本築 | 5番 | 一塁 | 屋宜大輝 |
右翼 | 手登根巧 | 6番 | 中堅 | 伊波雅司 |
捕手 | 安谷屋栄紀 | 7番 | 二塁 | 名嘉真辰也 |
遊撃 | 比嘉康輔 | 8番 | 左翼 | 呉屋 翼 |
投手 | 仲程幹 | 9番 | 投手 | 諸見里俊太 |